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築80年の長屋をリノベ。柱と梁のある陰の場、光庭と一体となる水まわりは陽の場。完成度の高いインスタレーションのよう。
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設計を担当
懐古的な保存ではなく、古き良き物を表しにした上に新しいものを加え対比した、新:旧、そしてモダン:和のコラボレーションである。現代の材料をつかったデザインと、長く熟成された長屋の魅力を融合させてミステリアスな世界を創りだそうと考えた。
新築のみではなし得ない魅惑のエネルギーをもって生まれ変わったミクロコスモスである。
名古屋駅西は空襲から免れた築100年の長屋が現存している。少しずつマンションが建ち始め長屋も減りつつある。しかしここに少しでも古き良き長屋の魅力を理解して、喜んで借りてもらいたいというオーナーの2件目のプロジェクトである。
計画は大通りから少し入った築80年になる3軒長屋の真ん中である。左端の長屋は15年前にリノベーションした1件目の「RE長屋-ITO」である。今回も間取りは構造的な既設の軸組みに素直な形状でプラニングをするため同じ構成である。前回から年数が経った分は骨組みに傷みがあったが、補強や柱など長屋の原型である空間構成(通り土間の横に部屋が並び奥に水廻り、ロフトに屋根裏収納)を活かしながら改修を行った。
母屋の奥は簡易的な増築が重ねられていて半壊状態になっていた。これを長屋本来の光庭に再生して、奥深い暗い長屋に光を落とす、陰翳礼讃の和の空間を演出した。限られた空間をより広く感じるものとするため、水廻り空間は鑑賞できる景色としてシンプルでモダンなデザインとした。光庭と一体となる陽の場である。また、母屋の年を積み重ねて傷ついた味のある柱・梁は表出させ、和を感じる薄暗く落ち着きのある陰の場である。
築100年の熟成した母屋に居ながら、新しくモダンにデザインした水廻りを見ていると、不思議な居心地を感じる。新築では成しえない時間がつくった空間に心身が癒される建築になった。
母屋の奥は簡易的な増築が重ねられていて半壊状態になっていた。これを長屋本来の光庭に再生して、奥深い暗い長屋に光を落とす、陰翳礼讃の和の空間を演出した。限られた空間をより広く感じるものとするため、水廻り空間は鑑賞できる景色としてシンプルでモダンなデザインとした。光庭と一体となる陽の場である。また、母屋の年を積み重ねて傷ついた味のある柱・梁は表出させ、和を感じる薄暗く落ち着きのある陰の場である。
列柱の越しに光庭・水廻りを見る / 表しになった熟成された丸太梁と新しくタイル張りでつくられた水廻りの対比がユニークな空気感を出している。
新:旧の対比、モダン:和の対比 が光庭を介して融合されてデザインのコラボレーションが生まれている。
3軒長屋の中央が「RE長屋-ITO2」 /左端は15年前の1件目「RE長屋-ITO」
築100年の趣を残しつつ新しくシックに包み込んだガルバリウム鋼板のファサード。3軒並んだ長屋の街並みが風景をつくっている。
玄関から奥行のある空間を感じる /奥に見えるのはタイル張りの水廻り
昔ながらの瓦屋根の玄関ファサードと奥のモダンなタイル張りの水廻りの対比
玄関土間から奥の水廻り /規則正しい列柱の向こうには光庭が抜けて見える
既設の軸組となる柱のリズムを活かしながら、奥の光庭と白い水廻りを見せている。
玄関横の部屋から階段をみる /光を抑制した空間はシナ合板で明るく設えている。
母屋部分の玄関側の開口を抑えてプライバシィを守り落ち着きを感じる部屋である。
玄関側の部屋から奥の光庭と水廻りをみる /木質感を大切にした仕上
引き込み戸みで部屋が分割できる。階段を上がるとロフト風の寝室に行ける。
光庭側から玄関側を見る /表しの丸太梁が見られる吹抜けは2階ロフトへつながる
既設であった天井を撤去して丸太梁を見せる。左手にあった通り土間との壁も撤去して大きな吹抜け空間となった。
吹抜けの力強い丸太梁 /2階ロフトとは縦格子の開口部でつながる
築100年の趣を見せることで、この長屋の歴史を感じることができる。
1階はラワン合板、吹抜けの壁は土壁の中塗り仕上げで粗々しく仕上げている。 床は無垢のナラフローリング、天井はラワン合板仕上げ。
母屋の中から光庭と水廻りをみる /陰翳礼讃の光の質感をデザイン
シックな空間から明るくモダンな光庭と水廻り空間を見る。陰翳礼讃を感じるための光と闇を演出している。
光庭と水廻りをみる・夕景 /光庭の明るさが抑制されて一体感が増す
光庭が外室として全体をつなぎ一体感が強まった。
光庭に面した引き込みを開けると大きくつながるリビングダイニング。
光庭とのつながりを持った水廻り。写真はガラスの引戸を外して撮影。
光庭に沿った配置のキッチン /キッチンを抜けたら洗面トイレ浴室へ
キッチンの手間に冷蔵庫を置く。水廻りは白で清潔感を出す。
キッチンから玄関側を見返す /既設では通り土間としていた空間
通り土間として真っ直ぐ延びていた空間構成を活かしている。
大きな引戸で光庭と開放的につながる。写真はアルミサッシを外している。
浴室からキッチン・母屋を見る /光庭を挟んで母屋のリビングダイニングとつながる
光庭の向こうに見えるリビングダイニングはユニークな眺め。ブラインドを下すとプライバシィが守られる。
光庭がこの長屋の生命の源となる。引き込きみ戸を開けると光庭から玄関側の部屋までつながる。
既設の屋根裏部屋の上り梁を活かす空間。
2階ロフトから1階のリビングダイニングへつながる縦格子 /小屋組の丸太梁を活かした空間
ロフトとなる屋根裏部屋は天井が低く、こもり感の居心地がよい。
ロフトから1階の光庭を見る /丸太梁の下のリビング・ダイニングとのつながり
光庭の風・光がロフトまで伝わる。既設の1階天井とロフトの土壁を撤去してつながった空間である。
中に入ると大きな光庭があるとは感じられない外に閉ざした外観が面白い。