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当初、ご相談に来られた時はこの敷地の向かいの土地をご検討されていました。
その土地は、敷地の高低差があり、道路との境には
竹富島の風景を思い起こされる玉石積みの3mを超える擁壁で囲われていた。
雰囲気や土地の在り方はすごく施主も私もすごく気に入っていたのですが、
道路幅員が不明瞭で調べていくと、
やはり狭隘道路(前面道路幅員4m以上)の兼ね合いで
その玉石積みの擁壁を壊さなくてはならず、
土地の分筆、売買、開発も必要となるため、
土地関連の懸念事項がどうしても払しょくされず
、少しペンディングになっていたところ、
今の敷地近隣の別の不動産屋さんからこの敷地を紹介され、
すぐに気にいられ、即断で購入に至った経緯がありました。
ご縁とか、相性とか、運命の巡りあわせとか夫婦になるもの同士、
自分が望む土地を見つけたときにも良く言いますが、
施主とこの敷地の出会いは、まさにそんな言葉しか当てはまらなかった。
そんなものをまじかに見せられると
作り手としての良い家を作らなければっていう期待と重圧が
肩を組んでスクラム状態で私に猛タックルしてくるような
そんな感覚だったのを憶えています。
今計画は、敷地は十二分に広く、
いつも建築法令に縛られまくって抜け道を探すように
住宅街で家づくりをしている身分の私にとってあまりにも自由すぎて
起点がなく、非常に掴みどころがなく、
イメージが付きづらい状態で思慮していました。
そんな時、既存敷地内家屋の農家住宅を解体する際、
立ち会わせていただける機会があって
様々な日本庭園的な植栽や景石があった中、
唯一なんだか私には少し光って見えた植栽がありました。
施主も同じ感覚だったようでその植栽だけ残すというよりか
初対面なのに忍びないっていう不思議な感覚があったような気がします。
それが、ハナミズキの木でした。
実は、ハナミズキと分かったのは工事中に花が咲いてから。
それまでは、この子は葉ぶりが綺麗でなぜか存在感がある子だなあー
と思ってはいたが、なんの植栽か何者なのか施主とゆっくり時間かけて
判別しましょうね的な感じだったのですが花を見て、ようやく。
実際、ハナミズキが立っている場所が土地の在り方や敷地の使い方にある
一定の指針を与えてくれて、家の形を決めていけました。
施主と、総二階や、一部二階などのPLANを検討提案はしたけれど
この敷地に合うのは平屋しかないとお互い心が決まってた気がします。
そこから平屋なので、建築費が割高になることから予算の検討と、
配置計画も敷地の横幅をしっかり使うので、
建物裏の使い方や周辺の使い方を入念に確認し合って決めていきました。
建物はケラバ側をファサードになるよう計画し、
建物内部にも蓄熱体を設け、周辺より、冬場の厳しい気温のなか、
太陽の日射を最大限受け止められるよう計画していった。
庇、障子、焼杉、土壁。日本的な美しさを残しながら、
どこかアメリカのフラットハウスを彷彿とさせるシルエット。
周辺環境や土地に対して少しでも建物が偉そうにならないよう配慮した。
窓の位置、テラスの位置は、ハナミズキが見えるように、
邪魔しないように、日射とともにハナミズキにも合わせて計画。
この敷地の生き字引、歴史の証人、想いを引き継ぐ、氏神のような存在。
こんな起点での家を作り方があるんだなあと今思うと改めて実感しますが、
設計していた当時は、この敷地とハナミズキの存在で、
ごくごく自然の成り行でそうしていたなあと。
この家の名前は「ハナミズキの家」以外考えられない。
いつまでも見守ってもらいたいです。
仕様
床:青森ヒバ 無垢フローリング
壁:オリジナル珪藻土・クロス
天井:オリジナル珪藻土・クロス・焼杉羽目板貼り
外壁:焼杉、白洲そとん壁
屋根:ガルバリウム鋼板
断熱:基礎断熱仕様
窓:樹脂サッシ・木製サッシ
設備:床下エアコン、造作キッチン
その他:造作家具
耐震等級3
UA値 0.44W/㎡K
この敷地あってこその建物外観。焼杉外壁部分を庇のように跳ねだしすることで日射を調整している。今後の外構工事が楽しみだ。
既存建物解体後、夏の一枚。 設計指針となってくれた時のハナミズキの立ち姿。
軒が深いテラスを擁し、雨すら楽しめる外でもない中でもない中間領域。この中間領域が日々の中に潤いのある暮らしを作り出す
窓には横格子、大磯砂利洗い出しのアプローチから玄関方面を望む。 造作米松玄関ドアを開けると、薪ストーブのある玄関土間に繋がる。 住人が自然と肩を寄せ合うリビングのような場所。
焼杉の天井羽目板が内外を横断する。 左手には大型fix窓。 ここからの日射で冬場の室内温度に大きな影響を及ぼす。 ここからの日射は洗い出しが蓄熱体となり、柔らかく熱を放出する。
北東を向く天窓からの日射のラインが美しい。 時間によって光の差す角度、幅が違い、様々な移ろいを見させてくれる。 夏場には通風の出口として大いに室内環境に貢献する。
各種窓からの緑が目に優しい。理想の窓の在り方。
建物設計時から想像していたこの住まいを象徴する景色。
障子で日射の調整でき、冬場夜の断熱弱部である窓、玄関側からの冷気をシャットダウンしてくれる。
障子開放状態。
アイランドキッチンを採用し、LDKをワンルーム化し、止まりがない回遊動線。
すべての窓を望める特等席。 マンガシロ面材・バイブレーション仕上げのステンレス天板の造作キッチン。