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市街化調整区域に建つ、若い家族のための住まいです。
敷地は地域の田園地帯の北端にあって、南から田んぼを通った風が心地よい場所です。
一方で北側は比較的交通量の多い生活道路となっており、
田んぼへ向けて、守られながら開くような暮らしを目指しました。
焼杉板の外壁にいくつかの片流れ屋根が重なった、延床面積200㎡弱のガレージハウスです。
クライアントは以前設計した別の住宅(木々の窓の家)のクライアントと同級生。僕からは大学の後輩になりますが、少し歳が離れているので大学では直接接する機会はありませんでした。
後輩である旦那さんは大手の設計事務所にお勤めですが、住宅とビルでは勝手が違うのと、「木々の窓の家」のクライアントから話を聞いて前からお願いしたいと思っていた、という事でご相談いただきました。
ご要望は奥様主導で、お子さんに目が届きやすい事や日々の生活動線を重視し、水廻り空間にゆとりをもたせています。旦那さんからは木製建具を製作する事、焼杉等の自然素材を使いたい、というのが主なリクエストでした。
最初からコストを意識して設計を進めたおかげで、耐震性は等級3、断熱性はHEAR20 G2レベルという高い性能を備えつつ、意匠性を持たせた住宅をリーズナブルに作ることができたと思います。(ガレージが含まれるとはいえ、坪70万円程度でできているので・・・かなり優秀だったと言えます。)
見どころとしては、アプローチガーデン、囲われたリビング、和室の子上がりと、焼杉板と片流れ屋根の連なる外観あたりをご覧いただければ嬉しく思います。
まずアプローチは塀で囲い切らず、動線を誘導する最低限の木塀の他は造園によってプライバシーの確保と空間演出を行っています。玄関扉を開けると木々の緑が飛び込み、その向こうに田んぼが広がる、という魅力的な導入空間になったと思っています。
※ちなみに僕は設計する時、基本的に塀に頼らないよう努めています。
敷地の外まで広がりを感じられる方が暮らしに広がりが生まれるのと、
塀が単純にコストがかかりすぎると思っているからです。
中に入って、メインの居住空間となるリビングダイニングには直接外部に接する窓がほとんど設けていません。代わりに隣接する和室やユーティリティに大きな開口を設けることにより、他の部屋を介して外とつながるプランになっています。
そのためとても守られた感じになり、安心してカーテンを開けて生活ができるように工夫しています。直接外とつながる窓が無いと言ってもハイサイドライトがあるおかげで、室内が暗くなることもありません。
リビングは最近のトレンド、ソファ無しにして小さいお子さんがいても広く使えるようにしています。
そのリビングに対して、子上がりの和室がソファ代わりに機能します。和室が一段上がっているおかげでリビングダイニングが一段掘り込んだような形状となり、守られ感を高める事に寄与してます。
また和室から眺める田んぼの景色と、田んぼから吹く風を浴びるはとても気持ちの良いひと時で、この住宅で一番の特等席。竣工して一年たちますが、基本的にお子さんの遊び場となっているようで、子上がりになっている事でキッチンからの死角が減り、安心して遊ばせておけるようとの事でした。
そして、内壁にはしっくい、外壁には焼杉板を使い、自然素材の感じられる建築にしました。外観については旦那さんの希望もあり、片流れが連なるような構成になっています。
切り妻屋根に比べて北欧モダンテイストが加わるのと、周囲に比べて大きなボリュームを分節されることにより、圧迫感が軽減されています。
完成したときは、自分の思い描いた家ができる事に大変喜んでもらえました。
その後はご自分でデッキをDIYしたり、BBQスペースを作るなど楽しみながら暮らしていただいています。
一年過ごしてみてどう?と聞いてみたら「快適です!」というお返事。
今もアップデートにお付き合いさせてもらっています。
設計自体は、クライアントのお父さんがお持ちの農地の中から家づくりに適した敷地を選ぶところからスタート。
