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室内面積65平米の平屋の住宅。断熱等級6(UA値0.44、BEI0.68、C値0.3)、6kwの太陽光発電によるZEHの高気密・高断熱住宅です。
11月30日(土)午前4:25からテレビ朝日『渡辺篤史の建もの探訪』で放映されます。
コロナ禍を経て家とは?生活とは?暮らしとは?
そこに必要となるものは?どうなったか?今回自邸をつくるにあたり考えた事です。
豊かさとは何か?
暮らしの豊かさ。ものがあれば豊かである、、、という事では決してなかった。満ち足り状況、心踊る瞬間があること。そんな形にもならない感覚や気分が大切なのだと思います。家にできること、建築ができることは限られているけど、そんな情緒的な豊かさが益々大切になってきている気がします。
一方で現実問題としては、物価も上がり建設費も高騰している。どんなに予算があっても程度の差こそあれ全ては満たせない(そうでない人もいますが)限られた予算、限られた条件の中で家という器に豊かさをどうつくれるか?が最近考えているテーマでもあります。
自邸である今回の家では最近Sデザインファームが取り組んでいる高気密、高断熱化で断熱等級6の家としています。
これは『増やすことでの豊かさ』だと思います。
エネルギー問題、温暖化
高断熱化、高気密化などの断熱強化、トリプルガラス、創エネとなる太陽光発電はわずかなエネルギーで家が涼しくなり、太陽の恵みで室内は暖かくなります。この1年暮らしてみて、こんなに快適なのかと改めて実感しています。
一方で『減らすことでの豊かさ』にも取り組んでいます。
建物をごそっとくり抜いたように作った外リビングは屋根があり単板サッシによる欄間がありますが、室内が残されたまま外化されたような空間になりました。室内空間でなくなるのでコントロールされてない屋外空間は暑さ寒さなど外的要因が如実に反映されます。でも外でご飯、焚き火、寝転んで猫と戯れる、虫の飼育場、汚れても出しっぱなしでも気にしない緩さがあります。
ふとした瞬間に見せる自然の表情、鳥や虫やカエルなど思わぬ来訪者、気がついたら居座ってしまった野良猫の子猫。出しっぱなしのスケボーやバスケットボールや焚き火台。収穫して乾燥させているさつまいも。全てをコントロールしきれない、されきれない、そんな豊かさもここにはあると思います。
【間取り】
室内面積をコンパクトな65㎡としていますが、33㎡のロフト空間と20㎡の外リビング空間があります。日常生活は65㎡とコンパクトですが、普段使わない物などはロフト空間においています。天井高さ3.8mでロフトまで広がり感があるので開放的なLDKとなっています。各個室は天井高さを2.1mと最小限とし広さも4.5~6畳と小さくしていますが、クーラーの効きが良く今年の夏の設定温度は30°でした。
【素材など】
窓はトリプルガラスの樹脂複合サッシです。樹脂の方が結露は抑えられると思いますがフレームの細さを優先しています。床は磁器質タイルとしていますが床断熱は設置していません。冬場は南側の高窓からの日射取得で室内が温まりますので最初は不安でしたが一冬過ごした印象では問題なかったです。壁は光を鈍く反射する薄塗り左官材です。天井は室内外が連続するように木材を貼っています。
【コストダウン】
面積を小さくすることでコストダウンをしています。インテリア素材をダウングレードするよりも1坪で面積を絞るのがコストダウンのコツだと思います。キッチン・お風呂は前回の自邸では最優先で作ったので今回は既製品を素っ気なく入れていますが、ゆくゆくオーダーキッチンにでも変更できたらと思っています。
Sデザインファームで提案している高気密・高断熱を自分としても実体験として体験するのが必要だと思い建設しました。1年経過した感想としては
【良かったこと】
・室温は20~25°の間で年間を通じて安定した室温環境。
・冬の暖房利用はエアコンを1~2時間程度。主に外気温が1桁台になる時に少し温める程度。
・夏は庇がなく風景を取り込む西向きに大開口を設置しているので心配をしていたが室内の断熱ハニカムブラインドとエアコン(25~26°設定の弱運転)で問題なかった(太陽光発電が余剰している季節なので売電せずに自家消費)
・冬の結露は放射冷却によって高窓サッシの足元部分にうっすら生じるが太陽が出てくる時間帯には消える(結露をなくすのは住まい方、湿度管理もあるので難しいが明らかに減ります)
・太陽光発電は年間を通じた発電量6813kwh、消費量6936kwhと発電より消費量が上回っているが1次エネルギー消費量の計算に含まれない家電や調理のエネルギーも含んでいるのでZEHは達成。多くの太陽光発電を載せるのではなく自家消費程度の6kwを積載したのでメンテナンスも最小限で済む。一般的な電気+ガス代とこの1年の浮いたお金の差額で計算すると太陽光発電費用は10.06年で回収。FIT期間後は蓄電池も現実的かも。
・外リビングは大雨でも欄間のサッシがあるので1m程度しか吹き込まないので家具は置きっぱなし(風が強いときはたたみますが)出し入れがないのでさっと使えるが良い
・室内が暖かく直ぐに戻れるので外リビングは意外と冬季も利用する。
【想定外】
・断熱をしっかりしたので寝室の窓のコールドドラフトは強く感じる。
最初は窓辺にベッドを寄せていたが、冷気を感じて離した。
・寝室は6畳で天井高さ2.1mと体積が小さいので人間2人の発熱で部屋が温まる。一方で中間期は屋外が過ごしやすい気温になるが平屋のプライバシー問題から窓を開けては寝ずらく、多少の罪悪感を感じながら冷房をつける(外気温が18°程度なのに室温が23°なので31°設定の冷房をつける)
・エアコンの温度管理、絶対湿度など心地よい室温、湿度は人によって異なるので意外と数値を把握する必要が最初はある(SwitchBotにて)
・特に冬期の絶対湿度は12g/㎥が風邪やインフルエンザ対策に良いと言われるが暮らし方によって変動するのでコントロールは少し難しい。
・ドラム式洗濯機の乾燥とユニットバスに市販の除湿機(消費電力が浴室暖房乾燥機に比べて格段に少ない)を設置して洗濯干しをしたので結局天日干しをしなかったが、全く問題なかったのは良い想定外。
西側に神社の参道があり春は桜、夏は深緑、秋は紅葉、冬は常緑の松が楽しめる敷地でした。高断熱住宅として西側を開くのはご法度ですが、それによって暮らしの楽しさが狭められるのはもったいないので、南から西への風景をどう取り込むか?で設計をしてました。設計と断熱などの性能計算を行ったり来たりしながら最終的な形になっています。
大工さんが高気密・高断熱の施工に知見があったのが良かったです。このような住宅には丁寧な仕事が必須です。高性能化すればするほど、残ってしまった弱点部分にすべての湿気が集まり結露を起こすと言われています(従来は満遍なく弱点が分散していたので)監督さんたちも丁寧に発泡ウレタンで断熱の漏れを埋めてくれました。