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初見は、古今の作る家の雰囲気を気に入ってくれて、
ご家族皆さんでお越しくださり、古今でいろいろお話したのを憶えています。
メインの住まい手は、80代のお母さま。施主は娘さん。
お母さんと一家の拠り所としての住まい。
隣には息子さんがお住まいでいまだにベランダから行き来をされていて、
洗濯機置き場はもちろんベランダにある昔の団地スタイルを地で行く
THE 昭和。
場所は、妙蓮寺にある築50年のビンテージマンションの一室。
専有面積は50㎡とコンパクトだが、
竣工当初は本当に先進的なマンションだったのだろう。
今では●●DKという言葉は一般的だが、
核家族という家族形態のなかで●●DKとして売り出した当初の販売広告を見せてもらいました。
ものすごい倍率での抽選を勝ち取り、
娘さん・息子さん達をここで育てあげ、etc…という物語を
懐かしそうに話すお母さんを見て、ここのマンションの住まいに対しての思い入れとこの場所こそがお母さんの人生その物なんだとひしひしと感じました。
こういう方たちのために自分たちの職能を尽くしたいと
古今で話したのも憶えています。
そもそも、古すぎて排水容量がいまの設備機器には足りず、
排水経路の策定から始まったリノベーション工事。
壁・天井・露出・収納内、縦横無尽に給水管や電源線が行き渡り、
一からすべてを整理していった。
洗濯機を部屋内に入れる事を中心に、
給水・排水・電気配線関係をすべて更新し、
細切れになっていた各居室を整理し、現代に使いやすいように、
それぞれの家族の想いを踏まえてフルリノベーションしていきました。
家族の記憶が染み込んだ柱を再利用して、
50年の家族の記憶と歴史を引き継ぐ作業も大事な要素。
最初はきっと整いすぎて少し居心地悪いかもしれないけど、
使い熟す(つかいこなす)ていくと、木も少しづつ色味が変わり、
それらが一家独特の愛着となり、ジワジワト愛おしくなってくるはず。
住まい手みんなで打ち合わせしながら決めていった仕様ですが、
決して内装映えの部分が独り善がりにならず、
ちゃんと今までと変わらずこの空間が一家の「拠り所」になることを切に願いつつ。
経過を見守ります。
仕様
床:杉1mm無垢フローリング
壁:和紙クロス貼り
天井:ヘムロック羽目板張り / 一部 和紙クロス貼り
造作キッチン
造作洗面台
造作家具
ホワイトアッシュ+榀材の組み合わせのセンターカウンター。 料理好きな家族のワンルーム空間の中心に据えた。 家族の家族たる場所がここにある。天井材は、ヘム羽目板。 背のある梁の段差で横と縦を切り替え、天井にリズムを作った。
50年前のアルミサッシが残るベランダ。 断熱効果と紙を透過する品のある陽光を期待して、全面に障子を設えた。お母さんが干した柿の影がこれからのここでの暮らしを醸し出す。
リビングには一面壁面収納を設え、テレビも隠す。 どこからでも見える場所に旧家の歴史と想いを引き継ぐ柱を据えた。 構造的には大黒柱ではないが、存在感は別格。家族の記憶が濃縮している。
決して二つとない、唯一無二。
シナ材とバイブレーション仕上げのステンレスを組み合わせた造作キッチン。 家族間でのそれぞれが使いやすい寸法や高さを念入りに打ち合わせた賜物。ここに生活感が出てくると初めて「住まい」になる。 その時が楽しみでならない。
障子CLOSE。 寝室は、障子で緩やかにLDKと間仕切り。
障子OPEN。 お母さんの畳の寝室。
玄関タイルには円形のブリックを。昭和のマンションには相応しいデザイン。 コンパクトながら、玄関収納、玄関ベンチ・手すりなどお母さんが段差をしっかり踏み込むため、各所に支えをつけている。
ガラスの入れ方によって新しくて懐かしい建具デザインになった。 タモの無垢引手をルーター彫で入れている。