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設計、監理、インテリアを担当
京急線の終着駅にあり、古くから港町として発展してきた浦賀の街にある、中古マンションリノベーションの計画です。
6マスに区切られていた既存の間取りでは、中央に位置するキッチンやリビングは採光通風がとれず薄暗い雰囲気となり、また各部屋の関係性も希薄でそれぞれが孤立した場所として分かれていました。計画では住環境の改善と、50㎡という空間の狭さを感じさせないプランニングが重要だと考えました。
まず既存の間仕切りを撤去し、片側を家族が集まるスペースとしてワンルーム空間にし、風と光が奥まで届くようにしました。ワンルーム空間は冗長的な空間にならないよう、床段差や造作家具、袖壁などでゆるやかな変化を与えています。
インナーバルコニーには造作ベンチを置き、本を読みながら洗濯が終わるのを待つことができます。
WICはデスクと一体になった壁で仕切り、一人でも篭れる場所を用意しました。壁は上部をオープンにしてリビングの気配が感じられるよう距離感を保っています。
洗面所には鏡と一体になった小窓を設け、閉鎖的になりがちな水周り空間に視線が通るようにしています。寝室の建具を開ければ、遠く浦賀の港を望むことができます。
建売住宅ではあらかじめ収納が多く用意されますが、この住宅では造りつけの収納の代わりに、テーブルやベンチなど居場所になる家具をつくり、小さな住空間全体を使える状態をつくりました。
洗面所から海が見えるように窓を設けました。その先の寝室の扉を開ければ、寝室越しに外の景色が見えてきます。
海沿いのこの住宅では、遠くに行き交う船や風に揺れる緑を見ることができます。
日本の住宅では、特にマンションでは洗面所は住宅の中央あたりにあり、窓がとれるところに部屋を配置することがほとんどです。縦長で間口の狭い間取りでは仕方ないと思いつつ、生活の豊かさが一つ欠けているようにも感じています。
ちょっとした工夫で視線の抜けをつくることで、景色を見ながら歯を磨く、いい時間が戻ってきました。
ちょっとしたことが毎日を明るくしてくれます。
コンクリートの壁面は既存のクロスを剥がした跡や建築時の墨出しの文字も残り、現しになった配管と相まってラフな印象を与えています。一方で間仕切り壁となっているシナ合板は、柔らかい印象の木目で、空間に明るさと優しさを与えています。
間仕切り壁は最低限にし、造作家具で空間をエリア分けすることで、リビングからランドリースペースまで見渡せる開放的な間取りとなっています。
フローリングはVivid アカシア(UVアンバー) です。アンティーク感もある落ち着いた色目がコンクリートとシナ合板の相反する雰囲気を調和させ、空間をまとめる役割をしています。
キッチンは極力シンプルに設備だけを備えており、居住者のライフスタイルに合わせてフレキシブルな使い方ができます。梁下まであるシナ合板の棚は食器などを収納しつつ、キッチンエリアを自然に区切る働きをしています。
スイッチはtool boxのアメリカンスイッチ。照明の配線を通す鉄管と共にインダストリアルな印象を与えます。
建具はグレーの塗装でコンクリート壁と調和させています。
ランドリースペースの洗濯機置き場はトイレの壁面から続くシナ合板の間仕切りで、玄関からの目線を意匠的に違和感なく遮っています。キッチンの造作棚はオープンの可動棚で、様々な使い方ができます。
トイレの扉はシナ合板の壁面に溶け込むように、枠をなくしています。手前の棚はシューズインクローゼットです。
広々としたランドリースペースは洗濯物を干すだけでなく、インナーバルコニーとして、観葉植物のお手入れやDIYをしたりと居住者の生活に合わせた多目的な使い方ができます。
洗面台の壁面は半分がミラー、半分が小窓になっており、暗くなりがちな洗面室からも海辺の景色を楽しめます。黒いタオル掛けは引き出しの取っ手にもなっています。洗面台を家具のように意匠的に見せています。
シナ合板の造作棚がコンクリートの梁下にはめ込まれるように設置しています。
ランドリースペースの床はビニル床タイル貼り。東リピエスタです。床材を変えることで、壁で区切らず空間は開放的なまま、スペースを区切ることができます。
玄関土間から廊下に上がる部分の床です。巾木はなしで空間をシャープに仕上げています。
ペンダントライトはリカシツのもので、試験管を用いたデザインが空間に遊び心を加えています。壁面の照明はコンクリートの壁面上に直接配線してます。シンプルな電球ですが、空間にマッチし、効果的に壁面を演出しています。