2021/01/19更新1like2345view

著者:黒木武将

専門家フィーチャー

【SUVACO黒木が語る!】鹿内健さん(Sデザインファーム)〜可能性に満ちた、ユニークだけどロジカルな設計〜

この記事を書いた人

黒木武将さん

SUVACO株式会社の創業者です。
ハコに合わせて暮らすのではなく、自分らしい住まいづくりが当たり前になるように!
外資系金融から一転、住まいのマッチングプラットフォームSUVACOを立ち上げました。
SUVACOは、お客様と専門家の「間」に存在することの価値を追求します。

SUVACOの創業者・黒木が、これまでお会いした専門家たちの素顔を「完全主観」でお届けするシリーズ。

「鹿内さんの経歴からは、従来の考え方に縛られずに新しい価値を作り出そうというベンチャー気質を感じます。一方で、過去から綿々とつながる時の流れや文化を大切にする姿勢も感じられます。世代の差がありながら、お会いした当初から近い感覚を感じたのは、その辺りにあるかもしれません」(黒木)

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

ベンチャー気質

学生時代からスピードスタジオ(飛ぶ鳥を落とす勢いの設計事務所オンデザインパートナーズの前身)で修行をして、実績を積んでから独立したと聞くとエリートコースのように見えますが、当時のスピードスタジオは2人の創業者(保坂猛さんと西田司さん)が立ち上げたばかりの小さな事務所。鹿内さんはスタッフ第1号で、創業者のアパートを事務所がわりに、押し入れで設計作業をしていたそうです。
左が鹿内さん。右が黒木です

左が鹿内さん。右が黒木です

小さな事務所なので、指導というよりは全てが実践。事務所の急成長に合わせて自らも早く成長することができ、何より、お客様や工務店と直接やりとりすることが多く、「自分たちの設計が形になってこんなに喜んでくれるんだ」とつくることの喜びを学生時代に実感できたとのこと。すっかり設計の仕事に取りつかれてしまったようですね。
現在の事務所にて

現在の事務所にて

独立後は順調かと思いきや、独立直後にリーマンショック。設計提案をしても仕事にならないことが続き、レンタルビデオ屋でバイトしながら食いつないだようです。そんな悲壮感は全く表に出しませんが、そんな厳しい時期を経て現在の活躍があるだけに、自分のところに設計を依頼してくれる一人ひとりのお客様や、支えてくれた家族には感謝しかない、と。

ユニークな発想とロジカルな計算

「バスキッチンの家」は鹿内さんの自宅。マンションの窓辺に浴室とキッチンを配置したユニークな事例。40㎡という限られたスペースを最大限利用するため、普段はリビングの一部として利用しているキッチンに面したスペースが、建具の開閉によってゆったりとした浴室の一部に切り替わる。
最初聞いたときは「うーん、面白いけど、本当にそれで快適に暮らせるの?」と思いました。でも、子どもが10歳になるまでの10年間だけ住む家だと考えると合理的。築年数と小ぶりな面積があいまって600万円と物件購入費が低く抑えられ、リノベーション費用に750万円かけても合計金額1350万円。都内で10年間、同程度の広さを賃貸するのと同じ金額であり、その価格で自分の家を持つことが可能となるのです。10年経っても、相応の価値は期待できそうです。そして何より、陽当たり、風通し、眺望など、物件の持つ魅力を、小さな子供のいる家族にとって大切なお風呂とキッチンに当てた発想が素晴らしい。

施主さんとの素敵な関係

実は、鹿内さんの事例で私が好きなのは「碑文谷・時層の家」。家にいながらにして、大きな歴史の中で刻々と変わる時間の流れが感じられる、とても豊かな事例です。そして、この事例は「バスキッチンの家」と同じタイミングで設計されていたとのこと。
バスキッチンは、見た目の奇抜なアイデアが、新築住宅の自由なアイデアを求めている人、少し面白さを求める事業系の方に受けているようです。一方で、「時層の家」は、インテリアの洗練された形が良いと言われることが多いようです。
統計をとったわけではないので私の勝手な印象ですが、本人より上の世代の施主さんも多いのではないかと想像しています。決められた枠にとらわれずにどんなものを提案してくれるのか、楽しみ、かつ、新しい価値を創ろうという姿勢を応援したいと感じる余裕のある人が、鹿内さんと一緒に家づくりをしたら楽しいのだろうな、と思います。

先日私が伺った内覧会(「スリットの家」)のお施主さんは60代の方だったのですが、その方が鹿内さんの魅力を知ったのは「バスキッチンの家」だったそうです。暮らし方を家具に支配されるのはいやだ、おおらかに自由に暮らしたいと考える施主さんは、バスキッチンのような発想をする建築家と自分の終の住処を創りたいと思ったらしい。
鹿内さんは、自身が設計する空間が「素敵な時間を楽しむ場所であって欲しい」と考え、設計では「いかに自然を取り込むか」に意を砕いているとのこと。短い時間かもしれないけど、綺麗な朝日が昇る瞬間を楽しめるとか、家に入り込む光が創りだす陰影の変化を楽しめるとか、抜ける風が心地よいとか。

家で過ごす時間くらい、立ち止まって時の変化を楽しもうよ、と年下の鹿内さんに言われているような気がします。
一瞬、実物と見まごうほど精巧な模型。こんなところからも自然を取り込む姿勢が伺えます

一瞬、実物と見まごうほど精巧な模型。こんなところからも自然を取り込む姿勢が伺えます

広がる活動領域

アンテナ高く、新しい取り組みにも前向き。SUVACOの新しい取り組みなども、積極的に使って、コメントをしてくれる専門家の一人です。

人の縁を大事にし、設計にとどまらず、多様な取り組みを行っているところも共感するところ。出身事務所のオンデザインパートナーズとのコラボレーションで賃貸住宅を手掛けたり、大手不動産会社と組んでコミュニティ賃貸を手掛けたり、宿泊施設や創業支援施設を手掛けたり、活動の幅を広げているようです。渋谷区で事務所の上階にシェアオフィスを運営しており、クリエーターとの交流を深めているようなので、これからも溢れるアイデアを形にする場がますます増えてきそうです。
鹿内さんが運営しているシェアオフィス

鹿内さんが運営しているシェアオフィス

宿泊施設や集合住宅など、大型案件の設計機会がこれからも増えると思いますが、個人住宅のリノベーションの設計も継続して欲しいなぁ。


<こんな人にオススメ>
□新しい感性のデザインを求めつつも、しっかりしたロジックで納得した家づくりをしたい人
□従来の枠組みにとらわれず、チャレンジを好み、少し気持ちに余裕のある人。
□アクティブシニアの人は、一緒に楽しく家づくりができそう

<こんな人にはススメない>
□デザイン提案に価値を認めない人。
対応業務 注文住宅、リノベーション (戸建、マンション)
所在地 東京都渋谷区
主な対応エリア 全国
目安の金額

30坪 新築一戸建て4,500〜6,000万円

60平米 フルリノベ1,500〜2,100万円

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