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茨城県常陸太田市に計画した、木造平屋建ての店舗併用住宅である。建主は元々都内に住んでいたが、仕事の関係で数年前にこのエリアに移住した。この地の空気や食を気に入り、家を建てることを決意した。そして、ここに家を建てるのであれば、専用住居ではなく地域との接点を持てる生業の場を設けることを望んでいた。ただし、設計時点では何の店にするか決めておらず、流動的に中身が入れ替わる場を考えていた。店舗部分は道に面して設け、住居部分は半屋外の通り土間を挟んで設けている。ただし、通り土間上部で店と住居は繋がっており、店の音や空気は住居に流れ込んでくる構成となっている。この建築では、このような「離れつつ繋がっている」状態を、いくつかの操作によってつくりだしている。
屋根は、軒の出が徐々に深くなる雁行した形になっている。これは細長い敷地形状に対して、店から住居におけるプライバシーの必要度に合わせて、軒の出を操作した形である。奥の寝室に向かうにつれて軒の出は深くなり、最も出ているところで1600mm程度となっている。隣地の塀と合わさり、プライバシーを保つ閾となっている。長手方向においては、町〜店〜通り土間〜住居が連続している。住居の奥はサンルームだが、プライベートなネイルサロンとしても使用することになった。その先にはひらけた庭があり、街並みを挟んで瑞龍山という水戸徳川家代々の墓所となっている山がある。町から店や住居を介して、史跡までの連続性を、この屋根は導き出している。
隣地とは心理的な距離を取り、町や店や史跡と繋がる。距離を取る対象と、繋がる対象を選びとることが、この住宅には必要だと考えた。本計画はCovid-19が蔓延する前から計画してきたものであるが、奇しくも住宅において重要な距離の問題に触れた建築となっている。