木の家に住んでいる…。自然体で穏やかな生活が思い浮かびますが、住む人が日々「木の家」の住人であることを実感できる家というのは、一体どのような家なのでしょうか?単に木造住宅である、ということではないですよね。
では、木をふんだんに使って木の風合いそのままに仕上げている、例えばログハウスのような家だけが、木の家として実感できる家でしょうか?それも違うような気がします。つまり、決め手は木を使っている分量ではない、と思うのです。では何なのでしょう?
それでは事例をヒントに、自分にとって心地よい木の良さを味わえる家とは何か、探ってみましょう。
▽ 目次 (クリックでスクロールします)
ヒント1. 天井の垂木・野地板を見せる
ヒント2. 天井=床の現しで、ラフで気取りのない居心地を
ヒント3. 木のフレームで魅せる
ヒント1. 天井の垂木・野地板を見せる
足に触れる無垢の床に木の暖かみや柔らかさを感じるのと同様に、見上げた天井の落ち着いた木目や頑丈な木組みは、何とも言えない安心感を与えてくれるものです。
ユニークな曲線の壁が特徴のこちらの事例。傘を広げて雨から守っているような垂木の骨組みと、曲線の対比が秀逸です。木目では作り出せない白い壁のつるりとなめらかな質感があってこそ、天井の力強い垂木のデザインが活きていますね。内部は、曲線が目を引く外観からは想像もつかないような、360°パノラマビューの木の空間が広がっています。
ここで、よく目にする“現し(あらわし)仕上げ”、について改めて説明しましょう。
一般的な木造一戸建ては、木造軸組工法(在来工法)で建てられています。骨組みを木で組んで、そこに下地、仕上げと重ねていきますが、仕上げを施さず、軸組をそのまま意匠として見せるのが現しです。天井の場合は、垂木が組まれ、その上に屋根材の下地となる野地板がのり、この野地板が天井の仕上げを兼ねています。
こちらは、垂木が外部の軒先まで延びているデザイン。内と外との繋がりを感じさせるとともに、垂木がリズミカルに連続して並び、はるか先まで部屋が続いていくような伸びやかな印象を与えています。
天井を現しにする場合には、通常は天井のふところに通し隠れている照明の配線などが問題になる場合もありますが、現しの天井と相性の良い、ペンダントライトやスポットライトなどを効果的に使えば、夜間は陰影のある美しい空間が生まれます。
開放的な吹き抜けは、天井現しにすることで、高さや木の素材感が活きた悠々とした広がりが強調されます。高低差と仕上げの違いの効果で、天井が単調にならず、変化に富んだ空間をつくりだしています。
ヒント2. 天井=床の現しで、ラフで気取りのない居心地を
床現しとは、2階の床板が1階の天井を兼ねている仕上げです。
こちらは、既存の天井の仕上げを剥がして、現し仕上げにしたリノベーションです。天井のふところの高さ分、1階の天井が高くなり開放感がでました。これまで隠れていた既存部分の程よい古さが味わいになっています。
床、天井 建具の木部素材の統一感と、白い壁とが抜群に調和していますね。
オープンな空間に、居室をスキップフロアで配している事例です。それぞれのフロアの床(天井)を現しにすることで、各フロアがつくるリズミカルな“層”が強調されています。そして、木部を残したラフな仕上げが、森の中の小屋のような暖かい雰囲気づくりに一役買っています。
ヒント3. 木のフレームで魅せる
純日本風の和室でみられる真壁(しんかべ)構造[壁面に柱や梁の構造を現す仕上げ]ですが、洋風に仕上げてナチュラルで優しい雰囲気を出すことも出来ます。
こちらのリノベーション事例では、既存の柱を極力残し、真壁構造で柱を現しています。壁全体を囲むような本棚に、柱がアクセントに!居心地のよいブックカフェのような印象です。
こちらのリビングルームでは、一部を洋風の真壁のように見せ、木の存在感をアピールしています。柱や梁、木製のサッシ、階段といった木のフレームがしっかりと家を支えてくれているような実感が得られる木の家ですね。木のフレームが切り取るグリーンの風景。これはもう無敵の組み合わせです!
木の家がつくる居心地の良さは、見た目の美しさばかりでなく、室内環境を良好に整える機能などとも相まって、つくりだされるもの。だからこそ、「木の家に住んでいます!」と、自慢したくなるような家は、永遠の憧れですね。