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設計を担当
木造既存住宅の改修です。住まい兼アトリエとするために、大幅にプラン変更し拠点を再整備すると共に、構造補強・断熱補強・設備更新といった、住み継ぐための機能の刷新を行いました。
●大幅に手をいれる事になる1階は、アトリエを併設した居住空間。
住み継ぐための機能(構造・断熱・使い勝手)を補強し刷新し、既存の素材も活かした空間になる事を計画しました。
●2階は、書庫と予備室となりました。
床の合板補強、東西南北の適所に合板による耐震壁補強、換気扇の新規取付の、最小限の性能補強を行いました。
●庭に窯小屋を作りました。
離れとすることで、通りからの目線を緩和し、守られた庭になりました。
このプロジェクトは、こちらの家で育って巣立った方が、今度は家主となって住み継ぐための改修計画でした。数年前お施主さんは、先代の物の整理と並行して、ここを拠点とする構想を始めました。
1階を新たな拠点、2階は今までこの家に在った大量の蔵書を保管する空間として使いたい。今までの物と新たな物が階別に共存するというご要望を頂き、それを起点として設計打合せを重ねました。
1)住まいとアトリエは明解に間仕切らず、収納によりエリア分けしながら一体の空間としました。それぞれの居場所は場毎の性格を持ちながら、伸びのある広がりも確保できました。
2)南北通風できるように、間仕切壁に通風用小扉を付けました。風だけでなく各部屋は小扉越しの光と風景を共有できました。
3)収納は多めです。居間側は各所にオープン棚と戸棚を設け、書籍や生活上の雑貨のそれぞれの居場所が設定できるように量を確保しました。アトリエ側は資材用の収納で制作中の埃が入らない様に扉付きとなっています。
4)梁補強・柱交換・2階の床補強等を行った結果、それら新旧の構造材は現しの天井とする事になりました。現場確認中に、お施主さんも実際の素材感を確認でき実感頂いた上での変更はよかったです。
1階の新たな拠点は、仕事のアトリエを併設した居住空間となります。仕事で使う道具や材料の最良の配置は重要です。
お施主さんは、仕事も含めたご自身の生活行動や習慣と、今まで拠点を移り住んだ試行錯誤の経験で、新しい拠点のシミュレーションを繰り返して設計打合せに対峙していました。
暮らしが始まったこの家は、生活用具、仕事道具、愛着のある物や本が、それぞれ在るべき所に納まった嬉しい光景となっていました。
お施主さんご自身も昔育った家との比較や、今まで移り住んだアトリエ環境との比較の上で、今回徹底的にカスタマイズして再整備されたこの拠点が、最高レベルで使いやすいと、都度、大変嬉しいご報告を頂いています。これらはお施主さんご自身の構想の賜物でした。
1)現場調査と現場でのご要望ヒアリング
2)方向性決定のための複数の提案と模型での比較
3)初期に、アトリエと居間の境は収納で間仕切りたいというお施主さんからの提案もありました。作業用の資材収納と手持ちの薬箪笥アンティークを埋め込むことが必須要件でした。2)3)で基本案が確定。
4)基本案を元に、構造補強の検討。耐力壁・金物補強・梁補強の方法を検討・確認。
5)実施設計中は設備機器・仕上げ材、可能な限りお施主さんとショールームで現物を確認。仕上げは内装外装各2回位のサンプル提示。
6)工事期間中は、要所要所でお施主さんにも現場確認していただきました。お施主さん立ち合いのない日は写真を共有して都度確認。
構造補強は箇所ごとに解体状況と照合・調整し設置確認を行いました。
木造改修工事は、解体してから明らかになる事が多く、施工者さんとの都度確認と調整となります。当初想定と違う箇所も、大工さんが即時連絡、対応していただきました。既存建物は経年変化で水平・垂直がズレている箇所も多く、新築と比べ下地調整の量が格段に多いです。大工さんには粘り強く、見えない所の対処をして頂きました。時間と手間は十分に確保したいものです。
実はプラン作成中、新しいプランに合わせて邪魔にならない様に、既存の柱を移動する事も検討しました。柱移動は技術的には可能な工事です。
お施主さんに提案すると「柱があるのは別に構わない、そのままで良い」とのご返答。私も居間に既存の独立柱がある空間構成は面白く感じ、既存の位置のまま活かして進めました。
(工事中、柱には枘穴の欠損が多く新規の柱に交換しました。残念ながら既存の素材そのものは引き継げなくなりました。)
完成以降、よくよく思い返すと、残った柱の意味合いが少し変化していました。柱をきっかけに改修前の間取りが思い出されます。
先代の光景・・・ここまでが畳の部屋、こちら側が居間、ここが広縁、ここに本が並び、といった以前の暮らしの風景です。
この空間に目線を浮かべ、以前の境界線を目でトレースするための柱、という捉え方もできそうです。
既存の木造住宅を住み継ぐ場合、構造補強や断熱補強、設備更新といった性能的な更新は必要です。それに加えて、今までの面影を残したい、引き継ぐ要素と新しい要素を上手く共存させたい、といった、時間軸のある素材も設計要素として大切に扱いたいと思います。
居間の正面には、身近な物・大切な物が納まる間仕切収納が構えます。収納の奥がアトリエです。
ちょうど良く構図に登場した家主(猫)です。南面の外壁と開口部は全面的に改修しました。サッシは間口を広げ3枚引きとしました。外壁解体の際、構造補強、断熱補強、サッシの断熱性能向上を行いました。
間仕切収納に、お施主さんが以前から使っていた道具箪笥(古道具の薬箪笥)がピッタリ納まっています。有るべき物が納まって、この家の重心が定まった印象です。
大きいテーブル。奥は収納多めのキッチンカウンター。 腰壁の収納は生活事務用品置場。テーブルの手元で便利そうです。
2階へ上がる階段は引戸の開閉で室内温度を調整します。 開けた時もでっぱりの無い納まりです。
独立柱の建つ居間。既存柱は枘穴が多く新規に交換。
キッチンカウンターの下は猫のご飯コーナー
キッチンカウンター カウンターは手元20cm立ち上げ、洗い物が見えない高さの設定にしました。右手に電子レンジを収納し、その下は猫の食事スペースになっています。
キッチンから居間の眺め
間仕切収納の裏側。アトリエ側の収納です。 アトリエ側は材料資材・道具などを収納します。 埃が入らない様に引戸付きとし、アイディアボードにもなっています。
アトリエから庭を見ます。 製作環境が整いすでに稼働中です。
アトリエから庭を経由して窯小屋があります。通りからの目隠しにもなるハナレです。
窯小屋での作業時は庭を行き来します。踏み石は既存を再利用して並び替えました。庭はこれから緑が増える予定です。既に野菜が植えられています。
アトリエから居間、玄関を見通す。
アトリエの見返し。奥は洗面所の通気窓。
柱が並ぶ、名のないオマケ空間。突き当りに灯。
午前中は庭の樹木の反射影が映る壁
洗面所へ。奥は浴室。
洗面所です。ステンレスシンクは洗面にも作業用にも多目的に使えます。下部はワゴン収納で手前に引き出します。
通気窓を開けると光と風が通ります。通気窓を閉めると、壁に小物棚が埋め込まれています。
洗面所の通気窓からアトリエ、庭まで見通せます。
枝分かれして奥の部屋
明解に場所を区切らず、緩やかにつながる空間構成としています。
玄関から居間の眺め
梁の補強部分。新旧材が組み合っています。金物補強は全体的に行いました。柱は既存在を使う予定でしたが、ホゾ穴が多かったため新規に交換しました。
梁と2階の床組みが1階の天井となる。