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東京都新宿区、夫婦と小さな女の子が暮らす住宅。
敷地は穏やかな目白の丘にあり、クアイアントとの2年にわたる土地探しを経てようやく見つけた場所である。隣家の相続による土地分割でできた一部分で、幅4.5m、奥行き18mの南北に細長い形状であった。
周囲三方を隣家に囲まれ南側からの採光しか期待できないため、通常の2層の計画とした場合、長辺の壁量は十分に確保できるが、短辺に壁をたてたとたん朝・夕は太陽が逸れてしまい1階には全く光が入らない。
そこで、細長い平面の長辺方向を分割するように3枚の耐力壁を立て2層のヴォリュームを4つに分けた。採光を最大限取り込むために屋根はやま・たに形状とし、開閉式のトップライトを多数配置、耐力壁には取り込んだ光や風の流れを操作する孔を注意深く検討し設けた。それぞれのヴォリュームは、やま、もしくは、たにを持ち、反射と拡散を繰り返しながら下階まで光を届ける。道路側に設けた開口部から入った風は、壁の孔とトップライトを通り、空へと緩やかに抜けていく。
複数のトップライトからの光は建物全体を突き抜けたり、しばらくすると目の前の壁がクローズアップされたりと空間の様態は生き物のように変化を繰り返す。日時計のように太陽の動きに合わせてゆっくりと移動していく内部の光、曇天の均質な光、オレンジ色に壁が染まる夕景など外部環境を映し出す鏡のようでもある。三枚の壁が配置されることで奥行きはさらに引き延ばされ、孔で繋がったスペース同士の距離感は複雑で多様な表情を見せるものとなった。