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山の中腹に浮かぶ、
箱のような住宅です...。
春になると、傾斜した庭に桜が咲きます。
山の中腹に浮かぶ箱...。
敷地全体が、急勾配で傾斜している中に、 上下に積まれた、2つの箱を浮かべました...。
平らな部分がどこにもない、 急勾配の傾斜地...。 そこで、 斜面上に、 コンクリートの箱を浮かべることで、 その上に、 平らな空間を確保しようと考えました...。
斜面の途中に、 浮かぶように建っているため、 眼前には、 遮るもののない風景が広がっています...。
斜面上に、箱を浮かべることで、 平らな部分が全くない、 急勾配の、傾斜地の中に、 唯一の、平らな庭となる、テラスを、 つくり出しています...。
コンクリートの箱の上には、 鈍く光る、アルミの箱が載っています...。 中へは、 このアルミの箱から入ります...。 この家の顔にあたる、入口付近は、 窓一つない、 少し閉じた表情をしています...。 それは、 防犯のためや、プライバシーを守るため、 等々の理由もありますが、 それだけではなく、 中へ入った時に広がる、 室内からの眺望との対比を考えて、 わざと、入口付近では、 そっけない、閉じた表情をつくっています...。
アルミの箱の中は、 二方向の壁が、取り払われて、 前面に広がる景色に向かって、 大きく開かれています...。 天井も、床も、 真っ白にしたことで、 箱の中には、 風景だけが、飛び込んできます...。 光沢のある、白い床には、 樹々の緑が、映り込みます...。
真っ白な、 床も、壁も、天井も、 ガラスを突き抜けて、 そのまま、屋外のテラスへと、 連続しています...。
山の中腹に浮かんだ、平らな面の上に、 もう一枚の平らな面が浮かび、 そこが、室内になります...。 緑の中に、浮かんでいるような、 リビング・ダイニング・テラス...。
屋内と屋外とは、 屋根が架かっているかどうかの違いでしかなく、 同じように、 前面に広がる、山の景色に向かって、 大きく開かれています...。 家の中にいても、外にいても、 空飛ぶ絨毯で、 緑の上に浮かんでいるみたい...。
周囲が暗くなると、 昼間は隠れていた灯りが、 天井に、浮かび上がります...。 照明器具は、すべて、 天井に掘り込むように、設置されていて、 明るい間は、その存在が気になりませんが、 夜になると、 光源の見えない、光のかたまりとして、 天井に浮かび上がります...。 ガラスの際には、 カーテンボックスの中に設置された照明が、 光の帯をつくります...。
室内の灯りが、テラスを明るく照らし、 その先には、 山の麓の家々の灯りが、 夜景となって、瞬いています...。
大きなワンルームの一角が、 キッチンになっています...。 リビング・ダイニングと一体になっているため、 キッチン廻りの様々なものは、 その時々で、 出したり、隠したり、 選択することが出来るようになっています...。 黒く塗られた引き戸の奥には、 大きな収納スペースが確保してあり、 冷蔵庫も、その中に収められています...。 また、 換気扇のレンジフードも、 吊戸棚の中に隠れていて、 使う時だけ、姿を現します...。 天井に開いている穴には、 照明や天窓が、隠れています...。 何もない、広々とした場所で、 必要なものを、必要に応じて、 取り出せるようになっています...。
傾斜地に浮かぶように建っているため、 普通の家とは逆になっていて、 2階にあたるアルミの箱の方に、 玄関があります...。 そして、 ガラスの引き戸を開けると、階段があり、 そこから、 まるで地下に降りていくようにして、 1階にあたるコンクリートの箱の中へと、 入っていきます...。
階段の上部には、天窓が付いていて、 下の方まで、光が降ってきます...。
コンクリートの箱の上に載っている、 アルミの箱は、 木造であるにもかかわらず、 その中は、真っ白で、 無機質な感じの空間になっていましたが、 コンクリートの箱の方は、 コンクリート打放しの、 硬い外観の印象に反して、 中に入ると、 木を多用した、 柔らかい雰囲気の空間になっています...。 屋内と屋外の雰囲気を、 あえて、逆にしました...。 そのイメージのギャップを利用して、 それぞれの空間を、 より印象的なものにしようと考えました...。
コンクリートの箱の中の、 寝室からの眺め...。 風景を、 絵のように、切り取っています...。 周囲が暗くなると、 天井のそこかしこに、 昼間は隠れていた照明にの光が、 浮かび上がります...。
寝室の照明は、 カーテンボックスの中に隠れています...。 光源が見えない上に、 カーテンの方を照らしているため、 ベッドで寝ながら、天井を見上げても、 眩しくありません...。
斜面の途中に、浮かぶように、 建築しました...。 そのため、 景色を遮るものはなく、 また、 周囲からの視線を気にする必要もありません...。
広がる景色の全てが家で、 その中で、 たまたま屋根が架かっている部分が、 室内になっている、 と感じてしまうぐらいの、 開放感のある住宅を目指しました...。