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お父様は大工さん。
最初はお父さんの作ってくれた生まれ育った家を引き継ぎ、
リノベーションを前提でお話をしてくださいました。
周辺環境は、昭和特有の道の狭い住宅密集地であり、四方に建物があり、
採光を考慮しないとなかなか光を享受しづらい場所にあった。
現地調査に行くと、お父さんオリジナルの設えや、スキップフロア仕様、
一部アパートが併設しており、建物構造が複雑で、
広すぎる家を減築していくこと、築年数、保存状態など考慮すると、
それぞれを構造を担保していく事や改装費用の掛かり具合で
新築の金額を超えてしまうくらいになっていく事が予想された。
そのため、一部の構造材は生け捕りにして上手く転用し、
お父さんの想いを受け継ぎながら屋根からも光を享受できる形の
新築平屋での方向性でお話をさせてもらい、
この住まい手たちの家つくりは始まっていった。
住まい手は、
売れっ子デザイナーである施主とパートナーである数学者と猫二匹。
当初は平屋を想像していたけれど、
今のお住まいのマンションよりも㎡数が少なくなってしまうことや
お二人が数学者、デザイナーであるため、本が無数にあり、
納まりきらないとのことで、平屋の顔を残しながら一部二階建てにして、
勾配天井にすることで生まれる大きな壁面をすべて本棚とする
事で、住まい手のご要望であった本を仕舞える家を構成していった。
(実際は、これでも足りず。。。)
ここの地域は、特別な用途地域指定条例に基づき、
準耐火建築物が求められ、各所に耐火設計が求められ、
木を現しにするのであれば、燃え代設計が要求されました。
お父さんが建てた家の柱や梁を再利用しているが、
構造材ではなく、化粧材として現しとしている。
内装に関しては、施主は、お仕事柄、
他人に自分の思慮や考えを人に伝えることが本当に上手で、
各部のこだわりデザインや、もともと蓄積されていた
イメージをいつも写真やスケッチ付きで丁寧に逆プレゼンしてくれて、
全体的な色味や素材使い分けでの意思の疎通がやりやすかったのは言うまでもなく、
私は全体のバランスを取ることに神経をフル活用していきました。
クライアントの依頼を受け、モノつくりをする側だった施主が、
今回初めてそれを享受していく側となって、
今回、モノつくり側の立場を尊重し、その立場を重んじながら、
打ち合わせを進めてくれ、モノつくり側としての矜持や生み出す側の
エゴとクライアントに寄り添う部分の落しどころなど、
作り手共通の話題を通しながら、家つくりを進めていけた事は本当にいい経験でした。
今後とも、家の経過観察を続けながらプライベート・仕事、
いろんなケースでお二人を頼りにしたいと思っています。
住まい手らしい、いい家になったと思っています。
仕様
床:オーク道産材 無垢フローリング貼り
壁:オリジナル珪藻土・自然素材クロス
天井:オリジナル珪藻土・栂羽目板貼り
外壁:白洲そとん壁
屋根:ガルバリウム鋼板
断熱:基礎断熱仕様
空調:床下エアコン・循環用カウンターアローファン
造作キッチン、造作洗面台、造作家具
耐震等級3
準耐火建築物
移植したシンボルツリーのもみじは、この土地の生き字引。
勾配天井の天窓から自然光が差し込む。 二階はワークスペース。
水回りを中心に据え置き、玄関、サニタリー・寝室を介し、家を回遊できる動線計画にしている。
杉無垢の階段は燃え代設計とし、材厚60mmにて設計。 化粧材として元の家から柱を再利用。家を見守る。
ここの住人のたまり場的スペース
幅2.7mのホワイトオークのダイニングも造作。 配膳台として、食事のテーブルとして、作業台として、この家の居場所を作っている。
簡素だけど、過不足の無い玄関。 土壁に一輪挿しが映える。 洗い出しの土間と建具のマンガシロの色味が懐かしさを与える。
住まい手らしい、おおらかで、暮らしに特化した質実剛健の仕様。
裏動線には、壁面収納・クローゼット。 家の衣服がここで完結する。
本棚を猫ステップ兼用とした。施主のアイデア。
自然石・苔・もみじ・つくばい・杉の板塀、日本人のDNAをくすぐる庭。広くはないけど、周辺からの視線を防ぎつつ、庭を愛でるデッキも併設。庇がかかり、家と外を繋ぐ豊かな中間領域。