2021/12/02更新0like5948view

著者:熊井博子

「なに見て暮らす?」 窓の役割を考える

この記事を書いた人

熊井博子さん

ビルダー・建築設計事務所に営業/広報として勤務した後、住宅専門誌の編集を経て、住宅関連の執筆と一般の方の家づくりサポート等に従事。インテリアコーディネーター、照明コンサルタント。

家の中に自然光を取り込んだり、風を取り込んだり。日々快適に暮らすためにもなくてはならない「窓」ですが、実はさまざまな意味や役割があるのをご存じですか。案外知られていない窓の役割、住まい手みずから意識を向けると、できる家の姿も住み心地も格段に違ったものになるはずです!

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

あればいい、わけじゃない

暮らしてみると、案外その影響をダイレクトに受ける「窓」。健康を左右したり、感情に働きかけたり、暮らしを形づくったり。間取りと連動しながら暮らしに大きく影響するのですから、使い勝手や動線以上に注意を払って考えたいものです。

ところが実際その意味や役割はおざなりにされていることも多くて、固定概念や先入観に縛られがち。「南だから窓を大きく」「リビングだから窓を大きく」というのはよく聞くセオリーですが、そこから見えるのが隣家のトイレの窓や室外機だとしたら気分もげんなり。道路から丸見えなら、年中カーテンは閉めたままかもしれません。リビングだから、南だから、と大きな窓を設けることが必ずしも良い結果を生むわけではないのです。

窓は、私たちが思う以上に様々な役割を担っています。それらをバランスしないと思わぬ失敗をすることもありますが、上手に活かせば想像以上の結果をもたらすことも。プランを始めるその前に、窓の意味と役割に意識を向けてみませんか。

窓の役割

大きく分けて、窓には7つの役割が思い当たります。必要な配慮や視点と合わせて見てみましょう。

(1)光を取り込む

建築基準法でも定められている大事な役割のひとつ。実際、窓から入る自然光は心身の健康や気持ちにも大きな影響を与えていて、明るい光の降り注ぐ空間なら快活な気分に、静かな光に満たされた空間なら落ち着いた気分に、十分な光が得られない空間ならなんとなく塞いだ気分になるものです。

明るいに越したことはありませんが、どこでも燦々と光が降り注ぐのが良いとも限りません。本を読んだり、パソコンに向かったり、ゆっくり身体をやすめたり。家にはいろいろな用途があるのですから、シーンに合った自然光を取り込めるのが理想です。

(2)風を取り込む

窓を開放して自然の風を取り込んだり空気の入れ替えができるのは、やはり気持ちがいいものです。24時間換気で新鮮空気が保たれているとはいえ、開放感や爽快感は、窓を開けてこそ得られるものかもしれません。

ちなみに窓から風を取り込むには、2方向以上を開放して空気の流れをつくるのが肝心。1方向にしか窓がとれなければ他室の窓を開けて入る風・出ていく風それぞれの受け皿をつくります。窓がある=換気ができると考えず、風の通り道を確保するよう考えましょう。

(3)日射を取り込む

冬場、窓から差し込む日射は暖房機器をはるかにしのぐパワーで家じゅうを暖めてくれます。強力かつ無料!ですから、これを活かさない手はありません。上手に活用するには住宅性能を高めるなど建築的な配慮が不可欠ですが、住まい手自ら日射を取り込む意識を持つことも大切です。

ポイントは、太陽の動きに合わせてカーテンや障子を開閉すること。日が差し込む時間は開け放って日射を取り込み、日が傾いたらしっかり閉めて熱を逃がさない。カーテン・障子一枚ですが、日射コントロールの上ではこれが大きな役割を果たします。