急ぐ必要がなかったことが大前提ではありますが、農地転用の検討などをじっくり時間をかけて行いました。
旦那さんも設計者。ましてや自邸ですから「自分でも考えたい」のは当然です。
それは最初から伺っていたので、僕からの提案だけでなくご自分でも色々検討を重ねていただき、そこへコストコントロールや耐震性等をアドバイスする、というようにキャッチボール的に設計を進めました。
結果、案は3回程大きく変わっています(最初からやり直しています)が、最終的に納得のいくプランになったと思います。時間的には20カ月のうち1年くらいは土地選定にかかっていて、農転など家づくりの前段階でコストを含めた検討をじっくり行いました。
また、家具のコーディネートも任せていただいたので、建築工事の進捗に合わせてお店にいって実際に体験しながら、住まい方にあわせた提案をさせていただいています。
旦那さんは夢いっぱい、奥様は生活目線。
打合せはそのせめぎあいで・・・大抵奥様の勝利でした 笑
まあそれは冗談として、
仲が良いからこそ、思ったことを言い合えているご夫婦だなという印象でした。
僕としては、両者の希望が上手く調停する着地点を探すように設計、あるいはアドバイスを心掛けたように記憶しています。
最終案の方向性が決まってからはテンポよく進み、見積もりも減額調整どころか、思ったより安く出てきたので追加調整ができたのことは幸せでした。
南側の畑から見た外観。ちなみにこの畑は旦那さんのお父さんのもの。 和室の木製建具は雨戸、網戸と合わせて特注の製作サッシです。 焼杉板の外壁が柔らかな印象で、屋根がリズムを作っています。 中央のエントランス前には小さな雑木の庭を作りました。
目の前の農道は殆ど人通りのない道です。ガレージとエントランスガーデンの間に塀を建てて、アプローチ動線を誘導しています。
和室で過ごされている様子を撮影させていただきました。そんなに大きな部屋ではありませんが、外への解放感と相まって心地の良い居場所になっています。手前のリビングとの段差は300mm。少しの変化でも空間体験は随分変わってきます。
和室の木製建具。子上がりになっているので、道路からは床レベルが高くなっています。お子さんの目線でも大人より高くなるので、適度にプライバシー感が保たれます。
敷地南側に広がる田んぼの中から撮影しました。 ここを通る風は本当に気持ちよく、 中間期は窓を開ければ家中を爽やかな風が抜けていき、一日中快適に過ごすことができます。
北側道路からの外観です。片流れ屋根が連なる様子が見えます。
玄関はピーラー材で製作した木製引戸。把手は上手工作所のスクエアハンドルDH001です。手前の道路からは木々が良い具合に目隠しをしてくれるので、プライバシー感と防犯性(見通し)を両立できています。
エントランス前の坪庭。常緑ヤマボウシを中心に雑木の庭を作っています。 小さくても囲まれているため森の雰囲気、その向こうに広がるのが田園風景なので自然を十分感じられます。毎日出かける時にドアを開けると木々が見送ってくれるというのは、気分が良いですね。
リビングから右手にダイニング、左奥方向に和室が見えます。和室の床下には「床下エアコン」が入っていて、スリットから冷暖気がリビングにも入るようになっています。和室には大きな開口が開いていますが、リビングからは1部屋挟むことでプライバシー感が高まり、カーテンを閉めなくても気にならないようになっています。
2階から見たリビングダイニングの吹抜け。子上がりの和室がベンチ代わりになって、ここに腰かけてテレビを見たり、絵本の読み聞かせをしているそうです。 子上がり上は子供の領域にしておき、ダイニングエリアは大人の居場所と使い分けられています。
キッチンからリビングダイニング、その向こうの和室を見ています。リビングダイニングに直接設けられているのはダイニングの窓だけ。そしてこの窓もその向こうはエントランスガーデンなので、植物が育てば直接敷地外から見られる窓は無くなります。カーテンが無くても視線を気にせず暮らすことができます。
和室から南の田んぼを見ています。地窓といって、床にくっついた窓にすることによって和の雰囲気をプラス。ここは子上がりになっているので、一段下がったリビングからは普通の窓の位置に見えるようにしています。どこにいるかで視線の向く方向が変化します。
