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場所は清瀬郊外の実家の敷地内。両親を見守ることのできる距離感で“終の棲家”を建てようという計画。法的には “敷地分割”をしつつも、物理的に仕切る必要はないので親側の敷地と一体使いをしています。
この家は敷地境界のラインとは関係なく、南北軸状にLDKを配置し、2階の書斎までを片流れの大屋根で包み込んでいます。そしてパブリックとプライベートを分ける壁を珪藻土壁にし、その壁に沿って太陽の光を取り込み、家の中を明るくしようというのが建主の発想でした。
構造上と温熱環境の観点から、1820mmピッチに屋根をつなげ、さらに夏の強い日差しを遮り冬の光をしっかり入れる勾配付きのルーバーを提案しています。
建主は大手ゼネコン設計部の友人。長年温めてきた基本プランを私たちに持ち込んできたところから始まりました。彼が描いた基本プランの平面図、実現したいコンセプトを守りつつ、木造住宅として実現可能なディテールへの移行やコスト調整を加味して設計していくこととなりました。
勾配のついたルーバーにプリズムを仕込んで虹を映し出そうと考えたのは建主本人です。原寸の模型を作り、私たちを説得してきました。私たちにとって家の中に虹をつくるというのは未知の世界でしたが、本人たっての希望を尊重し覚悟をもって現場に臨みました。
私たちは彼のアイデアに応えるべく、虹を映しだす珪藻土の壁に対して、水平に延びるこての引き方を左官屋さんに お願いしました。果たして、水平のこて跡だけ残し、縦のこて跡を一切見せないという職人技の壁をつくってくれました。
トップライトとプリズムルーバーからの光と影、そして正午の1時間あまり発生する虹を、職人の手跡が感じられる土壁で受け止めています。
10年以上温めていた様々なアイディアを、時折渋い顔をしながらも、辛抱強く図面にまとめ見事に実現してくれました。住み始めて3年以上たっても、日々新しい発見がある住んで楽しい家に仕上がり、テレワークの時代にも期せずしてマッチしています。学生時代からの友人ですが、夫婦それぞれの得意分野を生かしながら、何事にもまじめに真摯に対応してくれる建築家です。
”光のあやとり“ ともいうべき幾条もの光が、珪藻土の壁に晴天の正午にゆっくり時間をかけて立ち現れてきます。そして、その様子は季節の変化とともに刻々と変わっていきます。
幅3.6mの大型木製引戸を開け放てば、ウッドデッキと内部が一体化します。
ダイニングは両親の家側に向いたデッキテラスに向かって、巾3.6mの引分け木製框戸を入れています。この框戸を開け放てば、周囲の自然と一体化するダイニングになります。
書斎から吹抜けを望むと大きな傾斜天井によって木に包まれた感覚になります。左の階段(タラップ)は「月見台」に行くためのもの。
カウンターデスクの窓は出窓なので、緑の中でデスクワークをしている気分になれます。
右の白い壁は珪藻土で、そこに埋め込まれた薪ストーブでは炎が揺らめいています。
薪ストーブを壁の中に埋め込んで存在感を強調しないようにしています。のびやかな珪藻土壁のアクセントとして扱ったデザインです。
木のルーバーは、冬至における太陽の南中高度で角度を決め、夏至の南中高度時に一番遮るようにルーバー間隔を決めています。 そこにプリズムを載せているので、ルーバーで遮られるはずの光は分光し、いろんな角度で室内に入り込んでいます。
木のルーバーは、冬至における太陽の南中高度で角度を決め、夏至の南中高度時に一番遮るようにルーバー間隔を決めています。 そこにプリズムを載せているので、ルーバーで遮られるはずの光は分光し、いろんな角度で室内に入り込んでいます。
寝室とダイニングキッチンを結ぶ位置に。ダイニングから見ると、庭付きテラスですが、外壁の陰になる位置に物干し場と薪置場があります。
キッチン背面の収納カウンターは、目線をうつすと階段の一部となっています。生活の中で上下に行き来することとキッチンに向かうことは、住み手のお二人にとってシームレスな行為であることを暗示しています。
ダイニングキッチンの手前に2階に上る階段があり、ダイニングキッチンの向こうに書斎から月見台に上がる階段があります。ダイニングは家の中心にあり、移動するときに必ずダイニングを意識させる位置関係です。
階段の上部に本棚と小屋裏収納があります。
階段の向こうに小屋裏収納があり、その下に常時は水平の引戸が格納されています。小屋裏に行くときはその引戸を出してきて引戸の上を通ります。 施主発案で、大量の本の収納場所を考えて隣の書斎をはみ出して使うイメージのようです。 危険がないようにレール部材の終点のところに車輪落し込み用の掘り込みとストライク錠を設けています。
階段途中に設けられた開口部からの景色です。月見台に上る階段(タラップ)がアクロバットであることが判ります。
書斎はご主人の場所でありつつ、この家の心臓部です。写真の左、本棚と一体化してエアコンが取り付けられています。夏はここから冷気を吹抜けに向かって送り込みます。右はその吹抜けで、子どもが帰省した時には個室化するために障子を閉めることが可能ですが、いつもは開放して家全体を見渡せるようになっています。吹抜け向こうに月見台に上がる階段があり、眺望の他、大屋根の点検もここから出発します。
洗面は、三面鏡、隠す収納、見せる収納が家族によって千差万別。ここでは、洗いものかごは隣の洗濯機コーナーに置けるので、座って一息つける場所として考えています。カウンターの足元には、吹抜け上部の暖かい空気を送り込む給気口があります。
木製ルーバーに組み込んだプリズムで、虹がつくられます。
ダイニングの大型開口には、木製框戸の外側に羽目板を目透かしにした防犯雨戸が取り付けられています。框戸と防犯雨戸の間に網戸も入っているので、夜、框戸を開けていても、安心して夜の風を入れることができます。
左側に隣に住む両親の住む家の庭があり、このテラスはその庭を望む位置にあります。世帯は別れますが、世帯間を行き来するルート上にこのデッキがあります。
ウッドデッキ上部に架けているタープは、ご主人が用意したものです。ベンチの日よけとともに、帆布の造形美を持ち込みたかったそうです。 建築的には、外壁に風で飛ばないように間柱に達するアイボルトを用意しただけです。
隣に住む両親の家の庭から撮影したものです。大屋根がこの家のアイデンティティです。