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名古屋駅西は空襲から免れた築100年近い長屋が数多く現存している。この地区の住人は高齢者が多く空き家も目立つ、しかしここに少しでも長屋の魅力を理解して喜んで借りてもらいたいというオーナーがクライアントである。
計画は大通りから少し入った築60年になる3軒長屋の1軒である。長屋の骨組みはしっかりとしていたが、奥の庭の水廻りは増築が重ねられ陰湿な環境になっていた。これを長屋本来の光庭を再生して、土間通路の横につながる部屋の配置を再構築した。限られた空間をより広く感じるものとするため、水廻り空間は鑑賞できる景色としてシンプルでクリーンなデザインとした。また、長屋本体になる年を積み重ねて傷ついた味のある柱・梁は表出させ、骨組みの理解できる力強いものにした。
懐古的な保存ではなく、古き良き物を表した上に新しいものを加えぶつけることを試みている。現代の材料をつかったデザインと、長く熟成された長屋の魅力を融合させてミステリアスな世界を創りだそうと考えた。新築のみではなし得ない魅惑のエネルギーをもって生まれ変わったミクロコスモスである。
母屋の奥に新しく作られた水廻り。 浴室・洗面・トイレが中庭(コートテラス)に面している。 白いタイルで作られたモダンなデザイン。
中庭に面して開放された水廻り。 竣工直後のデッキテラスが貼られる前。 水廻り空間をひとつの照明として捉える。 使用すると時は、ブラインドを下ろす。
長屋の空間構成を活かしながら、素形(軸組み)を美しく見せる。 柱のリズムが空間を楽しくする。 中庭の明るいスペースの向こうには水廻りがある。
低めに抑えた通路とリビング。 テラスへ一面につながる一体感。
1段低いリビングの向こうにダイニング・和室とつながる。 ダイニング・和室と引戸で部屋が仕切られる。 左手の薄くらい中にステンレスの業務用キッチンがある。
中庭のテラスから母屋となるリビングダイニングを見る。 光を抑えた暗い室内の奥に表通りに面した障子が明るい。
既設の柱梁を活かしながら、木の質感をシンプルに仕上げる。 左手の引き戸の中にキッチンが隠れている。(下) リビング天井は外して丸太梁を表しにしている。
丸太の小屋組みを活かしてロフト空間の魅力を出す。 引い障子の地窓が丸太の趣きを引き出している。
築80年の長屋の1軒をリノベーション。 ひっそりと隠れ家のような外観。