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設計、プロデュース・コーディネート、インテリアを担当
こちらの住まいはマンション一棟リノベーションプロジェクトのモデルルームとして手掛けた1室です。リノベーションプロジェクトのコンセプトである「編集しながら暮らす」を体現した計画となっています。
当時、築46年のマンションを所有されているオーナーさんからの建物の耐震性についてのご相談がきっかけでした。マンションのリノベーションにあたって建物の性能も大切ですが、それに加えて、このマンションがどういった暮らしを支える住まいを提供するべきなのか、コンセプトについて考え直しているところでした。事業の改善に向けてチームをつくり、事業計画、資金計画を進めて行くなかで、コンセプトがなかなか定まらず、「つくりながら考えましょう」ということで、この1室の設計がスタートしました。
「編集しながら暮らす」というキーワードはその過程で生まれた言葉です。
「編集しながら暮らす」とは、住み手によって住まいに手を加えながら暮らしを豊かにしようというコンセプトです。
リノベーションによって部屋を構成する大まかな要素は建築工事で作り込み、あとは住み手が「編集」しやすいように、また編集した時にある一定の空間としての秩序が生まれるように配慮した設計となっています。
お施主様がブログに挙げていただいたコメントをご紹介します。
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「この数日、つい先日完成した202号室にばかり滞在しています。せっかく完成しても空室にしていたら、ビジネスとして成り立たないのは理解しています。でもまだ募集するつもりはないのです。この部屋はプロジェクトメンバーとマンション全体のリノベーションについて話し合いをはじめた、初期段階のコンセプトが生きています。
それは「自分たちもふくめて具体的にイメージがわかないから、とにかく一室つくってみよう」「うまくいくか失敗するかわからないけど、とにかく体感しながら実験してみよう」というコンセプトでした。
それから時が経ちようやく部屋が完成しました。あの時の想いとともに今、この空間を体感しています。まだシャワーもコンロも使用していませんし、この部屋で朝まで過ごしたことはありません。まだ体感すべきことはたくさんあると思いますが、そうだとしてもここ数日の体験を通してこのように感じます。
「思っていた以上に快適」「土間はやはり無駄ではなくとても良い」「広く感じる」
手前味噌ですが、この初の実験空間がとても快適なのです。部屋に慣れてくるに従って、不便な箇所を発見していくと思います。それは今後の部屋のための大切なポイントとしてピックアップしていこうと思います。
解体から工事の初期段階に想像していた、少しインダストリアルな雰囲気に仕上がるのではないか、という想いとは裏腹に、この部屋はとても北欧的な空間になりました。これまで過去2回ほどコペンハーゲンを中心に北欧に旅した事がありますが、 Airbnb で滞在したあの時の雰囲気を感じるのです。照明が暗めであることが要因であるとは思いますが、それだけではない空間全体がかもしだす雰囲気が北欧っぽいのです。
これから工事を開始する予定の部屋が、モデルルームのような空間になるとは決まっていませんが、RRPが提供できる空間の一例として、さらに新しい賃貸空間としての可能性として、十分に魅力をお伝えできる空間になったと思います。しばらくは募集せず、プロジェクトメンバーを中心に商品としてのこのマンションの部屋空間がどのようなものなのか、まず自分たちが体験してみます。
そして近い将来、新たにコミュニティメンバーになってくれるまだ見ぬ人たちとの出会いを楽しみにしながら、さらに改善努力していこうと思います。
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先にも述べたように、また施主のコメントの通り、まずは「設計をしながらコンセプト考えようという」ということで、「設計しながら考える」ためのプロセスを工夫しました。
そこでプランの組み立てを4つの構成に分けて整理して、その構成ごとに何ができるかを考えながら設計を進めていきました。
(1)スケルトン+コア
(2)ベース
(3)アレンジ
(4)ポップアップ
(1)のスケルトン+コアは機能として動かせないもの
(2)はベースとして建築工事で作るもので、アレンジのベースとなるもの
(3)のアレンジは住み手がDIYで作るもの(編集)
(4)のポップアップは住み手がインテリアプロダクトで手軽にコーディネートできるもの
