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東半球の日本では、当たり前に南向きの家が良いとされていますが、そんな常識をも飛び越える建築のチカラってすごい。
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敷地は丘陵地の高台にある住宅地で、南と東側に接道があります。敷地は2階レベルまで上がれば、北側に向けて豊かな眺望を望むことができる土地でした。そこで住宅の2階レベルをリビングとして、メインの開口部を北側に設置して、豊かな自然の山々を借景として取り入れるコンセプトとしました。西側と北側は隣地になっており、特に北側はメインの開口部がある為、極力南の道路側にセットバックする配置としました。北側に設けたメインの開口部からは間接光のようなやさしい光が、室内に拡がります。そして自然豊かな山脈の風景を眺めることのできる、心地よく落ち着いた空間となりました。
福岡への転勤をきっかけに、福岡のまちを気に入られて住宅を建てることとされました。こちらの土地は丘陵地の上部に位置し、北側に自然豊かな風景が見えるのが魅力的な土地でした。クライアントさんからは北側の風景を、室内の借景として取込んだ住宅を希望されました。
キタムキノイエでは北側借景のために、メインの開口部を北側に持ってくることが決まっていました。その上で如何に室内環境を良くすることができるかを、環境シミュレーションソフトをつかって検討しました。設計にて窓の大きさや位置、仕様(断熱か遮熱)などを変更して、シミュレーションで数値を確認しながら、設計とシミュレーションを繰り返し行いました。シミュレーションの結果、北側のメイン開口部は、熱を室内に取り入れる断熱ガラスとしました。南側には冬季は日射を取入れ、夏季に日射が入りにくいハイサイドライトを設け、夏季は煙突効果による排熱換気用窓としました。
北側の風景を借景として眺められることに、満足して頂きました。北側のサッシにはカーテンをつけないことをお勧めしており、建物の引き渡し時にはカーテン無しで住んでみる。と言って頂けました。室内環境性能も厳冬期や猛暑期以外は、ほとんどエアコンをつかわない生活をされているそうです。
土地探しの段階からお声をかけて頂き、何件か目ぼしい土地を現調やラフプランを描いて、検討しました。土地決定後は、プレゼンテーションで建物のコンセプトやデザインを提案しました。プレゼン後に設計監理契約を結び、基本設計→実施設計→確認申請→現場監理と進めました。遠方でのプロジェクトでしたので、打合せはほとんどオンラインにて行いました。
建物の施工が進み庇と袖壁と手摺ができた際に、切り取られた風景がほぼシミュレーション通りだった際に、嬉しさと共に安堵感を覚えました。
2階のLDKと寝室で31畳の一体空間となります。天井は南側に向かって上がっており、最高高さは3.3mで広がりを感じることができます。天井仕上げは施主の思い入れのある小国杉として、床のナラ無垢材と合わせて、木の心地良い空間となっています。LDKと寝室の間には上部に梁が通っており、梁に鴨居加工をして、引戸で仕切ることができるようになっています。
遠景の外観です。シンプルなガルバリウムの形状が、郊外の住宅地に映えています。
北側の外観。1階より2階が多いため片持ちとして、個性的な形状となっています。庇や袖壁、手摺の高さなどを調整して、リビング空間にトリミングされた風景を取り入れます。
ダイニングからの眺め。天井に杉、床にナラの無垢材を仕様し、木の香りや雰囲気に包まれた柔らかい空間となっています。
キッチンはオーダーで、シンプルなステンレスをベースにダイニング側にアクセント面材を貼りました。キッチン後部には造作家具を設けて、冷蔵庫や食器棚、キッチン家電を収納デッキるようにしました。
北側の眺め。自然豊かな風景がリビングの借景となっています。
ベランダからの北側の風景。建物でトリムされた風景が室内の借景になります。
ベランダにはハンモックを吊るすためのボルトを設置して、半屋外空間で心地良い寛ぎを得られるようにしました。
奥さんが沖縄にルーツがあるため、壁は月桃紙仕上げで床は琉球畳としました。
玄関ホール北側の壁を大きなFIXガラスとすることで、南の玄関から北の庭まで明るく開放感のある空間となっています。
開放的な玄関ホールとするため、階段もスケルトン階段としました。階段は木製として、手摺はスチールとして、木の温もりとスチールのシャープさのあるデザインとしました。
玄関ホール北側のFIXガラスから見える位置に、シンボルツリーを植林しました。FIXガラスの枠を建物に飲み込ませることで、ガラスのみが見えるように工夫しています。
クライアントさんが据置のバスタブをご希望されたため、在来浴室としました。サイズも大きめとして、床にタイルで壁は防水塗装としました。
ユーティリティスペースは大容量の造作家具とし、衣類等も収納できるようにしました。洗面カウンターも幅広として、作業ができるスペースを設けました。
2階のトイレ横の洗面スペース。シンプルなつくりながらも、造作家具でサイズをぴったりにつくり綺麗に納めました。1階と違い少しシックな雰囲気の洗面室としました。
北側の夜景。1階はFIXガラスとして枠を消す納まりとすることで、抽象的な雰囲気のシャープなイメージとなっています。2階のバルコニーも風景を切り取るトリム装置が、夜景では抽象的な光を外部にはなっています。
東側道路からの見上げた夜景です。2階部分が1階部分より片持ちで出ているのが、良くわかります。ベランダ部分のシャープな納まりが抽象的な雰囲気となっています。
夜景遠景を撮っていたときに、この住宅がいえのあり方の可能性を広げていると感じました。写真からは、都市部の住宅街でありながら、キタムキノイエのみが明るく光っています。北側に自然豊かな眺望がありながらも、いえは南側にメイン開口部を設けるもの。という常識からこのような周辺状況になっています。もちろん南側に向けることは悪いことではないのですが、敷地状況によっては常識から外れて、自由にいえづくりを楽しむことも重要だと思いました。そして提案の際に、環境シミュレーションを繰り返し、住宅性能を数値で説明できたことは、クライアントの理解を得るのにとても役立ちました。