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袋小路の行き止まりにある旗竿敷地という、クローズな環境に計画された三つの庭を持つ家です。暮らしの中心となる中庭の他に、周囲の家の南庭と呼応して,北側に前庭と裏庭をつくることで、中心性を持ちながらも抜け感のある、開放的な空間を実現しました。吹抜のリビングと中庭を取り囲むように配置された三つの個室は、家族やまちに対してそれぞれ特徴的な距離を持っており、将来の家族の変遷にも耐えうるフレキシビリティを備えています。
撮影:西川公朗
2m間口の通路しかなく,これ以上分割できない広めの旗竿敷地という,不動産上は敬遠されがちな敷地でしたが、その悪条件をメリットに変えて、リビングと連続するような中庭を楽しめる家にしたい。というご要望でした。
一方間取りについては、お子様も未就学児で、将来的に親御様との同居の可能性もあるなど、十年後の状況が読み切れない中で、その時々の状況を最大限楽しめるような工夫をして欲しいとのお話でした。
一番のポイントは、吹抜のリビングと緑豊かな中庭を取り囲んだ開放できな空間です。ただ、中心性が高い住宅は、ともすると息苦しさにもつながります。そこで、近隣の庭に呼応して小さな前庭・裏庭を設け、目線に注意しながら最大限大きな窓を開けることで、中庭だけではない抜けを随所に持った開放的な空間が実現しました。
三つの個室も、リビングからひも付いた等価な個室群とはせず、中庭/リビング・玄関といった「公共」空間との距離感にバリエーションをつけて、将来に渡って様々なシーンに対応できるフレキシビリティを持たせました。
住み始めて数日後にお邪魔した段階で、「もう、以前の賃貸に住んでいた頃が信じられないくらい、使いやすくて居心地が良い」と言っていただきました。お休みの日も御自宅にいる時間が圧倒的に増えたそうです。
ご相談を受けてからは、まずヒアリングに相当時間を掛けました。お住まいの理想から、平日・休日の時間の使い方、好きな家事嫌いな家事、お好みのアートや小説から、細かな身の回りの品の収納量や使い方まで。
プランニング後は、模型・CG・建材サンプルなどを毎回見て頂きながら、設計の世界観を共有することに心を砕きました。
現場に入ってからも、月に一度はご来訪頂き、下地の状態も見て頂きつつ、職人さんとも顔を合わせて、空気感をご理解頂いたり、施工さんへの信頼を持って頂くよう、コミュニケーションを重ねました。
備品家具や植栽も、ショールームや圃場に同行して頂き、お好みを伺いつつ現物を必ず見て頂きながら、方針を決めています。
ご主人のこだわりとセンスの良さ、建築の知識の豊富さに驚きました。ご依頼頂く前にご購入になった土地を始め、私たち専門家でも迷うような、難しい選択の時も、条件を全て聞いた上での決断力の高さと確かさがすばらしかったです。
中庭に全面開放されたLDK.窓に沿って配置されたタイルが内外の境界を曖昧にしています。 キッチンカウンターと一体に製作したダイニングテーブルはオーク.立上りは盛るテックスという、水廻りに強い左官材料です。
クライアントが圃場で一目惚れしたイロハモミジのメインツリーがさわやかな中庭です.リビングダイニングの他,寝室・浴室が面している家族の中心です.床はコンクリート平板でリビング窓際のタイルとの連続感と明るさを確保し,緑の鮮やかさを際立たせています.
キッチンカウンターと一体のダイニングテーブルです.キッチンからはリビングや玄関まで見通すことができ,正面の出窓には本や食器のコレクションを並べるガラス棚が設置されています. 出窓の先には,裏庭のヤマボウシごしに隣家の庭木と空が見通せて,旗竿敷地とは思えない眺望を確保しています.
キッチンカウンターと一体に計画されたダイニングテーブル。 キッチン作業側からは中庭とリビングの吹抜が一望でき、ダイニングテーブルやカウンターからは、ガラスの飾り棚一体の出窓を通して裏庭と隣庭の緑が見える。
中庭を囲む開放的な主寝室です.玄関から直接入れる独立性の高い配置は,将来親御様を引き取る可能性を考えてのこと.その分中庭には思い切り開放して,リビングとの距離をコントロールできるようにしています.
中庭に面したバスルームです.洗面と浴室が一体になった,ホテルライクな作りで,洗面と浴室はタオルウォーマーでゆるやかにしきっています.椅子も置けるゆったりとした造りはバスリビングともいえる居心地の良さ.中庭のモミジの緑が天井に映り込んで開放感を演出します.
リビング吹抜にかかるスケルトン階段.鉄骨は側面のササラと手摺のみで,階段荷重は60mmの無垢桧板を壁から突き出すことで持たせているので,華奢で繊細な印象でできています. スケルトン階段ならではの明るい階段下は,お施主さんの読書スペースです.
二階の個室前の廊下からリビングルームを見下ろしたところ.中庭だけではない,いろいろな方向への抜けや採光の工夫があります.
将来は子供室となるファミリーラボ.家族みんながそれぞれ好きなことをする部屋です. リビングとつながる廊下とは,全開放できる引き戸で仕切られて,お子さんの成長に応じていろいろな使い方ができます. 周囲を隣家に囲まれた旗竿敷地ですが,裏庭の位置を隣家の南庭とそろえて北側に配置することで,20m先まで見通せる開放感を実現しました.
二階一番奥の畳ラウンジ付寝室です.障子の先には専用テラスもあり,独立性の高い部屋です.将来親御様と同居になった際は,ご夫妻のプライベートラウンジにもなる和室.床の間はファミリーラボ(将来子供室)のクローゼットとつながっていて,将来物が増えたら引戸を追加して収納にもなります.
畳ラウンジとつながる専用テラス.中庭を通して「抜けた」街並みを見通します. 旗竿敷地は一般的に開放感や眺望を望みにくい敷地ですが,日本は南庭を取る配置が圧倒的に多いので,周辺の家の配置を注意深く読み解くと,すっと「抜ける」見通しが得られることも多いです.この家は徹底的にその抜けを活用しました.
旗竿通路を抜けた先の玄関.リビングからも楽しめる坪庭と,玄関正面の目隠し壁とヒメシャラのシンボルツリー. 目隠し壁裏には自転車置場と物置と家庭菜園があります.
2m×14mの旗竿通路を通るエントランス. メインツリーであるヒメシャラの株立ちと目隠し壁で出迎えます. 細かい砂利に薬液不使用の防腐処理をした枕木舗装が,リズムよくメインツリーまで続きます.