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設計、監理、インテリア、エクステリア(庭・外構)を担当
ワークハウスは、1970年ごろに建てられた鉄骨3階建の6戸建アパートを増改築した建築です。1階は「寺小屋」、及び、壁画家のアトリエ、2階はパントマイムのスタジオ、3階は壁画家の住居からなります。すべての原点は、1階の「寺小屋」にあります。ここは、人間一人一人が輝いて生きていくことをめざし、生 徒自らが創設し、企画し、運営した学びの場で、正式名称は「寺小屋学園」。1981年~1985年に活動しました。当時学生であった壁画家とパントマイミストは、「寺小屋学園」の中心メンバーとして、ここを生み出し、運営に携わりました。そして、そこで学んだことを核として、自らの歩む道を決め、今の仕事に向かっています。建物の所有者である教育者と絵本・紙芝居作家の夫妻は、この二人の親です。理想をめざし「寺小屋学園」を創立した若者たちの理想に共鳴することから、学ぶ場所を提供する目的でこの建物を入手しました。その後、部分的な改修を行ってきましたが、10数年を経て大規模に増改築を行い、壁画家とパントマイミストが、各々の仕事を追及し、深め、積み重ねて行くための本格的な仕事場に作り替えることになりました。専門性に即した空間を内包しつつ、理想をめざし、文化を培っていくという共通する目的を育む建築空間をめざして、計画は始まりました。
この建築の中では、壁画や絵本・紙芝居の創作、パントマイムの創作・練習・発表、そして、集い、語り合うことなど、様々な活動が行われます。それぞれ分野は異なりますが、文化を生み出す営みとして共通するのは、追求し「深め、高める」ことと、その成果を「広め、伝える」ことの2点です。「深める」ためには、各空間が、外から守られ、安心して集中できる場でなければなりません。一方、「広める」という意味では、文化を育む場としての気配が、外観の佇まいに現れていてほしい。この「内を守りつつ、外に開く」というテーマを、エントランス空間構成に込めました。既存の外部階段の横の空地に、水平なゲート状の庇を架け渡し、人を招き入れる佇まいを生み出しました。一方、その内側に、透明な屋根のかかる半屋外のエントランスポーチをつくることで、行き交う人込みから内側を守る緩衝空間としました。このゲートを、創造の場へと向かう共通の入り口と位置づけ、水平な庇をくぐった後、そこから、各々の入口へと向かう構成にしました。このゲートをさらに、街への発信の場とするために、掲示用のガラスケースを組み込みました。照明を内蔵し、写真を展示するとともにパントマイムの公演のパンフレットなどを、通りがかりの人が自由に持っていけるように小さなカウンターを組み込みました。また、壁画アトリエの玄関をミニギャラリーと位置付け、ライトアップされた原画や模型が、玄関扉のガラス越しに外から窺え、創作の場としての気配が伝わるようにしました。
また、パントマイムスタジオへの導入部にあたる2階の外壁に、文化を追求する人間の内面の象徴として、壁画を組み込みました。この壁画空間は、ゲートをくぐった人を迎え入れる役割を果たすとともに、通りから見ると、建築全体のモノトーンな色合いに包まれた色彩の焦点として、行き交う人の心に刻まれるような配置を意図しました。さらに、エントランスの持つ水平な方向性に拮抗する垂直の高まりを生み出すため、既存の外部階段の側面にパンチングメタルのスクリーンを立て、背後を隠すことで、階段の持つ、斜めに登る上昇感を際立たせました。また、増築部の外壁を、明るい輝きを放つガルバリウム鋼板波板の縦貼りとすることで、縦長のプロポーションが、縦目地に強調され上に向かって軽やかに浮かび上がるようにしました。