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設計、施工を担当
25年前にニューヨークにお住まいだったというご夫婦。その頃からずっと「こんな家に住みたい!」と思っていたグリニッジビレッジのアパート。記憶にある憧れだった内装を思う存分詰め込みました。お家の中での夫婦の距離感を大切に「ふたりでくつろぐ時間」と「ひとりになりたい時間」を両立させた、どこか素朴でタイムレスな雰囲気の住まいが完成しました。
日本に戻ってきてから、国内で何回も引っ越しをされたというご夫婦ですが、リノベーションは今回が初めて。リノままのことは映画館で見かけたこともありご存知だったそうで、「映画会社のリノベーションは個性的なものができそうだと思った」と旦那様。お打合せでは、ご夫婦の好みを最大限盛り込んだプランニングを気に入っていただき、ご依頼くださりました。
◎お客様からのご要望
◯ニューヨークのグリニッジビレッジのアパートの雰囲気にしたい。
◯2人でゆったりくつろげるリビングと、1人でも快適に/集中して過ごせる部屋(寝室/ワークススペース)をつくりたい。
◯素材は本物にこだわり、サステナブルなものを中心に取り入れたい。
◯キッチンと造作窓をリンクさせたデザイン、全体の色味のバランスなど、グリニッジビレッジのイメージを細部まで表現。
◯リビングダイニングは大きな窓を活かして開放的に。ワークスペースは奥様と旦那様それぞれの個室をつくり、寝室は引き戸で仕切れるように設計。
◯こだわりを追求して、サステナブルな素材をセレクト。陶磁器のフロアタイルはオリジナルで施工。
奥様「これまでは分譲マンションに住んでいたので、いわば完成した家の枠に合わせて暮らしていたような感覚でした。たくさん引っ越しをしたので、今まで住んだ家で使いづらかった点や再現したい点を洗い出して、佐藤さんに相談したことで、より自分たちの暮らしにフィットする住まいになりました。」
旦那様「家の中で一番好きなのは、帰宅時の玄関からみる部屋全体の景色。ヘイグブルーのドア越しにみえる、シナモンの木と窓の向こうの風景がとても気に入っています。引退生活で家にいる時間が長いので、昔の映画や本を観返しながら、毎日を楽しんでいきたいです。」
グリニッジビレッジとは、ニューヨークにある地区の名称で、1670年代にオランダ人が入植した土地。アートなどの文化が栄えた地域で、現在もその街並みやインテリアが残っています。今回のリノベーションの鍵となったのは、ヘイグブルー(Hague Blue)という色。オランダのデン・ハーグ(Hague)の街並みに見られる屋外の木造部にちなんで名づけられた濃い青色です。奥様はこの色を一目みた時から、「当時グリニッジビレッジでみた色だ」と記憶が蘇ったそう。このヘイグブルーを軸に、色の組合せを決めていきました。
リビングはスクールハウスホワイト(=白よりも少しくすんだ風合いのある、イギリスの校舎をモチーフにした色)やグレーを配色していきましたが、あえて狭い部屋の脱衣所だけはヘイグブルーで埋め尽くしました。浴室の扉はガラス張りなので、深海や深い森をイメージさせる色を、お風呂に浸かりながらも感じられるアイデアです。
光の陰影によってもいろんな表情をみせるFarrow&Ballの塗料。本当にたくさんの色が揃っています。ご夫婦はどの色をどこに塗ろうか、工事前(解体前)のこの家の壁に試し塗りをして研究されたりもしました。
また、扉や巾木(壁の下部、フローリングとの取り合い部分)を真っ白にしたのにも、興味深い理由が。ニューヨークでは、DIYで壁を好きな色に塗ったり、汚れた時は上から新しい色を塗り直したりして、住まいに手を加えながら暮らしていきます。このホワイトは、あえて上から塗り直したかのようなイメージを再現した遊び心です。
平日は、お仕事を引退された旦那様がご飯をつくり、奥様は在宅ワークをされているという生活スタイルのご夫婦。おふたりでくつろげるリビングはもちろん、それぞれが「自分時間」を満喫できる工夫が散りばめてあります。
まずワークスペースは、旦那様と奥様、それぞれのお部屋をつくりました。旦那様のワークスペースは、リビングと室内窓越しにつながったお部屋。バルコニーの外の景色も眺められる開放的な空間です。旦那様の好きなオリーブ色の壁で、海外の図書館にあるような印象的な照明のアクセントが効いています。一方で、奥様のワークスペースは、玄関側に位置します。奥様はお仕事の電話が多いということで、あえてリビングから離れたところにつくりました。たまに旦那様がコーヒーを持ってきてくれるとほっこりするエピソードもお話ししてくださりました。
もう一つ特徴的なのが、寝室です。一緒に暮らしてきた時間の長いご夫婦でも、朝起きる時間が違う、エアコンの温度設定が違う等、それぞれの生活スタイルを曲げたくないのが正直なところ。ご夫婦ともに暮らしやすいように、ベッドの間に引き戸を設置し、必要な時は個室に仕切ることができるようにしました。朝起きるのが早い旦那様は、朝日を浴びられるように窓のある廊下側のベッドを使われています。エアコンの効きを調節するために引き戸を足元だけ空けておいたり、熱が出てしまったときは個室にしたりと臨機応変に。何かあったとき、お互いに声をかけやすいのも引き戸の良いところです。
素材選びで大切にされたのが、サステナブルであること。交換するとなったら廃棄することになる壁紙(クロス)は一切使わずに、塗料を採用したのもそのためです。
キッチンは再利用できるステンレスに。キッチン腰壁の框(かまち=扉のわく)デザインに揃えるように、オリジナルで造作窓の框をデザインしました。
その他の素材も、ベルギーの建物の廃レンガや、カカオ農園の日陰をつくるために植えられたチークの木を使った無垢フローリングなど、モノの歴史や背景にも着目して選びました。
玄関土間のタイルは、なかなかお部屋のテイストに合う目当てのものが見つからず、オリジナルで施工することに。素朴な風合いの陶磁器タイルにカット加工を施し、オクタゴンにして貼ったデザインです。リズム感のあるアーチ型の入り口とニッチ、造作窓など、こだわりが詰まった玄関土間。実は、奥様が一番気に入っている場所だそうです。
奥様「無塗装の足場板を使ったSIC(シューズインクローゼット)の中段には植物を置いています。北側のメリットを活かして、陽が当たらないことを好む観葉植物を置いたり、ドライフラワーをつくったり。夜寝室に行く前に、植物の世話をしたり、丸椅子に座ってぼーっと眺めたりするのが、とても落ち着く大好きな時間です。」