二世帯住宅

笹谷の家

実施エリア:

福井県

実施時期:

2014年

延床面積:

97平米

内容:

杉木立と竹薮を背にして、入母屋瓦葺の平屋と切妻2階建て住宅が東西に建ち並ぶ。既存の平屋住宅に渡り廊下で繋がっていた2階建ての部分を取り壊し、新たに2階建て木造住宅を増築し、既存部分の浴室を共有する2世帯住宅となる。
敷地は小高い尾根に上にあり、周囲の田圃を見下ろす長閑な環境であるが、北陸の厳しい冬の季節風を避けるために北西側を閉じ、南東側に大きく建物を開放している。既存住宅側は斜めに建物を切り欠き、そこに屋根のあるベランダをつくる。1階の居間、食堂、台所は南北に連続するひとつづきの空間で、南側を2層吹抜けとして、ベランダに面した大きな窓を開けている。既存住宅のある東側に格子に仕切られたオープン階段を設け、食堂に朝日を取り込む。2階寝室は吹き抜けに面して全面障子窓とし、吹き抜け越しの外の眺め、光と風を調節する。防風林となる杉木立が北側のピクチャーウィンドウに映る。

夏の日差しを遮り、冬の陽光を取り入れる大きな庇は建物全体を包み込む天蓋のイメージで作られ、軒裏の仕上げは2階の寝室まで連続する。外装は耐候性の高いガルバリウム鋼板で強固に包み込むが、内装は珪藻土など自然の柔らかな素材で仕上げた。薪ストーブまわりの壁と床に使った緑色の凝灰岩は隣県小松で取れる大杉石である。

ステンドグラス:花田美恵(おひさまの木)

ステンドグラス

ステンドグラス:花田美恵(おひさまの木)

平林 繁

自然素材につつまれた『呼吸する家』 本来、日本の住宅(民家)は自然素材でできた風通しの良いものでした。それが現代社会、現代生活のなかで、いつの間にか人工的な材料や工業製品でできた息苦しいものになってしまいました。シックハウスといわれる住宅やエアコンをつけないといられない住宅といったものです。もちろん、現代の住宅で開発された断熱性能、耐震性能、耐久性、経済性などすべてを否定することはできません。昔の民家のもっていた良さを現代の住宅に活かした現代民家『呼吸する家』をめざしています。 エネルギーをできるだけ使わずに、快適に暮らしたい。地球温暖化や化石燃料の枯渇、脱原発がいわれる今日ではそう思わない人はいないでしょう。 風が抜ける家がいい。空気の流れをデザインし、風を呼び込み、自然対流による自然換気を促します。敷地、地形から夏と冬の風向きを考え、風の出入り口と風の流れるルートをデザインします。暖かい空気は軽く上に上がり、冷たい空気は重く下へ下がるという重力も利用し、建具を開閉することで、季節にあった状態にコントロールします。 もちろん窓は風と同時に光も取り入れるわけです。自然光をいかに室内に取り入れるかも同時に考えなければいけません。朝の光、昼の光、夕方の光をどれだけ室内に取り込むか。光のコントロールは近隣や道路が接近する敷地に住むために、プライバシーにも関係してくる現代住宅では欠かせないものになっています。 そして、自然素材の持つ調湿、脱臭、浄化作用を最大限に活用します。珪藻土、漆喰などの土壁や無垢のフローリングなどは経年変化を楽しむ素材でもあります。室内の空気を良くする自然素材のもつ暖かいテイストを住宅のデザインに盛り込みます。 このような細かな気配りの集積が大らかな空間、環境を生み出すことになるのです。 木漏れ日を浴びながら、そよ風が通り過ぎる、そんな快適な室内環境を目指します。