和室の東面。こちらも窓の先は田園風景が広がります。すぐ隣は旦那さんのお父さんの畑。正面右手に設えた文机は、下にエアコンが仕込まれています。
和室の文机下に仕込んだエアコン。床下を暖かい/冷たい空気が通ることで床暖房的にも機能します。
和室の西側を見ています。収納の下は床下エアコンの出口。右手奥に見えているのはダイニングテーブルです。
リビングの上は吹抜けになっています。ダイニングまわりは対照的に天井を下げて親密な空間を作っています。ソファはモモナチュラル、チェアとテーブルは飛騨産業、ペンダント照明はルイスポールセンのPH3/4です。
和室の障子を閉めたところ。組子の寸法を揃えて、大きな建具に見えるようにしています。実際には4枚建てですが、2枚に見えるかなと思います。
ダイニングのキッチンは、クリナップのKTシリーズ。シンプルで十分という奥様の方針により、必要十分な性能でリーズナブルな既製品を用いています。I型のキッチンを大工造作で囲う事で造り付け収納のように見せています。
ダイニングのテーブルとソファベンチ。ソファはモモナチュラル、チェアとテーブルは飛騨産業、ペンダント照明はルイスポールセンのPH3/4です。
カウンターキッチンの様子。キッチンはクリナップの既製品を用いてリーズナブルに、そこへホワイトアッシュの無垢材でカウンターを作りつけています。浸透性ガラス塗装という乾いたら塗ったのかどうか分からなくなるコーティング剤を用いているので、少なくても1年経過した段階では汚れは皆無。カウンターチェアはTON社のがるカウンターチェアです。
2階の主寝室。ただし当面はまだお子さんが小さいため、子供部屋に家族全員で寝起きするとの事で、こちらはピアノの部屋となっています。
廊下から見た主寝室。窓が2つありますが、右側のものはリビングの吹抜けにつながっています。
子供部屋は2室に分けられるようになっています。 当初は家族全員でこの部屋に。お子さんが大きくなってきたら子供たちの部屋として、そして個室が欲しい年齢になったら真ん中で仕切って独立した部屋になるようにしています。
予備室はお父さんの部屋。クローゼットにもなる書斎はリモートワークにはうってつけでした。お子さんが寝られてから落ち着いてここで読書をしたり、お仕事をされているそうです。
2階の中央に設けた納戸は、収納であり空調ルームとなっています。上部に設置されたエアコンの冷暖気を、下部の換気扇で吸気し、各室へと分配しています。夏と冬は常時運転させることで低コストで全館空調を実現させています。
エントランスの様子。深い庇は出入りの時には雨にぬれずに済み、木製建具の保護にもなっています。土間は豆砂利の洗い出し。和の雰囲気になりますね。
玄関扉を開けるとこんな感じで風景が飛び込んできます。右手に進むとシューズクローゼット。扉と採光窓はピーラー材の製作建具、壁はほんのりピンク色の漆喰です。
シューズクローゼットを備えたエントランス。空間をゆったり確保しました。壁は漆喰で、ほんのり淡いピンク色をしています。床はウォルナットのフローリング。
ただいま~と外遊び帰ってきたところ。シューズクローゼットのおかげで玄関部分がスッキリしていますね。
キッチンの向こうはパントリー、その先にユーティリティへとつながります。家事をしやすいよう動線をコンパクトにまとめています。
ユーティリティ空間。左手はキッチン、正面奥へは洗面脱衣室へつながっています。ここは家事動線の軸になる場所とも言えますね。左手の窓からテラスへ出て洗濯物が干せるようになっており、雨の日はここで乾かせるように洗濯ポールと空調の吹き出し口を備えています。
洗面脱衣室は3畳ほどの空間として、小さいお子さんを一緒にお風呂に入れる時にも窮屈にならない大きさを備えています。カウンターはアイカのメラミン材を使用。木部にはキッチンと同じく浸透性ガラス塗装を施して、水濡れ対策をしています。
2階のトイレです。奥は奥様セレクトのアクセントクロス。
夜の外観です。
玄関横のダイニング出窓から漏れる灯り。帰宅を出迎えてくれているようにも見えます。