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設計、監理を担当
敷地は昭和47年に開発された南向きの山腹にある。開発の際は切土盛土を繰り返すのが一般的だが、最上部に近いためか敷地全体が非常に硬い岩盤だった。東には3~4mの擁壁があり、特に南東の景色が素晴らしかった
また、RC打ち放しの弱点である暑さ、寒さに対して、光と風自然の力を最大限生かせるようプラン、ディティールを詰めていった
1階は各個室と水回り、そしてダイニング・キッチン(DK)のみとした。2階はプライバシーを確保するため、出来るだけ北側に寄せ、北は閉じている。1階のキューブに対して1.2m北にずれ、庇を1.2m跳ね出し、その下に駐車場を確保した。この空間により冷やされた風が、夏は通り抜ける。
2階には用途を限定しない空間がある。P室と名付けられたが、ここにはテレビを置かない。その存在感に支配されない為である。柔らかな日差しの下で本を読んだり、雨だれを眺めながら音楽を聞いたりする空間だ。
30代のクライアントは、はたと困ったそうだ。「私達は何処に住みたいの?」。
様々な敷地を見て、ようやく坂のある街が好きだと気付いたという。夫は学生時代を沖縄で過ごした。台風の多い沖縄はRC造の住宅も多い。RC打ち放しのマンションで暮らしていたとき、光が壁に当たる様をみて、その美しさを知ったという。この2つのが、この計画の両輪となった。
南東の景色を望むなら、限界まで東へも寄りたい。東の擁壁には荷重を掛けず、階段部分を宙に浮かせることを考えた。街の傾斜にそって、コンクリートキューブを北に、東にずらし、慎重に積み上げた
感性豊かなご主人は世界の有名建築を訪れていた。
ル・コルビジェ設計のサヴォア邸はパリに。ルイス・バラガンの自邸はメキシコシティ。いずれも現地を訪れている。ルイス・バラガンの自邸は、私達の目標、世界遺産でもある。
その期待に応えるべく、満を持して出したファーストプランは、どんな減額案を使っても、希望金額に届かない。この事務所も20年目に入るのだが、実施設計のやり直しは初めてだった。
少しボリュームを抑えたセカンドプランの見積りスタート。
見積り調整が長引く中、冬にかかるとコンクリート温度補正が必要になり、プラスのコストが発生する。この見積りも一旦ストップ。
「この春以降で、施工時期は全て施工会社に任せる」という条件で、翌年冬から3度目の見積りがスタート。春にようやく決着したのだ。
バルコニーにでれば、コンクリート壁に穿たれた開口から素晴らしい眺望を得ることができる。更に、外からの視線を気にせず、空と風を感じることが出来る。深い庇は、夏の直射を防ぎ、冬の陽光は遮らないよう設計した。言わばコンクリートの縁側。庇の作り出す中間領域が内を緩やかにつなぐのは、日本古来からの手法である。念の為、DKと共に床暖房も敷設している。
坂のある街のコンクリート打ち放し住宅
南側にある庭に面したリビングダイニング。
テレビを置かない2階リビング。 その存在感に支配されない為である。柔らかな日差しの下で本を読んだり、雨だれを眺めながら音楽を聞いたりする空間だ。
南からの光を受けるため、2階では南東の眺望を得る為、階段は擁壁ぎりぎりに浮いている。圧をかけないためである。
季節によって、太陽高度、日の出、日の入りの位置は正確に分かる。 冬は取り込み、夏はそれらをいかに防ぐか。 代わらぬテーマですが、この家は内外コンクイリート打放しの為、特にそれらが需要だと考えた。
南からの採光を取るため、擁壁ギリギリまで建物を寄せる。圧がかからぬよう、階段は持ち上がっている。
コンクリーと打ち放しのダイニング。