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設計、施工、監理、プロデュース・コーディネート、土地・物件探しを担当
物件探しを始めた当初、I様は落ち着いた環境を求め、世田谷区内に住むことを希望されていました。しかし、一緒にお部屋を見て回る中で感じたのは「お部屋の特別感」は譲れないという強いこだわり。
I様のお好きなお店の内装や、映画に出てくるお部屋のインテリアなど様々なイメージを繋ぎ合わせ、言葉では表現しがたい「特別感」を共有しながら辿り着いたのは、大きなルーフバルコニーを携えた大田区のマンションでした。希望エリアから外れる物件でありながら、室内に入った瞬間のI様ご夫婦の目の輝きは、今も鮮明に思い出されます。
そんな運命的な物件との出会いを果たしたご家族を待ち受けていたのは、お部屋の真ん中に立つ壊せない壁の存在。家事をしながらお子さんの様子が見えるような広いLDKが欲しいという、I様の希望を叶える障壁となる懸念がありました。
ですが、そんな意向を汲んだ設計士が提案したのは、家の中心に幅の広い通りを設け、個々にお部屋を独立させながらも、通りを介してご家族の様子が感じられる空間でした。
京町屋の「通り庭」を参考にしたこのプランは、「廊下は極力小さくし、居室面積を出来るだけ大きくとりたい」という昨今よく耳にする流れとは一見反するように感じます。しかしこの「通り」は、キッチンの一部にも、リビングの一部にも、玄関の一部にもと複数の機能を許容する柔軟さを持ち、ひとつの大空間をつくるよりも、家全体の広さを活かしています。
また晴天の日、この家には玄関近くまで光が差し込みます。フローリングの流れに誘われるように視線をうつしていくと、窓の外には開放的なルーフバルコニー。玄関と通りが繋がっていることで、お部屋の複数の場所から外の気持ちよさを感じられるようになっています。
当初は希望のイメージを上手く伝えられるだろうか…と不安がっていたI様ですが、たくさんストックしていたイメージ写真の何が好きかを言語化したり、夜ごと図面を見返し、設計士、施工者と気になる箇所の議論を重ねながら徐々に全体像が見えてきました。お引渡しの日、家具や照明、グリーンの配置などを教えて下さる奥様の顔には、ご自身も一緒になってつくり上げてきた、達成感にも近い喜びが込み上げていました。
玄関扉を開ければ、華奢なフレームにこだわったガラス戸がお部屋の顔として出迎え、ガラス戸越しには探し回って出会った食器棚にお気に入りの食器たちが並びます。対面するのは素材の組み合わせを大切にしたキッチンカウンター。キッチンに立てば隣の部屋で遊ぶお子さんの様子が垣間見え、調理した食事をダイニングに運べば、一目惚れしたソファや照明、その先に気持ちの良いルーフバルコニーが目に入ってきます。
どの場所も眺めていたくなるこの部屋を、少しずつお気に入りのものを増やしながら愛でる日々が、I様の暮らしを豊かにしてくれることと思います。