マンションオーナーでもある施主はもとよりセルフビルドのスキルが高く、我々設計者の方が逆に多くのことを学びました。施主とはその用途での専門家だと考えています。住宅の依頼主であれば住むことの専門家として学ばせていただくような感覚です。この計画の施主は「編集しながら暮らす」ことの専門家でした。
「編集しながら暮らす」ことを体現するためにも、皆んなで壁を塗ろうという企画をしました。ペンキを塗るにも、ただ作業として塗ったということよりも、「編集しながら暮らす」というのはどういうことなのか、参加したメンバーで体験的に考えるきっかけになりました。
玄関から部屋の端から端まで続く土間を計画しました。
土間の仕上げはモルタル洗い出しです。
狭苦しい玄関は無く、どこでも靴を脱げる気楽さがあります。
またオープンプランの一室に変化を加えてくれます。
お気に入りの自転車を置いたり大きい観葉植物を置いたり、(4)ポップアップにも変化を加えてくれます。
天井のルーバーは荒々しいコンクリートの地肌の見え方を整えるのと同時に、(2)ベースとして、住み手が(3)アレンジや(4)ポップアップをする時に、天井を下地として使えるようにするための工夫となっています。
照明器具を自由に固定したり、ハンガーチェアを吊るすこともできます。
このお部屋では試みとして、棚板を吊る方法で取り付けてみました。
ぐらぐらするので机にも固定しています。
部屋の基本的な構成として、ベッド+収納+キッチンの固定的な要素を壁側にまとめています。固定的な要素と自由につかえる部分とを、1枚のアールのついた木壁で仕切っています。
ベッドコーナーの下は収納スペースになっています。
30m2のワンルームですが、整理されたオープンプランで、通り抜ける土間、天井のルーバーが部屋に変化を与えています。「編集しながら暮らす」のコンセプトを体現した空間となっています。
「編集していく部屋」の夜景です。 宙に浮いているように見える棚は天井からの吊りボルトを使って固定しています。 テーブルの一部に固定することで揺れを抑えています。 木をふんだんに使っているので温かみがあり、静かで落ち着いた時間を過ごすことができる空間です。
30m2のワンルームですが、キッチン、ベッドスペース、収納スペースをまとめてアールのついた木壁で仕切っています。「編集しながら暮らす」のコンセプトを体現した空間となっています。
「編集していく部屋」の夜景です。 木をふんだんに使っているので温かみがあり、静かで落ち着いた時間を過ごすことができる空間です。
30m2のワンルームですが、整理されたオープンプランで、通り抜ける土間、天井のルーバーが部屋に変化を与えています。「編集しながら暮らす」のコンセプトを体現した空間となっています。
「編集していく部屋」の夜景です。 天井のルーバーにはライティングレールが仕込まれていますが目立ちません。 木をふんだんに使っているので温かみがあり、静かで落ち着いた時間を過ごすことができる空間です。
プランの組み立てを4つの構成に分けて整理して、その構成ごとに何ができるかを考えながら設計を進めていきました。 (1)スケルトン+コア (2)ベース (3)アレンジ (4)ポップアップ (1)のスケルトン+コアは機能として動かせないもの (2)はベースとして建築工事で作るもので、アレンジのベースとなるもの (3)のアレンジは住み手がDIYで作るもの(編集) (4)のポップアップは住み手がインテリアプロダクトで手軽にコーディネートできるもの
コンセプトの「編集しながら暮らす」ことを体現するためにも、皆んなで壁を塗ろうという企画をしました。ペンキを塗るにも、ただ作業として塗ったということよりも、「編集しながら暮らす」というのはどういうことなのか、参加したメンバーで体験的に考えるきっかけになりました。
リビングダイニングを通り抜ける土間は「モルタル洗い出し」という仕上げとなっています。通り抜ける土間は様々な使い方ができ、オープンな空間に変化をつくります。
お風呂は思い切って浴槽を無くしてシャワールームにしました。そのかわりに「レインシャワー」を取り付けて少しリッチなシャワールームにしました。床は石タイル、壁はFRP防水にトップコートをかけたものをそのまま仕上げに使用しています。
ベッドコーナーから見た様子です。
ダイニングから見たキッチンの様子です。 オープンプランのワンルームですが、造作キッチンで素材を揃えキッチンがインテリアに溶け込んでいます。 壁は躯体のコンクリートに防汚性塗料で塗装しています。 汚れは拭けば落ちますが次第に汚れていきます。 しかしDIYで塗装した経験から、汚れても塗装すれば良いので定期的に塗装することで綺麗に使うということで塗装仕上げになりました。