家づくりに役立つメールマガジンが届いたり、アイデア集めや依頼先の検討に役立つ機能や情報が満載!
アカウントをお持ちの場合
(OFFのときは写真にマウスオーバーで表示)
設計を担当
【掲載誌】
・relife+ (リライフプラス) vol.48
賃貸住宅でお住まいだったご夫婦がコロナ禍を経て、「家に自分たちを合わせるのではなく、自分たちに合わせて家をつくる」をテーマにリノベーションした住宅です。お施主さんから提示されたリノベーションのコンセプトは「料理、絵画、音楽、仕事の企画などひらめきをすぐ形に出来る場。疲れたらすぐに休めて、ひらめいたらすぐにスケッチ出来る場。仕事場やアトリエ、スタジオの手前ぐらいの作業と、のんびりできる空間をストレスなく、行ったり来たり出来る空間」でした。
リノベーションに際して現在賃貸で住んでいるご自宅にお伺いした際に「なるほど・・・」と思いました。じゃがいもの隣に画材がある、料理本の隣にビジネス書がある、ギター、ゲーム、絵画が良い意味で整理されずバラバラと置かれている状況でした。「なぜですか?」と聞きますと、「仕事の事を考えながら廊下を歩いていると、じゃがいもが目に入り、お昼はじゃがいもを使ったパスタにしようと思うんですよ。でも料理をしながら、あれ・・・もしかしてと仕事のアイデアが浮かぶ。そんなシームレスさが自分たちには心地よい」と。このシームレスさが「お二人らしさ」だと考え、リノベーションで具現化しようと考えました。
南北に細長く南側と西側に窓のある住戸でした。一方で南北のちょうど真ん中には構造壁で撤去不可なコンクリートの壁があり、間取りに大きな制約を生み出していました。行ったり来たり出来るシームレスな空間を作るためには距離が必要と考えて、LDKから廊下を経て仕事場、洗面室、浴室、寝室へと至る住戸としました。この廊下に大容量の収納とクローゼットを設置し「人と物の接点」を多く作りました。この廊下を行ったり来たりする中で、仕事のアイデアが浮かんだり、今日のお昼が浮かんだり、リラックスから少し仕事モードになったりが生み出されればと思っています。
最初の提案の際に「茶室への道すがらのような感じです」とご提案しました。「目的地の茶室だけでなく、その道中も重要な要素で、そこから始まる体験が茶室建築では重要なんです」と。お住いになってからは「本当に廊下を歩いていると色々な物が目に入って来て、自分たちのコンセプトを具現化した家になった」とお話されていたのが印象的でした。
現在の住居をなるべく片付けない状態で拝見させてくださいとお願いしました。もちろん「えっ・・・」と言われましたが現在の賃貸住宅への不満やお二人のライフスタイルを知りたいのでとお願いしました。拝見できた事でご提案もしっくり来るものとなったと思います(我々の事務所にお越しになる前に訪問したデザイン会社では打ち合わせ回数が少なく、現在のご自宅を見るまではなかったようです)
お住いになった家をご訪問しても、変わらずに画材の横に食材があるので「家がお二人の心地よいライフスタイルを邪魔していない」と安心しました。また最初のお会いした際に「家づくり」を楽しんでくださいとお話したら、ほっと安心していたのが印象的でした。