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集合住宅の一室のリノベーションである。敷地周辺は、国際空港と主要鉄道駅を擁し、国内外のアクセスが比較的容易なエリアである。クライアントは台 湾の実業家である。今回、彼らの日本滞在時に利用するための宿泊・ホスピタリティ・作業のためのマルチユースな空間が求められた。既存平面は核家族向けの 典型的な集合住宅のプランを持つ。10.5m×5.4mの矩形には、西面からの採光しか望めない。まず、回遊性と多様性を併せ持つ空間構成を意識しなが ら、既存部分の除去と存置の決定が吟味された。
慎重な作業のもと、2つの通路と諸室に囲まれた、トイレ・収納スペースが納まったコアが現れた。 細切れであった諸室は新たな機能に適応するように統合され、一繋がりの環状の矩形空間となった。
コアの両側の2枚の引戸は、用途により環状空間を適切に区切る。表面に極細のスリットを穿つことで、西日や諸室からのさまざまな光と影を透過させ、閉じながらも空間に奥行きと連続性を与えている。
わずかな隙間から差し込む強烈な光は、同時に圧倒的な闇を生み出し、互いにその表情を変えてゆく。
個室ユーザーは時間の移ろいを感じるとともに、他のユーザーの気配を意識させる。
東西を貫く10mの奥行きを持つ北側壁面は、鈍い反射性を持つマテリアルとし、様々な光と風景を茫漠と浮かび上がらせるスクリーンとした。
内部空間の奥深くまで、夕日や外部空間の風景が投影され、狭小空間を奥深さと光で満たしている。
さらに壁面にはリニアに連続するライン照明を設けている。これは、リビング・ダイニング・インキュベーションオフィス・和室・ゲストスペースなど、多用途の使われ方をするこの空間の高い照明要求を満たすものでもある。
ここでは、わずかな介在により、様々な要求に応じることができるような柔軟な空間の提案を行っている。