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ビルの谷間に建つ平屋。室内に入ると周りの喧騒がウソのように、トップライトの光と木素材のあたたみのある空間が。
(OFFのときは写真にマウスオーバーで表示)
設計、監理、エクステリア(庭・外構)を担当
大阪市内の下町。マンション再開発が進み、ビルの谷間になった住宅+事務所+倉庫の建て替え計画です。
クライアントは長年この地で化粧品関連会社を営むご夫婦とお母様。古い木造家屋を必要に応じてつぎはぎし、内のような外のような不思議な場所をうまく活用しながら、職住が混然一体となった暮らしをされていました。リノベーションも検討しましたが既存建物の状態が悪く、終の棲家として安心して住める性能を確保するためには大規模な工事とならざるを得ないことから、解体して新築することとなりました。
前面道路側は防火壁を斜交いにせり出す事でオフィスとしての存在感を主張しつつ大きな軒下をつくり、内外が曖昧な生活を引き継げる土間としました。東西に生活動線と事務所動線を分け、それぞれ長手面を収納やデスクとして活用しながら奥の居間へと繋がります。日中、ダイニングに腰掛けて過ごす生活のためいわゆるリビング空間は省き、皆で調理できるようにキッチンやその周辺の空間を広めに計画。居間は家庭菜園や植栽を楽しめる小さな庭へと続いています。
ご夫婦とお母様の生活時間帯や動線の棲み分け、来客対応、商品の搬出入や保管など複雑に絡み合った条件を、ヒヤリングとプランニングを繰り返しながら紐解き、最終的には細長い敷地形状に沿った細長い平屋の中に、目的に応じた小さな部屋がぎっしり詰まった工具箱のような建物になりました。その上にシンプルな三角屋根を架け、ビルの合間を縫って日光が注ぐよう各部に天窓を穿っています。
都市の只中に深く根を下ろし、自分たちに合った暮らし方や働き方が自然と身に付いたご家族の新居は、アスファルトの割れ目から芽を出す野草のように、再び力強く自由な住処となりました。
architecturephoto/2021.4
designboom/2021.4
Archdaily/2021.4
Dwell/2021.4
HOUSER/2021.4
Gooood/2021.4
住人十色 [MBS毎日放送]/2021.6
住まう [大阪ガス]/2021.11
HOUSING by suumo [リクルート]/2021.12
細長くてコンパクトで使い勝手の良い平屋の住宅。(撮影:笹倉洋平)
俯瞰。細長い敷地に細長い建物を置く。敷地西側(写真右手)は斜線制限はかかるものの私道負担外のためアクセスに使えない条件。(撮影:笹倉洋平)
正面。お施主様は建て替え前から半屋外の玄関土間をガレージや打合せスペースとしてうまく活用されていたので、何とか新しい建物にも継承したいと考えた。(撮影:笹倉洋平)
南西より見る。屋根・外壁はガルバリウム鋼板。(撮影:笹倉洋平)
北西より見る。建物の北に空けた小さな屋外スペースは、ダイニングキッチン直結の家庭菜園。(撮影:笹倉洋平)
ファサード近景。(撮影:笹倉洋平)
土間の使い方に応じて表情が変化する。(撮影:笹倉洋平)
職住が混在した建築は自ずと住居なのかお店なのか事務所なのか、用途が曖昧な立ち姿になる。(撮影:笹倉洋平)
玄関土間はバイクガレージや商談スペースとして多目的に利用。気候の良い時期は屋外まで生活がはみ出す。(撮影:笹倉洋平)
斜めに張り出した庇は防火壁として、事務所のアイコンとして機能しつつ、庇下にやや囲われた雰囲気を生んでいる。(撮影:笹倉洋平)
玄関土間。左手が事務所。右手が寝室。中央の収納を両面から使う無駄のない間取り。それぞれ奥の居間でつながっている。(撮影:笹倉洋平)
玄関土間から庭まで見通す。手前右は倉庫。(撮影:笹倉洋平)
ウォークインクローゼットと一体化した廊下。右手は寝室。(撮影:笹倉洋平)
居間。普段からダイニングテーブルで寛ぐ生活のため、いわゆるリビングは無い。(撮影:笹倉洋平)
居間の外は小さな庭。家庭菜園として、花壇として、物干しとして利用。(撮影:笹倉洋平)
キッチンバックセットに嵌め込んだレトロなタイルはお施主様が多治見で調達したもの。レンジフードは梁に吊って、ダクトは露出。(撮影:笹倉洋平)
西外壁面は全面収納。書類、絵画、食器、家電、お仏壇、ヘルメット、スケボーなど、暮らしにまつわる様々なものが居心地の良い場所を見つけて佇んでいる。(撮影:笹倉洋平)
シンプルな木架構。登り梁形式を避けてコストを圧縮。建具は枠を回さず、梁に直接留めた鋼材をレールとして使用している。(撮影:笹倉洋平)
ビルの谷間にあっても、トップライトから光が射す時間帯は自然光だけで十分明るい。太陽や雲の移ろいが感じられる。(撮影:笹倉洋平)
複数人で同時利用できるようにキッチンカウンターは幅2,700とし、作業スペースにも余裕を持たせている。(撮影:笹倉洋平)
キッチン、事務所、玄関土間のつながり。事務所の床は土足利用も想定して杉足場板。(撮影:笹倉洋平)
キッチンは構造用合板とステンレスバイブレーション仕上げの半既製品天板でシンプルに家具製作。(撮影:笹倉洋平)
居間の奥にミニキッチンを備えたお母さまの部屋。トイレ・風呂・洗面と最短の動線でつなぐ。(撮影:笹倉洋平)
1,400mmスパンで均等に配置した架構の合間に設けたトップライト。白く塗装した天井面で光が拡散する。(撮影:笹倉洋平)
洗面室にもお施主様が調達したタイルをレイアウト。水栓はレトロな2ハンドル。(撮影:笹倉洋平)
玄関土間夜景。主な照明は裸電球のブラケット。(撮影:笹倉洋平)
玄関土間は庇と添うように斜めに勾配を取っている。(撮影:笹倉洋平)
既存の歩道切り下げに向かってスムーズに車の出し入れを行える。(撮影:笹倉洋平)
シンプルな構造体がシンプルな照明に照らされる。(撮影:笹倉洋平)
玄関庇正面。通りに対して軒を斜めに振ることで、単調な街並みに変化が生まれている。(撮影:笹倉洋平)