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設計、監理を担当
子どもが大きくなり、当時住んでいた約33平米のマンションが手狭に感じられるようになった。「息子のプライバシーが保てる家で暮らしたい」と考えていた時期に、両親が空き家になっている隣の家に住んだら?と声をかけてくれた。
実家の隣に建つ一戸建ては、かつてHさんの祖母が暮らしていた家。築45年以上の古い建物だったが、数年前に1階をリフォームしてあり、そのまま住もうと思えば住むこともできる状態だった。
「そのまま住むか、2階だけリフォームするか…」と考えていた時期にリノベーションを知り、最終的に外壁や屋根以外のほぼすべてをリノベーションすることになった。
もともと、1階はリフォーム済だったので、当初は2階だけリノベーションするつもりだったが、プランを検討しているうちに、「あまりにも1階と2階がちぐはぐになってしまう」と、1階も含めたフルリノベーションに切り替えた。
その分、予算がかさんでしまうことが気がかりだったが、建材や建具にかかるコストを抑えることで調整することができた。
H邸のキーポイントになっているのが、むき出しにしたラチス梁。実は木造だと思っていたところ、現地調査の際に軽量鉄骨造だとわかった。ラチス梁を見た瞬間、Hさんも建築家の碧山さんも「これは生かすしかない!」と直感したという。
夜になると、2階の高い天井に現しになったラチス梁の陰影が浮かびあがり、幻想的な雰囲気になる。また、ラチス梁に埃がたまりづらく掃除が楽になるよう、梁の凹みに透明なカバーを張るという配慮もされている。
この家に住み始めて3ヶ月ほどですが、不満は何一つありません。全てに満足しています。
いちばん気に入っているのは、家のどこにいても家族の気配を感じられること。オープンなつくりなので、私が1階、息子が2階にいても、なんとなく音が聞こえて「いるんだな」と安心できます。2人暮らしの私たちにとってはこのくらいがちょうどいい距離感ですね。
また、1階のキッチンに大きな窓があるのですが、私はあまりスクリーンを降ろさないので年配の方にはかなり驚かれます。素敵な家だから見せたいんですよ(笑)。両親は「そんなに開放的で大丈夫?」と心配しながらも、ちょっと用事がある時はインターホンを押さずにこの窓をコンコンとノックしてきたりと、便利に使っています。
Hさんは、建築士と密に連絡を取り合いながら、着工までに半年という長い時間をかけてプランを練り上げた。建築の専門用語は分からなかったため「服で言えば『花柄のワンピース』みたいな感じで」などの表現を交えながら自分の中のイメージを伝えたという。
「そんなあいまいな表現でも碧山さんはちゃんと理解してくれました。逆に、返信メールで『これは服で言うと……』と説明してくれたりして嬉しかったですね」。
建築士の碧山さんもまた、子育て中の主婦。そのため主婦目線での暮らしやすさを常に考慮して設計を考えてくれたことも、Hさんにはありがたかったそう。
リノベーションは、その建物の魅力を生かしながら新たに蘇らせることだと思っている。この家がラチス構造だったと聞いた時は、梁は絶対に見せるべきだと思った。そんな建物に出会えたことにも感謝している。
コストダウンについては、キッチンの扉をベニアにしたり、下の配管も現しにした。思い切った発想の転換が必要になるため、特に女性にとってなかなか理解いただけないことも多いが、施主であるHさんの理解もあり上手く収まった。
竣工を迎え、工務店の方とお会いした時も「この家は、本が一冊書けるくらい色々あったね」と笑っていた。工務店や大工さんそれぞれが、紆余曲折を乗り越えながら楽しむことができた現場だったと思う。
床はグレイッシュなフローリングをセレクト。それを中心にグレーを軸としたコーディネートとなった。グレーに塗装された壁のむこうは水まわりをまとめている。
キッチンと玄関の間にパントリーを設けた。こちらも装飾は抑えフラットな仕上げになっている。パントリーの壁は施主が白くペイントした。
玄関を入るとまずこのリビングが見える。階段の直線的なラインがフォーカルポイントになり印象的。階段上部の梁は既存のものをいかしている。
天井を抜き開放的な寝室。夜になるとラチス梁の陰影が高い天井に浮かび上がり幻想的な光景に。
主寝室に繋がるランドリースペース。グレーの壁のむこうに洗濯機を収めている。このスペースで洗う・干す・しまうが全て完結し、家事効率が各段によくなった。
オープンにしたファミリークローゼット。もともと持っていたチェストを新居に馴染ませるため、木で囲ってもらってできた作業台は、使い勝手がよくHさんも気に入っている。
壁付けのキッチンはコストを抑えるため、既製品をうまくとりいれている。ヘリンボーンに張ったタイルがユニーク。
ワークスペースは親子共用。ダイニングの脇にあります。 2階の個室とは気分によって使い分け。造作本棚は構造用合板によるもの。
玄関ホールは無駄な装飾をなくしミニマムに仕上げた。左の壁にシュークロークを収めている。
1階のLDKに隣接する脱衣所も兼ねたトイレ。インテリアにもこだわってシックにまとめた。
腰壁を本棚にしてライブラリースペースも兼ねた踊り場。引き戸の向こうは長男の部屋になっている。壁で仕切っているが、上部は開放されている。
2階のトイレには照明がついていません。天井がツインカーボになっていて天井全体がふわっと光ります。