2019/07/25更新2like960viewSUVACO編集部

人間がラクに暮らせることが、結果として猫のためになる 〜本当に安心・安全な「猫リノベ」のヒント #1

最近ひそかな流行の「猫リノベ」。

キャットウォークや猫の専用ドアなどの専用建具、お掃除しやすいトイレなど、
猫と楽しく暮らすための工夫を凝らしたおうちを目にする機会も増えました。

だけどそれって、本当に猫にとって幸せなおうちなのでしょうか。

後戻りできない幅のキャットウォークや吹き抜けに設置されたステップなど、
「猫のために」と思って設置したはずのものが、
気付かぬうちに危険を招くことにはなっていないのでしょうか?

動物と暮らしている人にとって、その存在は「家族」そのものです。
そんな家族とずっと楽しく暮らすために、本当に大切なのはどんなこと?

本当に安心・安全な「猫リノベ」のヒントを求めて、第1回の今回は、
猫リノベーションを手がける、建築家・津野恵美子さんにお話を伺いました。

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

建築家・津野恵美子(つのえみこ)さん。自らが代表をつとめる津野建築設計室での建築設計監理およびインテリアデザイン・コーディネートの傍ら、東京工芸大学非常勤講師としても活躍している。

建築家・津野恵美子(つのえみこ)さん。自らが代表をつとめる津野建築設計室での建築設計監理およびインテリアデザイン・コーディネートの傍ら、東京工芸大学非常勤講師としても活躍している。

「猫の行動は個体によって千差万別。性格も好みも1匹1匹まるで違います。」

編集部:
津野さんが手がけられた「猫リノベ」は、猫ならではの行動、例えばジャンプする高さや歩行可能な幅などをものすごく研究したうえで作られているように感じました。あらゆる場所のサイズ感が絶妙で、素晴らしいです。

津野さん:
「猫と暮らすおうち」を手がけるにあたり、たくさんの本を読んだり、実際にうちの猫を測ってみたりといろいろ研究しました。施主さんの猫たちはもう少し大きかったので多少調整は必要でしたが、それでも猫は犬に比べて種別での大きさがあまり変わらないので、届く高さのサイズなどは割り出しやすかったです。

ただ、行動については猫って本当に千差万別。性格も好みも1匹1匹まるで違うし、飼い主さんですら想定できないような行動を取ることも多いから、こればかりは施主さんへのヒアリングがすべてなんです。「猫リノベ」とは言いますが、基本的な安全を担保する部分以外については、一緒に暮らす猫の性格に合わせてつくっていくしかないなと思っています。

編集部:
個体ごとの差が大きいうえ、行動をすべてコントロールできない動物と暮らす場だからこそ、安全に暮らせる環境を人間がつくっておく必要があるのかなと思うのですが、いかがでしょうか。

津野さん:
老猫になっても安全に暮らせる家かどうかは、やはりみなさん気になるところですよね。個人的には、年の取り方にも差があると思うので、個々のタイミングで壁付けのステップを増やすなど、加齢に応じた対応ができれば良いと思っています。ただ、いざその時を迎えた際にちゃんと対応できるよう、あらかじめ壁に下地材を入れておくなどの準備はリノベーション段階で行っておく必要がありますね。

あと、老猫はもちろん、若い猫であっても足を滑らせるなど失敗をしてしまうことはあるので、万が一足を踏み外しても致命的なダメージにはならないよう、充分に安全を担保することが大事だと思います。

編集部:
具体的にどのような工夫を行なっているのでしょうか。

津野さん:
例えばこちらのおうちのキャットウォークにはポリ合板というツルツルした板を使用しています。これは掃除のしやすさと、施主さんの「柔らかくない黒」という希望を採用した結果、これしか無いと選んだものなのですが、やっぱりツルツルした足元は猫たちにとって滑りやすく危険。これを解決するために、ポリ合板の上に施主さんが以前のおうちで使っていた黒いラグをカットして置くことにしました。ラグのサイズに合わせて、板の周囲に縁を付けたので、ポンと置くだけでもラグがずれたり落ちたりしませんし、もし吐いて汚してしまった時にもすぐに取り替えられます。元の材料がラグなので取り替えストックもたくさんありますし、猫たちにとっても自分の匂いが付いているので安心できるというメリットがありますね。

「猫にとってトイレは常に清潔であってほしい場所。だからこそ、掃除のしやすさが大事です。」

編集部:
動物と暮らすうえで気になることとして、よくにおいの問題もあげられますよね。

津野さん:
猫の場合、猫自体がにおうことってきちんとお世話をしていたらあまりありませんよね。においが気になるとしたら、それは大体トイレの問題。対策としては、まず換気ルートをきちんと把握することです。吸気口、猫のトイレ、換気扇の場所と空気の流れを把握し、基本的には人間のトイレのそばで、なおかつ換気扇になるべく近いところに猫のトイレ置き場を作るのが鉄則です。

