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国内では最も一般的な木造軸組在来工法による『2階建て』の住宅ですが、スキップフロアや吹抜を効果的に取り入れた柔軟で自由な設計により、『まるで5階建てのような』、さらに1階から最上階までがひとつながりの、明るく開放的な空間が実現しています。
実用性を追求しても遊び心を決してあきらめない、そんな強い気持ちとともにある、家族のための住まいです。
お客さまは分譲マンションにお住まいでしたが、共働きで多忙な中、今後の子育てを念頭に置き、近隣の駅近にマイホームを建築することを計画されました。その後、条件に合う土地を入手できたことから、まずはメーカーやビルダーさんを検討したものの、設計はありきたりで惹かれるものが無かったそうです。
そんな中で共通の知人から当方をご紹介され、オーナーの要望に柔軟に対応しつつ、プラスαが提案できること、当方のアトリエが当時のお住まいと現場にも近かったということからご相談をいただき、プランを検討することになりました。
駅近の限られた面積の土地ということで、まずは厳しい法規制のギリギリまで、最大限のボリュームを確保するよう努力しました。特に道路斜線をはみ出した部分に関しては、精密な検討を行い、行政の審査をクリアしています。さらに小屋裏収納(ロフト)や、2階の床下収納(クラ)は、容積率に算入されないため、土地の持っているポテンシャルを最大限、あるいはそれ以上に活用した設計となっています。
内部空間はスキップフロアとして極力仕切りを設けず、5つのフロアがひとつながりとなり、家族の気配をそれとなく感じ、穏やかな明るさに満たされたのびやかな空間となっています。家族がくつろぐ最もにぎやかな場所には『ひかりの木』があります。構造的には重要な大黒柱であり、照明器具を自由に取り付けられる電気設備でもあり、なによりこの家の象徴として、家族をこれからもずっと見守ることでしょう。
設計段階で収納スペースを十分設けていてよかったとのことでした。竣工後に何度かお伺いしましたが、スッキリ美しく暮らしていらっしゃったのも、たしかに収納のなせる技だと思いました。
まずはご相談からスタートし、十分なヒアリングの後、ラフプランを提出いたしました。
その後、ミーティングとラフプランの修正を重ね、最終的な案に練り上げていきました。
ラフプランの確定後に設計契約を頂き、さらに細部の設計を打ち合わせしていきました。
最終的な設計が完成した後に、競争入札にて工務店を決定、現場の監理をさせて頂き、無事に引き渡しとなりました。
プレゼンテーションには3DモデルによるCGパースを使用しました。ラフプランの段階ではあえてシンプルなCGにして空間のかたちが分かるようにし、設計が進むにつれてより詳細なCGとして、具体的なインテリアの雰囲気が伝わるように工夫しました。
ご夫婦共に家づくりに真剣に向き合っておられたことは今でも強く印象に残っております。ミーティングにも粘り強くお付き合い頂き、結果的としてとても良い設計となりました。初めてお会いした時に小さかったお子さんが新居でのびのびと成長されており、また二人目のお子さんがお生まれになっていたことも、とてもうれしかったです。
居間のインテリアにはこの家のシンボルともいえる、『ひかりの木』があります。大工さんがシナベニヤを曲げて作ってくれた造形ですが、その正体は、この家の構造上とても大切な『大黒柱』です。居間の真ん中に立ち、天井から上の重みを一身に支える重要な柱ですが、天井との接点を見えないよう表面に造形を施すことで、まるで天井をささえていないかのような、空間の浮遊感を演出しています。 また、天井とのすきまには間接照明を設け、配線ダクトを周囲に巡らせることで、『照明器具』としても重要な役割を果たしています。この家のシンボル『ひかりの木』の名の由来です。『ひかりの木』には、照明器具の他、オーナメントやガーランドなど、季節に応じてデコレーションを加えることもできます。まさに『おうちのなかのツリー』です。
