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共働きの夫婦と妻の両親が、協力して子育てを充実させるための2世帯同居住宅です。
細い袋小路の奥にある、周囲を隣家で囲まれた不整形な敷地に建つ建物は、1階はバリアフリーとして親世帯に、2階はスキップフロアの娘世帯として設計されました。
2階の床が南側に向かって段々畑のようにスキップしながら高くなっているのは、ギリギリに迫る隣家の屋根を“乗り越えて”南からの豊かな採光と通風を1階へ導くためです。またスキップする床と床のすきまに設けた小窓は、上下の世帯間のコミュニケーションを豊かにし、空調・換気のルートとしても活用しています。暖房設備は土壌蓄熱式輻射床暖房システムを採用し、冬季の空調ランニングコストを抑えると共に室内のヒートショックを解消しています。
建物最上部に設けたフリークライミングでしかたどり着けない超ミニ展望塔は、登山家の夢の隠れ家です。密集する隣家を超えて360°の景観を、そして富士山の姿を望めます。
建物の配置を工夫して、里山の小径のような前庭と、小さな雑木林のような中庭、お風呂に面した小さなフロ庭をつくることができました。密集住宅地でも外部空間を利用して気持ちの良いくらしができるよう心がけました。
1階に親世帯、2階に子世帯というように、普段は両世帯がそれぞれ気兼ねなく生活できるよう上下階で世帯を分けましたが、親世帯の娘である子世帯妻が、それとなく両親の気配を感じ、必要な際にはコミュニケーションを取りたいということがありましたので、1階と2階の間にスキップフロアの『隙間』を設けて、両世帯が『つかず離れずの間柄』となるように工夫しています。
敷地は旗竿地で不整形でしたので相場よりも安く抑えられました。そのかわり、周囲を隣家で囲まれプライバシーを守る上で不利というデメリットがありましたが、中庭を囲んで大きな窓を設置するという『コートハウス』とすることで、隣家の窓と向き合わないよう工夫しました。また、中庭は植栽を施し、混み合った住宅地でも身近な自然とふれ合える場所としました。
1階は老夫婦の住まいということでバリアフリーですが、2階の子世帯は子育て真っ只中ということで、スキップフロアの変化に富んだ空間で伸びやかに暮らせるようにしています。
天井からぶら下がったロフトや、ボルダリングでたどり着く展望塔等、遊び心も満載です。
子世帯妻(娘)によると、両親世帯との間は小さな障子の小窓で繋がっているので、姿は見えないものの気配は伝わり呼びかける声も聞こえるので、『便利』ということです。
1階は緑豊かな中庭に大きな窓で接しているため夏は涼しく、基礎の下全面に土壌蓄熱式輻射床暖房が設置されているため、冬は居室はもちろん、浴室やトイレ等、どこにいても寒くないのがよい、と喜ばれています。
通常ですとお客様とはE-mailでの間接的なやり取りや、1〜2週間に一度の打合せ、等でじっくりプランニングを進めていくのですが、今回は同居する家族が“お客様”ということで、毎日が打合せとなりスピーディーに進行することが出来ました。また家族として最も身近に仕事を見ているからこその、私への全幅の信頼があったことも、プロジェクトがスムーズに進んだ理由と思われます。
建築家の自邸ということもあり、自分の価値観や芸術性について盛り込むチャンスではありましたが、やはり家族が暮らす家でありますので、いつもの業務と同様に、暮らしやすさを最優先で考えた設計にしました。結果としては、機能と美しさが兼ね備えた建築になったのではと思います。
竣工後は公共の賞や雑誌、TVへの出演オファーも多数頂きました。
バリアフリーとスキップフロアのミックスという珍しさや、遊び心と機能性の両立等が評価されております。
『渡辺篤史の建もの探訪』(テレビ朝日)
『SUMAI no SEKKEI[住まいの設計]』(扶桑社)
