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設計、監理、インテリア、エクステリア(庭・外構)を担当
まもなく定年を迎える夫婦の「終の住処」として計画された、延床面積約57㎡(車庫除く)の小さな住宅です。敷地は天文台が近くに位置する群馬県の山中にあり、周囲は傾斜した雑木林で、敷地の目前には道路を挟んで広大な牧草地が広がっておりその借景はすばらしいものでした。
私たちは、敷地に手を加えることは最小限に留め、敷地の勾配から連続した緩やかなレベル差を室内に設けることで住宅の内部から周囲の自然に対する多様な接し方が可能になるような住宅を考えました。
イギリスの地方都市で数年間暮らした経験のあるご夫婦は、田舎暮らしを楽しみ、生活に必要な物品に対する考え方も明確でした。
生活の場となる1階はほぼ壁で仕切ることなく、一体的な室内空間を覆う屋根の勾配と床に設けられたレベル差、そして開口部から見える周囲の自然との距離感によって、小さな空間の中に様々な場所性が生まれるように考えました。
天井まで達しない腰壁によって適度に視線が遮られます。
居間に設置した薪ストーブは、一体的な室内空間を輻射熱で全体的に暖めます。
地階は冬季の積雪に備えた屋根付き車庫である。田舎暮らしを支える様々な物品(薪や除雪機、さまざまな道具など)を収納する納戸でもあるため、余裕を持った面積で計画されています。
山形県で偶然お会いしたのがきっかけでした。
群馬に土地はお持ちでしたが、定年後の終の住処ということで早くても5年後というお話でした。お二人は自然のなかの生活を楽しめるような小さな住宅を希望されており、時間も十分ありましたので、時間をかけて案を作っていきました。
建物には、山側(西側と北側)に向かってそれぞれ3寸の勾配で下る、中折れの片流れ屋根を掛けています。約18%の敷地勾配とは逆向きに傾けられた屋根は、朝日を室内にもたらし、西側に隣接する家からの眺望を確保するという目的で計画しました。結果、この小さな住宅の外観は、南側と東側は堂々とした高さを、逆に、北側と西側は屋根に手の届きそうな低さを、という二面的な性格を持ちました。室内の中央付近、キッチンカウンターの脇に、赤い錆止め塗装を施した1本の鉄骨柱が建ち、大スパンの屋根を支えています。この柱は屋根の梁背を抑え、構造を最適化するとともに、自然環境の中に建つ「家」としての空間的中心を示す存在になっています。
とても素敵なご夫婦で完成後も遊びに行かせて頂きました。いろいろな野菜を干したり、美味しい野菜でお料理をしたり、とにかく自然との生活を楽しんでいらっしゃるご様子で借景を切り取った窓や勾配が反映された木の天井を素敵だとおっしゃって下さいました。
絵や小物がセンス良く飾ってあり、小さな空間をとても上手に住みこなされていると感動しました。
出会ったときは早くて5年後の計画でしたので、ゆっくりとお互いに案をあたためながら進んでいました。ところが途中で早期退職の話があり、そこからはトントン拍子で話が進みました。
場所がアクセスしづらいこと、ローコストなことで施工会社の選定が大変でしたが、有限会社大原工務所が引受けて下さることになり、一気に計画が前に進みました。
その後は、施主、設計、施工の3者が一体となって実現に向けてタッグを組んだという印象でした。
施主の人柄に惹きつけられて進んだ計画でした。私たちの案を気に入って下さり、実現に向けてみなで協力出来たプロジェクトです。
自然体で生活を楽しむ姿が、住宅のプランにも反映されており、お二人の生き方がそのまま映し出されている建築だと思います。
牧草地からみた外観。自然のなかに小さな家と明かりが見えています。
リビングダイニングの大きな開口部。 木製窓がフレームとなって景色を絵のように切り取っています。 この窓は、開く窓です。網戸も壁の中に引込まれる納まりとし、景色を邪魔することがありません。
リビングダイニングを見ています。大きな空間を支える朱色の鉄骨柱が特徴です。 天井全体は木の合板仕上げの勾配天井が部屋全体に広がりを作り出しています。
薪ストーブのあるリビング風景です。背面は窓になっており玄関の庇の木梁が見えています。
リビングから寝室、水回りを見ています。朱色の鉄骨柱が大空間の天井を支えているのが特徴です。薪ストーブの床はモルタル仕上げ。
隣地の岩のような擁壁と薪ストーブが見える開口部の間を通る玄関へのアプローチです。庇は構造材の梁をあらわしにしています。
牧草地から建物の外観を見ています。リビングの木製窓と奥に寝室のコーナー窓が見えています。背景の木々と相まって風景を作り出しています。