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敷地は私鉄沿線の賑やかな駅前商店街から近い、平均的な規模の住宅が高密度で建ち並ぶエリアに位置します。
人通りのある角地であることから街区のランドマークとして相応しい佇まいを心がけ、北側に位置する公園の存在を最大限に享受できる設計としました。
具体的には、吹抜けで縦につながるスキップフロアとして、最上部に大きなハイサイドライトを設け、公園の景色を取り込みつつ、自然光を奥深くまで導く立体的な空間構成としています。
北向きの窓は、陽のあたる緑の景色を明るい風景画のように切り取り、日差しの向きに左右されない安定して明るい天空光を存分に取り入れます。
これはまさに、北西角地であることの魅力を最大限に具現化した、都市型のオアシスといえるでしょう。
オーナーは不動産のプロでいらっしゃったので、北西角地でさらに北側に公園があるという、敷地のメリットを最初から理解されていました。建築に関しては、土地のポテンシャルを最大限に引き出し、尚且つ吹抜けに面したバルコニーやスキップフロア、片持ちの階段、木を生かした内外装のイメージ等、既にお持ちの要望をしっかりと汲み取った上で提案できる設計が必要でしたが、そのミッションを託すに値するプロフェッションとして、数多いる建築家の中から選んでいただきました。土地の価値を鋭く見抜かれたように、設計の実力を見込んでいただいたことはなにより光栄ということで、全力で取り組みました。
建物の性能も高気密高断熱として、寒がりのご主人にも安心していただける仕様としました。
建物を設計するにあたっては、敷地が北西角地であるため、屋内への必要十分な採光を得るための窓は、隣家が近接している南側と東側ではなく、道路に開かれた北側か西側に設けるのが必然でした。一方で、敷地の北側には道路を挟んで小さいながらも緑豊かな公園が向き合っているという幸運にも恵まれていました。
そこで、公園に面している北側の壁には2層分の吹抜に面した大きな窓を上下に設け、天空光を最大限に取り込む空間構成としました。
さらに、夏場は強烈な西日に照らされるであろう西側の壁から思い切って窓を無くし、あえて大胆な曲面による造形的な外観デザインとしました。
建物の断熱には発泡ウレタンを採用し気密性も高め、北側の窓を樹脂製サッシとする等、北西角地だからこそ万全の性能としています。
1階のガレージと2階リビングの間に設けた大容量の床下収納『クラ』も、常に整った美しいインテリアを保つために陰ながら寄与しています。
設計開始から約一年、大きなハイサイドライトとテラス窓から見える明るく豊かな公園の緑を借景にして、日射しの色や陰影の影響を受けず、常に一定の明るさをもたらす天空光に満たされた爽やかで暖かい居住空間と、窓のない曲面による造形的な外壁に、西日と永久日陰が織りなす柔らかな陰影が印象的なモノトーンのファサードを持つ、エレガントな家が実現しました。
ご主人とは設計中から竣工まで、コミュニケーションを密にとって進めていたことから、引っ越し後も良好な感想をいただくことができました。特に高機密高断熱としたことで、かなりの寒がりというご主人から冬場の快適さについてご好評をいただきました。奥様からはキッチンシンクが以前の家より小さいことにご不安があったとのことでしたが、実際に住まわれて全く問題なかったということで、安心しました。
ご主人からは具体的なヴィジュアルイメージやご要望をいただき、当方からのご提案も盛り込み、打ち合わせを重ねながらプランをすり合わせ、ブラッシュアップしていきました。難しい課題もありましたが、柔軟な発想と緻密な計算で乗り越えることができたと思います。
ご主人とは建築中の現場でもよくお打ち合わせをさせていただいたのですが、外壁の塗りパターンや木製仕上げの色、襖紙の種類等までサンプルでしっかり吟味し、決定されていたことが印象的でした。
建物の外壁北西角は曲面になっており、西日がグラデーションとなって北側の永久日陰へと柔らかに消えていきます。
永久日陰となる北側のファサード(外観)は、表情のあるチャコールグレーのコテ塗り壁となっており、柔らかな陰を感じさせます。ガラスのバルコニー手摺に映り込む公園の緑がシックなファサードに潤いを与え、陰をより上品に見せています。