『VERY』(光文社)
『住人十色』(毎日放送)
『スッキリ!!』(日本テレビ)
他
第55回神奈川建築コンクール
他
前面道路から見た建物外観と、前庭の風景です。里山の小道をイメージしたアプローチの左右には、葉の小さいコグマザサをグラウンドカーペットとして、春・夏・秋それぞれに咲く山野草を点景として植えました。
天井の高いリビングルームは、ハイサイドライトからの光で常に明るく保たれています。壁の造り付け本棚は、圧迫感を和らげるために上部のボリュームを抑えています。
リビングの一角に書斎コーナーを設けています。 ハイサイドライトでいつも明るく、上部の小窓で2階のリビングとも繋がっています。
リビングからダイニングを見ています。緩やかに繋がるリビングとダイニングは中庭に面しています。 天井の高いリビングは、上部の小窓で2階のリビングとも繋がっています。
2階の小窓から見た1階のリビングです。 1階のリビングと2階のリビングは、小窓で繋がっています。 それぞれの世帯の気配がさりげなく伝わる設計となっています。 床の仕上げは持ち込み家具の色合いに調和する焦げ茶のコルクタイルとして、高齢者への安全性も配慮しています。
ダイニングから見たリビングです。 ダイニングとリビングは緩やかに繋がっています。 部屋を閉じることなく、さりげなく場所をつくる工夫です。
キッチンからはダイニング越しに、中庭の風景が楽しめます。作業スペースに余裕を持たせたコの字形のセミオープンキッチンは、親子での作業もスムーズです。また手元が隠れるカウンターを設置して、ダイニングからの視線の配慮と、使い勝手を両立しています。
親世帯と子世帯は、中庭を介して繋がっています。
2階の子世帯は、コンパクトな対面式のオープンキッチン&ダイニングとなっています。
子世帯のダイニングキッチン上には、ロフトを設けて子供部屋としています。 部屋を閉じることなく緩やかに繋げることで、適度なプライバシーと家族の一体感を両立しています。
子世帯のダイニングキッチンは、スキップフロアを利用したコンパクトな対面オープンカウンター式となっています。
子世帯のリビングからは、ダイニングキッチンと中庭に面するバルコニーの風景を見ることが出来ます。
子世帯のリビングは、ダイニングキッチン、寝室と連続した空間となっていますが、スキップフロアによる段差や可動間仕切り(障子)によって適度に区切られ、また緩やかに繋がっています。 リビングの書院コーナーやダイニング横の障子小窓は、1階のリビングと繋がっています。 二世帯の気配がさりげなく伝わり、必要なときにコミュニケーションをとることが出来ます。
子世帯の寝室には、展望塔に続くクライミングウォールがあります。 クライミングのためのハンドルは、既製品ではなく木で製作しました。モダンなデザインのクライミングハンドルは、飾り棚としても使えます。
子世帯の寝室からフリークライミングでたどり着く展望塔からは、隣家の屋根を越えて、360°の展望が楽しめます。 展望塔の窓はオペレーターで開閉できますので、通常は換気塔として使用しています。
子世帯のアトリエです。 専用のエントランスを設けているので、独立して使用することも出来ます。
アトリエは、ベニヤ板を壁仕上げに使用して、工房らしいインテリアデザインとしています。屋根の形に合わせた勾配天井と、北向きに設けたトップライトが、常に部屋を明るく保っています。
子世帯専用のトイレは、アトリエの来客用も兼ねており、余裕のある広さとなっています。高天井のハイサイドライトとガラス欄間によって、常に爽やかな明るさに保たれています。
2世帯で唯一共用となっているのが浴室です。 浴室暖房乾燥機はもちろん、洗い場にベンチや手すりを設けたり、『冷たくない床タイル』を使用するなど、バリアフリーを意識した設計となっています。 ピクチャーウィンドウから、風呂庭の景色を楽しむことも出来ます。