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設計、監理、インテリア、エクステリア(庭・外構)を担当
打越の家
横浜山手の外人墓地から続く尾根に向かって、元町側からのぼる坂道に面してこの敷地はある。建て主は夫婦と子供二人の4人家族で、ご主人は週末に釣りにでかけることを趣味とし、仕事は建築のプレゼンテーションをしておられる方である。職業柄、建築への造詣も深く、設計のテーマを建て主と一緒に探す事ができた幸運なプロジェクトであった。ここで計画の目標となったことは、第一に、限られた予算を生かすため間仕切りを極力減らし、なるべく仕上げをしないで構造をそのまま現すこと。次に、ご主人がトローリングで釣った魚を帰ってからすぐに捌けるよう、1階を土間のような部屋と考え、内部も含め敷地全体を一つの空間として生かすことであった。
ここで選択された構成は、門型の単純なフレームを敷地の長手方向に連続して並べ、そこに幌の様に外皮を被せる方法であった こういった架構は鉄骨構造とすれば、解放性を保ちながら筒状の空間を容易に実現できるが、住宅として考えるならば内部に鉄骨が露出することは避けた方が良いと思われた。そこで、木構造を導入し、短手方向の揺れと、防火への対応は、鉄骨が受け持つ混構造にすることとした。木構造を導入することは、構造をそのまま仕上げとし得るし、家具まで大工工事とすることで、限られた予算のなかで生活の質を上げられると判断したからである。この木構造部は材料の違いや、その木地の違いが気にならぬよう予め白く染められたものを現場で組み立ててある。一方、敷地は変形しているので、この形を建物に写し、門型フレームを敷地の端で道路にそうように斜めに置いた。さらに、これをランドマークタワーが見えるように足下で扇の骨のように束ねてある。外皮はガルバリウムの折板である。外壁と屋根を同一の材料で幌のように表現できる材料として選択した。設計中、特に意識したことは、出来上がった建築から、建設する時の過程が、映画を見るように簡単に想像できるような建物にしようとしたことであった。スケルトンが立ち上がった時、建物は凛々しく見え、建築しようとする意志をはっきりと感じることが多い。しかし、仕上がるとその意志は影を潜め、そこに起きた事を思い起こすことが難しくなることがしばしばである。ここではそんな気持ちを消さずに現せたように思う。出来上がった建物にその過程が見えると思う。そこには部材の関係が見え、ジョイントが見え、建築することの楽しさが見えるのである。できあがった建物を眺めていると、そこに古典的オーダーの起源とは、こんな楽しさを固定しようとした願望から始まったのではないか、という思いがよぎるのであった。
(新建築住宅特集より抜粋)
写真:新建築社写真部
写真:平井広行
写真:平井広行
写真:新建築社写真部
写真:新建築社写真部
写真:平井広行
写真:平井広行