一般的な在来木造軸組構法による二階建て住宅ですが、周辺に比べて群を抜いて高く見える形状は、精密な計算により道路斜線を越えることで実現しています。白い左官仕上げで統一された外壁や段違いのバルコニーが、彫刻的なシルエットを際立たせています。一部の外壁をR形状にすることにより、建蔽率をギリギリに抑え、なおかつ外壁にやわらかな陰影を持たせ、モダンな外観の印象を和らげています。最上部のバルコニーからは、近隣住宅の屋根を越えて横浜港の花火を望むことができます。道路に面した植え込みのヒマワリが道ゆく人々に小学校の記憶を呼び起こさせることでしょう。
エントランスの玄関扉の上には鉄板を加工したオリジナルのひさしを設置しています。建物のデザインに調和しつつ、ちょっとしたアクセントにもなるひさしは唯一無二のデザインです。雨水が滴るオーバーフローもこだわりのポイントです。
居間は吹抜けに面した開口部で2階のワークスペースと繋がっています。 両親は居間で遊ぶ子供たちをワークスペース、台所から、そして『ひかりの木』が、共に見守ります。
居間の吹抜けにはハイサイドライトを設けています。通常、都市部の住宅地で道路に面していない1階の居間は暗くなりがちですが、吹抜けとハイサイドライトを組み合わせることで、1階でも驚くほど明るい居間を実現することができます。穏やかな明るさに包まれた居間で遊ぶ子供たちを、室内で安心して見守ることができます。
家族が集まる居間から二階へと続く階段は、出入り口も目立たず控えめで、少し秘密めいた雰囲気です。
天井が一際高く、少し神秘的な雰囲気の階段室は、吹抜け上部の障子で奥の間(和室)と繋がっています。画面右下に見える小さな開き扉は、『クラ』(2階床下収納)への入り口です。
スキップフロアの2階床下に設置した収納空間『クラ』は、階数や容積率に算入されないよう、天井高さを抑えています。通常の設計ではあり得ない、大容量の収納スペースを確保しています。
2階の『中の間』はのびのびとした多目的のスペースです。子供たちが思う存分遊べるセカンドリビングとして、あるいは家族みんなの寝室としても、家族と共に成長していける空間です。北向きの部屋でもトップライトで明るく、ワークスペースは1階の『居間』と、透明アクリルの室内窓はスキップフロアの『空の間』と、それぞれ繋がっています。どこにいても家族が繋がる、ひと繋がりの空間です。
2階『中の間』のワークスペースは、みんなの勉強場所としても、お仕事のリモートワークスペースとしても、家族の様々な利用目的に対応します。ワークスペースは吹き抜けの室内窓を通じて1階の『居間』と、透明アクリルの欄間窓を通じてスキップフロアの『空の間』と、常に繋がっています。どこにいても家族とつかず離れずに繋がる空間です。
2階スキップフロアの階段です。桜色の和紙を貼った扉襖を開けると、和室『奥の間』へと続きます。階段を登り切ると『空の間』へと辿り着きます。
2階スキップフロアの和室『奥の間』は、オープンな間取りの家の中、唯一建具で仕切られた居室です。ひっそりと隠された茶室のような和室は、家族の寝室として、時には来客用の部屋としても使用されます。一部を高天井として満月に見立てたペンダント照明を隠しています。床下には大容量の収納空間『クラ』が設置されています。
スキップフロアの最上部に位置する『空の間』は、体感的には〝5階〟ですが、法的には2階になります。床の高さを自由に設定できるスキップフロアのマジックです。バルコニーからは、隣家の屋根越しに横浜港の花火を見ることができます。ロフトの『天の間』は、可動式のハシゴでアプローチします。
ユニットバスが当たり前の時代に、在来で手作りした浴室は超レアです。曲面の塗り壁とアンティーク感のあるモザイクタイルで仕上げたインテリアは、色調をホワイト系に整えることで、どこか懐かしいレトロモダンな雰囲気を感じさせます。
手洗い台とミラーキャビネットはオリジナルの造作家具です。木材と人工大理石、鏡、カラフルなモザイクタイルを組み合わせて、毎日の手洗いとトイレが楽しくなるインテリアを演出しています。
1階居間の大黒柱『ひかりの木』 張り出した枝のような柱の上部と天井の間には隙間があり、間接照明が柔らかな光を放っています。天井と柱の間に光を挟み込むことで、建物の重みを一身に受けているとは思えないような浮遊感を空間に演出しています。張り出した枝の先には、『葉のように』『果実のように』照明器具が取り付けられ、光を放ちます。『ひかりの木』は構造体であり、設備器具であり、家族を見守る家の化身=シンボルです。