編集部:
ただ、リノベーションの場合は予算やもともとの作りの問題で、新たに換気扇が設置できないことも……。

津野さん:
そうなんです。猫トイレ付近に換気扇を付けることができればそれがいちばん良いのですが、リノベーションの場合、換気できる太さのパイプを通そうと思うとプランは相当限られてしまうので、必ずしも置きたい場所に換気扇を設置できるとは限りませんよね。そういった場合は、洗面やトイレの中などの元々換気扇が設置されている場所や、どうしても置けない場合はその隣などに猫トイレを設置するようにしています。
津野さん:
こちらのおうちの場合、1階は人間のトイレ横に猫のトイレスペースを作って、両方のトイレの間に引き戸を設置しました。猫のトイレへはリビング側からも出入りできるようにつくっているので、来客時などに猫トイレと人間のトイレを隔てる引き戸を閉めたとしても、猫たちはリビング側からトイレスペースへ出入りすることが可能です。
リビングとトイレスペースが接していることでにおいを心配されるかもしれませんが、においは人間のトイレに設置されている換気の方に流れるので、猫トイレの掃除をある程度やっておけば、リビング側ににおいがこもることはありません。

編集部:
人間のトイレ横に猫トイレを設置していると、流せるチップなどを流す際の動線も良いですね。

津野さん:
猫にとってトイレは常に清潔であってほしい場所。だからこそ、人間の掃除のしやすさも大事ですよね。こちらのおうちは築20年ということもあり、当初は2階に洗面が無かったんです。施主さん自身も「2階の洗面は不要」とおっしゃっていましたが、猫トイレの掃除後は絶対に手を洗いたくなるし、2階で猫が粗相をする可能性だってありますから、その度1階まで掃除の水を取りに降りるのはのちのち面倒に感じるはず。掃除って、人間がやりやすくないと保ちにくいんですよね。私自身も一動作増えた時点で掃除が面倒になっちゃうタイプだから、やろうと思った時にすぐ動けるつくりがいちばんだと思っています。

だから2階のトイレは、もともとクローゼットだった部屋の仕切りを外して、人間と猫トイレの両方を置けるだけの広さを取りました。トイレの中には洗面も設置して、洗面台下にある分岐水栓からバケツの水なども汲めるようになっています。さらに、猫トイレ用の砂などを収納できる大きな棚も造作しました。

換気については、「上階にお客様が来ることはない」と伺ったので、廊下と面した壁の下部に猫が通れる程度の抜け穴を作りました。「トイレの外がくさくならないの?」と思われるかもしれませんが、換気扇を回して空気を循環させれば、まったく問題ありません。

「人間がラクに暮らせることが、結果として猫のためにもなるんですよね。」

編集部:
掃除がしやすいと清潔に保ちやすいというのは、小さな子供がいるおうちとも通じるところかもしれませんね。猫や子供が汚しても簡単に掃除ができる環境なら清潔に保ちやすいし、気持ちに余裕を持って接することができる。

津野さん:
確かにそうですね! 子供もそうだと思うんですけど、猫も結構人の空気を読みませんか? うちの猫も私がストレスを溜めていると敏感に感じるみたいで、吐いちゃったり滅多にしない夜鳴きをしたりと不安定になっちゃう。だからこそ、どんなに忙しい時でも、面倒だなって思わずに掃除ができる環境にしておきたいんです。

フローリングの選び方などでも、そういった目線は大事にしていますね。例えば猫が歳をとった時にトイレを失敗しちゃうことが出てくる可能性を考えると、床は粗相をしても目地に入り込まないようなものを選んでおいた方が良い。ちなみにうちの猫トイレ周りは、フレキシブルボードという床材を使っています。さらに撥水を強化するものを塗っているので、万が一粗相をしても浸透しないし汚れにくい。猫が失敗しちゃっても「まぁいいよ、気にするな!」って感じで気持ちの余裕が持てています(笑)。メンテナンスしやすい環境にしておけば人間がラクに過ごせるし、それが結果として猫のためにもなるんですよね。
津野恵美子のカバー画像
対応業務 注文住宅、リノベーション (戸建、マンション、部分)
所在地 東京都世田谷区
対応エリア 埼玉県 / 千葉県 / 東京都 / 神奈川県
目安の金額

30坪 新築一戸建て2,700万円〜

60平米 フルリノベ1,020万円〜

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