家づくりに役立つメールマガジンが届いたり、アイデア集めや依頼先の検討に役立つ機能や情報が満載!
アカウントをお持ちの場合
(OFFのときは写真にマウスオーバーで表示)
設計、監理を担当
路地奥にある築90余年の長屋を、単身もしくは夫婦ふたり世帯向けの貸家としてフル (スケルトン)・リノベーション。
20〜30代の入居者向けの簡素なデザインをご要望でした。貸家ゆえ、工事費を抑えたデザインが求められました。既存建物はシロアリ被害を受けて全体に傾き、壁の一部は崩れ、2階の床は波打ち、今にも踏み抜けそうな状態でした。
シロアリ被害が特に酷かった部分を思い切って除去し吹き抜けにしています。また、全般に空間をなるべく仕切らない手法でコストを抑えました。室内建具や造作家具も最小限としています。写真撮影の後、お施主さんがDIYで、のれんやカーテンなどを随所に設置されています。狭い空間でも明るく開放的に感じられるよう、高窓や室内窓から自然光を採り入れ、空間に広がりを持たせるデザインを心がけました。
吹き抜けにより北向きの自然光に溢れたLDK空間が生まれ、物件のウリになったと喜んでおられました。また、吹き抜けに面した2階の書斎は在宅ワーク空間としても開放感があり気に入っておられました。
既存建物の傷みが激しかったため地震時にも安全な構造とする事と、シロアリ被害の再発防止対策をまず優先しました。入居者像を踏まえ工事費を抑える事と維持管理のしやすさの観点からアドヴァイスさせていただきながら設計を進めました。
既存躯体の状態がかなり悪く、現場を訪れた際、お施主さんの奥さんは危険を感じられ2階に上がられなかったのを憶えています。設計中は、物件の床面積や部屋数にあまりこだわらず、当方のデザイン提案やアドヴァイスを前向きに取り入れてくださいました。
奥に見える坪庭。そしてその手前のダイニングは上部の吹き抜けから降り注ぐ自然光で明るく照らされて、開放感と屋外とのつながりを感じさせます。右手には軽食カウンター付きのキッチンが見えます。
吹き抜けたダイニング・リビングからの路地を向いた眺め。この吹き抜けは、既存2階床のうち損傷が激しかった為取り払われた部分にあたります。2階の上部には、既存の曲がり梁が見えます。
コンパクトながらスナックカウンターでは二人並んで軽食を摂ることができます。キッチン・シンクの上部に頑丈なステンレスパイプ水切り壁棚が2段備え付けられています。重い調理器具もここに保管できます。
極小寸法の洗面・洗濯室。新たな高窓から自然光を採り入れるとともに間仕切り壁の上部も透明な室内窓とすることで、空間に開放感を持たせています。手前左側に洗濯・乾燥機スペースを設けています。奥のタオル・レイルは2段仕様を採用するなど、省スペース化を図っています。
1階のおもての部屋と玄関の内観。壁のアーチ状の部分には耐震ダンパーを納めています。おもての窓から入った自然光が、塗装調の白クロス貼り仕上げにより、内部の奥深くまで届けられています。
リノベーション前は二畳間だった部屋。この部屋はTVの設置に対応しています。来客時のゲスト寝室としても使えます。コストダウンのため、カーテンやロールスクリーン類は後日お施主さんがDIY設置されました。
上階に来る度に、この高窓に切り取られた東のそらが目に入ります。吹き抜け周りの木製手すりによって腰壁の高さを抑えることで、1階により多くの自然光をもたらすとともに、2階の開放感を高めています。
間仕切り壁の高さを抑えたデザインで開放感をもたらしつつ、プライヴァシーを確保しています。
既存の押入れを簡易クローゼットに更新。既製品の収納家具と組み合わせる想定で、敢えてシンプルな造作にとどめコストダウンを図っています。コンセントを設け、多様な使い方を可能にしています。
車の入れない、昔ながらの路地に面した敷地。改修後の外観は、戦前の竣工当時の意匠に沿うようにしています。このリノベーションは、建物の外皮の中に新築住宅を建てるに近い内容となっています。 この路地も2mたらずの幅で、小さな子供や老人が安全に立ち話したり遊んだりできる空間です。気ままに置かれた鉢植えなんかが、孤立した暮らしには無縁なところを物語っています。こうした利点にもかかわらず、写真の背景のような大きな共同住宅やホテルに建て替えられてしまうことが多いのが現状です。