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設計、監理、インテリアを担当
岩崎家の旧庭園に沿って建つ長屋の改修計画。
明治時代から変わらない庭園の景色が眼前に広がる、築100年の長屋です。
窓から見える、決して広いとは言えない緑を、部屋のどこにいても享受できるような住宅にしたいと考えました。
単に窓を広げることは現実的ではなく、目の前の環境を部屋中に充満させるような設えを考えています。
まず部屋を分断していた階段室の壁を取り払い、キッチンを中心とした大きなワンルームとしました。交通量の多い表通側と、静かな庭園側と性格の異なる場所が生まれています。
躯体の仕上げは、緑が映えるように補色関係にある赤を少しだけ入れた塗装とました。
光の当たり方、視線の角度により白にも薄赤にもベージュにも変化する、揺らぎのある空間となりました。
庭園側の床、キッチンやレンジフードは艶のある素材を選択し、反射により緑を奥まで引き込んでいます。またTVの背面を磁器質タイルとし、艶を補充しました。
繰り返される増築により、自然から切り離された生活を開放し、都会と自然の間にある環境が活かされた住まいとなりました。
お施主様は家族経営のお米屋を営まれている、30代前半のご夫婦です。奥様のご両親が所有し、時々友人を招いてホームパーティーをしていたこの物件を、自身の結婚がきっかけで新しくリノベーションして住むことになりました。ご両親は同じ長屋の2軒となり、祖母は徒歩5分の場所に住む、家族の距離がとても近いご一家です。
リノベーションするにあたり、奥様も友人を自宅に招くことが多いため、2階のリビング、キッチン・北欧系のテイスト
・キッチンで料理をしながらTVが見れる配置、アイランドキッチン
・夫の趣味のバイクを置くことができる玄関
[2階]
最初に物件を見たときから、庭園側の緑の環境がこの場所に住むにあたり重要なポイントとなると感じていました。この窓から見える庭園の緑がどこにいても感じられるように、2階の壁を全て取り払い、大きなワンルームとました。そのために個室は3階にあつめ、2階はキッチンやリビングなど家族があつまるスペースとしています。
庭園側の窓周りにはベンチをつくり、緑を眺めながら座って本を読んだりして過ごすことができるようにしています。今では奥様は朝必ずこのベンチに座り、緑を眺めてから朝食の準備をされているようです。
壁天井の塗装は緑が映えるように、緑と補色関係にある赤が少し入った塗装としています。日の当たり方、明るさによって赤にも白にもみえる映像のように変化する空間となりました。
ただ大きくワンルームとすると冗長的な空間となるため、あえて中央に階段を配置したり、袖壁を残したり、庭園側の床レベルを一段上げたりして、場所に多様性をもたせています。
[3階]
庭園とは反対側には幹線道路があり、夜中まで交通量の多い道路に面している3階については幹線道路側に風呂、トイレ、洗面を集め、寝室を庭園側に配置した。
洗面脱衣所に洗濯物を干せるようにし、またバルコニーにも直接出られるようにしている。洗面脱衣所に隣接してWICを配置し、脱ぐ、洗う、干す、畳む、仕舞う、着るのサイクルがコンパクトになるように配慮しています。この流れをスムーズにストレスなく行うことは、日常生活において大きなメリットがあると感じています。
ムーミンがお好きなお二人から「北欧系」というキーワードが出てきました。どこかにあるようないわゆる北欧系ではなく、ここでしか成り立たない北欧系を目指し、北欧系の雰囲気を抽象的に表現し、北欧系のようにも見えるし、見方によっては北欧系ではないような、微妙なところを狙いました。
具体的には、白く薄く塗装されたシナ合板で家具や壁をつくり、また同じようにオークのフローリングにも白く薄く塗装されたものを使用し、全体的に脱色されたテイストとしています。
真鍮の金物や
毎朝、庭園側の窓際ベンチに座って緑を眺めるのが日課となっています。とてもかわいい住宅となり、友人を招くのを楽しみにされているようです。
間取りのパターンを複数提示し、生活スタイルをヒアリングしながらプランニングを進めました。キッチンの配置、洗面トイレの配置は時間をかけ、コンパクトかつ最適な配置となるよう何度も打ち合わせを重ねました。キッチンはご自身で選びたいとの事でしたので、複数社のショールームに同行し、実物を見ながら選びました。
キッチン天板やレンジフードに緑が反射し、庭園の雰囲気を部屋の奥まで引き込みます。キッチンはタカラスタンダードのホーローキッチン(photo by Hiroki Kawata)
リビングから庭園側の緑を眺める。大きなワンルームの中に家具や階段を配置、または段差を設けることで、冗長的になりがちなワンルーム空間に、場所のバリエーションを増やしています。(photo by Hiroki Kawata)
アイランド型のシステムキッチンに、正面にシナ合板の収納棚、横にも板を貼り、背面棚との雰囲気を合わせています。壁の少ないワンルームでは、照明スイッチを取付ける壁が動線上にない場合が多く、今回はキッチンの造作棚にスイッチを取付けています(photo by Hiroki Kawata)
窓からの緑を純粋に眺めるために、窓枠をなくしています。 窓際で緑を眺めながら過ごすためにベンチを設置しました。ここで寝転んで漫画を読んだり、リラックスして過ごせる場所です。ベンチ下は本棚を兼ねています。(photo by Hiroki Kawata)
窓からの緑を純粋に眺めるために、窓枠をなくしています。 窓際で緑を眺めながら過ごすためにベンチを設置しました。ここで寝転んで漫画を読んだり、リラックスして過ごせる場所です。ベンチ下は本棚を兼ねています。(photo by Hiroki Kawata)
壁に当たる木漏れ日が印象的。壁と一体になった扉を開けると、客用のトイレがある。階段の吹抜けには窓が開けられていて、柔らかい光が下まで落ちてくる。(photo by Hiroki Kawata)
壁掛けTVの壁にはボーダータイルを貼っている。青のような緑のような、絶妙な色合いがおもしろい。TVを見ながら料理をしたいという要望を受け、このような配置となった。(photo by Hiroki Kawata)
トイレと洗面と洗濯を一室にするとメリットが多い。扉や手洗い器が少なくなるし、部屋もコンパクトになる。さらにはウォークインクローゼットも隣接しているので脱ぐ、洗濯、干す、畳む、片付けるが一室で完結する。毎日のことなので、家事動線がコンパクトになることのメリットは大きい。(photo by Hiroki Kawata)
リビングに入るとすぐに手洗い場がある。ブラケットライトとしてリネストラランプを壁に設置した。(photo by Hiroki Kawata)
江戸時代に作られた庭園沿いに建つ長屋のリノベーション。都心の利便性がありながら、豊かな緑を享受する、都市と自然のあいだにある住宅。(photo by Hiroki Kawata)