ちなみに夏季は、日中でもカーテン・障子を閉めること。日射との付き合い方を理解してうまくコントロールできると、夏も冬もより省エネで過ごせるはずです。

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(4)景色を取り込む

家にいながら外の景色が眺められるのも、窓の大切な役割のひとつ。なかでも、窓枠を額縁に見立てて景色を切り取るように配した窓を“ピクチャーウインドウ”といいますが、素敵なピクチャーウインドウのある住まいでは、見たいものを見て見たくないものは見なくていいよう、窓に映る景色がコントロールされています。それには事前の敷地観察と情報収集が欠かせません。

もし見たい景色が見当たらないなら、庭を工夫して見たくなる景色をつくるのも手。逆に見たくない景色があるなら、窓配置に気をつけながら塀や樹木で覆い隠すのもひとつです。

(5)空間を広げる

窓があることで、広く感じたり、奥行きを感じることがあります。四方を囲われた空間では、視線が伸びるかどうか、行き止まり感がないかどうかで、空間の感じ方がだいぶ変わります。

「大開口があるとそのまま外につながるような広がりを覚える」というのは、そうした設計手法の代表例。他にも、目のいくところに窓を設けて視線の抜けをつくって行き止まり感を払拭させたり、視線を外に向けることで狭い空間を意識させないようにしたり。特にコンパクトな家ではこうした手法は有効で、面積以上の広がりを感じながら暮らすことができるはずです。ただしこれには設計スキルが不可欠で、むやみに窓を設けてもただただ落ち着かない部屋になることもあるのでご注意を。

(6)ウチと外をつなぐ

窓は、直接出入りできたり情報を伝えたり、ウチと外をつなぐ役割も。天気がよければテラス窓からそのまま外に出たくなるし、雨が降りそう、宅配の車が停まったなど窓越しに外の様子がわかれば、洗濯物を取り込むなり身支度を整えるなり、早めに必要なアクションをとることもできます。

こうした“情報の伝達”は何も内側にいる人のためだけではなくて、外にいる人の助けにも。窓から人の暮らしの気配がすれば、それだけで道ゆく人やご近所にとっては安心につながりますし、訪問時、ドアが開くまで全く様子がわからないより窓からちらりと様子が伺い知れたりあかりで在宅を確認できた方が安心して訪ねられるはず。窓は、壁で区切られたふたつの世界をつなぐ“手がかり”にもなるのです。

(7)表情をつくる

最後にちょっと違った視点を。
窓は、家の内側の事情で設けられるものですが、そうして並べられた窓たちは、外から見ると意外にも家の表情をつくり出しています。その表情も色々で、整った顔立ちに見えたり、品よく見えたり、おもしろい顔に見えたり。外観においては、窓は「目」の役割をしていて表情の決め手にもなっているのです。

「外観にどう反映されようと関係ない」といえばそれまでですが、人の目をひくような素敵な家は、やはり顔立ちが整った外観をしているのも事実。外壁が肌、屋根が頭(髪)、玄関は口、窓は目。そんなつもりで、外から見える家の姿・表情にも意識を向けると、内も外もバランスのとれた素敵な住まいになるはずです。

窓の向こうに何を見る?

窓のさまざまな役割を意識しながら家をつくるのは、決して簡単ではありません。それに、壁に比べて窓は極端に熱損失が大きいですから、性能を軽んじれば「窓=壁に穴があいている」を意味して家の弱点にもなり得ます。それでもそうした一つひとつに意識を向けて最大限に窓の役割を活用できば、できる家の居心地はまったく違うものになるはずです。

家をつくるとき、プロの提案する図面をみて広さや動線だけでなく、窓にも意識を向けてみてください。「何見て暮らす?」という視点で考えることができたなら、窓から見える景色はもちろん、家で過ごす時間のあり方や家の捉え方まで変わってくるかもしれません。

「窓で家は変わる」。大げさなようで、案外その通り。
固定概念や先入観など昔ながらのセオリーに縛られすぎず、窓の意味と役割に目を向けた家づくりができると、できる家はきっと居心地のいい家になるはずです。
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