1年を通して西日に照らされる西側の外壁にはあえて窓を設けず、陰を和らげる曲面と、継ぎ目のないコテ塗り壁による造形的なデザインとしています。
チャコールグレーのコテ塗り壁を背景に、四季折々の表情を見せるオープンな庭が、街角に潤いを与えます。透け感のあるルーバー壁は、植栽による癒やし感覚だけでは無く、外構を照らす間接照明として、また保水再生セラミックによる夏期の通風熱気冷却効果も備えています。
玄関ホールの階段は、木製の完全片持ち階段となっており、光とともに視線を透過させることで、空間に明るさと広がりを確保しています。
大工さん入魂の木製片持ち階段と、左官屋さんが仕上げた曲面を描くしっくい塗り壁、鍛冶屋さんによる手作りの手摺が、三位一体に調和します。木造住宅では構造的に難しい片持ち階段は、最先端の構造設計により実現しています。
LDKから片持ち階段のある玄関ホールへと、ガラス壁を通して光と視線が透過します。
2階のLDKは、主要動線である柱廊を境にスキップフロアとなっており、北側からの天空光を求めるように、空間は右方向の吹抜に向かって広がりを増していきます。
ダイニングはスキップフロアの最下段にあり、大きなテーブルを中心に適度な囲われ感のあるアットホームなコーナーとなっています。南側の吊戸棚上にハイサイドライトを設置し、換気と共に、隣家の屋根越しの採光を確保しています。
ダイニングに隣接するキッチンからは、階段室のガラス壁越しに、リビングとその先の、窓外に広がる公園の緑まで見通すことが出来ます。
アットホームなスケール感のダイニングから、スキップフロアの上段にある高天井のリビングへと、空間が天空光を求めるように、広がりを増していきます。
北側に面したリビングですが、朝夕の日射しの色や陰影の移ろいの影響を受ける直射日光ではなく、天空の粒子や雲で散乱された間接光、すなわち“天空光”による採光とすることで、日中を通して常に爽やかな明るさで満たされた空間となっています。
リビングは、北側のベランダに面したテラス窓から見える公園の豊かな緑を借景にしています。吹抜上部のハイサイドライトからは、公園の上に広がる空からの天空光が豊富に降り注ぎます。
リビングからはスキップフロアである2階の全ての場所が見通せます。また、上階に位置する2つの寝室には、吹抜に面して開閉可能な室内窓を設けることで、遊び心とともにコミュニケーションを促進し、家族の一体感がさらに増すことを企図しています。
リビングからスケルトンのらせん階段を上がるとプライベートエリアである寝室とバスルームへアクセスします。一方、らせん階段を下った先には広大な床下収納があります。左奥には書院が見えます。
リビングの背後にある書院は小上がりとなっており、造り付けの文机と書棚が用意されています。
書院は日々のデスクワークをこなす日常の場所でもありますが、たまにふと時を忘れる非日常な空間でもあります。
LDKとプライベートエリアをつなぐらせん階段は、冷たく鋭い印象の金属ではなく、しっかりとした厚みのある無垢の木を踏み板に使用しており、見た目も和らぐとともに、足裏の触感も優しくなっています。
らせん階段を上りきった先には吹抜に面したベンチを用意しました。ベンチの上部にはハイサイドライトを設置し、らせん階段の換気と採光を確保しています。
リビングの吹抜に面した子寝室の室内窓は、必要に応じて開閉できます。子寝室からは、吹抜のハイサイドライトの外に設けられたバルコニーへと出られます。
リビング吹抜けに面した主寝室からは、眼下のリビングは勿論、同じ吹抜けに面した子寝室と、ハイサイドライトの先に広がる豊かな公園の緑を望むことができます。
LDK北側のテラス窓の外にはベランダを設けています。ベランダの手摺は上部を透明、下部を乳白のガラスとして、公園の景観と道路からのプライバシー確保を両立しています。ベランダの端に設けたニッチにはベンチを設け、ささやかながら密かにアウトドアリビングを楽しめる場所としています。
外部の照明器具は、バルコニーのガラス手摺やニッチ、外構のルーバー壁に間接照明として設置し、彫刻的な外観の造形が際立つようにしています。
外観と同じく、ガレージもグレーを基調とした仕上げですが、同様に間接照明を設置し、居住空間以外でもあくまで上品なインテリアを追求しています。ベランダ手摺の乳白ガラスが間接照明の光を柔らかく拡散し、建物そのものが発光しているかのように見えます。