街を歩くと、住宅の屋根の形状や材質には、いろいろな種類があることがわかります。
住まいの屋根を選ぶ際は、屋根の種類と特徴を知り、自分に合った材質や形状にすることが大切です。
ここでは、基本的な屋根形状や材質の種類と特徴、選び方のポイントを解説します。
住まいの屋根を計画する基礎知識として、ぜひ参考にしてください。
▽ 目次 (クリックでスクロールします)
屋根形状の種類と特徴
屋根の素材と耐用年数
屋根の選び方4つのポイント
屋根形状の種類と特徴
住宅の屋根の形状には、いろいろな形状がありますが、大きく次の5種類に分けられます。
・切妻(きりづま)屋根
・寄棟(よせむね)屋根
・片流れ屋根
・陸(ろく・りく)屋根
・入母屋(いりもや)屋根
それぞれの形状の特徴を解説します。
開いた本を伏せたような形状の屋根です。
屋根の頂上に設置される「棟」は一か所のみになります。
シンプルな構造のため、施工がしやすく、雨漏りが発生しにくく、ローコストというメリットがあります。
また、広い面が確保できるため、太陽光パネルも設置しやすいです。
迷ったらコレ!と言える屋根形状ですね。
屋根の最長部から、複数の棟がおりてくる形状の屋根です。棟の数は3本以上になります。
屋根の存在感が強くなるため、重厚感があります。
比較的複雑な構造になる分、雨漏りのリスクは高くなりますので、施工をしっかり行ってもらいましょう。
その上で、できる限り屋根の面数を減らすことや、谷部分(屋根と屋根がV字に合わさる部分。雨水が集中するため、雨漏りが発生しやすい)を作らない工夫が必要です。
重厚感と落ち着きのある雰囲気にしたい場合や、屋根材を強調したい場合などにおすすめの形状です。
棟がなく、1面のみで構成された屋根のことで、とてもシンプルで工事がしやすく、モダンな雰囲気をつくれる屋根形状です。
切妻屋根よりもさらにローコストなため、若い世代に人気を集めています。
屋根面が大きく確保できるため、太陽光パネルや太陽熱温水器などの設置もしやすいというメリットがありますが、その場合は、効率を高めるために、屋根が南向きになるよう計画しましょう。
片流れ屋根は、一方向に雨や風の流れが集中するため、雨どいや外壁のダメージが分散されず、ある一面だけが著しくダメージを受けやすい特徴があります。
また、棟がないため、「棟換気」が行えないため、屋根裏に湿気がたまりやすい環境になることも。屋根裏の換気計画もしっかり行うことが大切です。
平な形状の屋根のことで、フラット屋根・平(ひら)屋根とも呼ばれます。
勾配のある屋根で使われるようなスレートや瓦などの屋根材を使わず、防水工事によって屋根を保護します。
屋根裏のスペース確保がしにくいため、屋根裏に収納スペースやロフトが欲しい場合は、おすすめできません。
また、平らな分どうしても水が溜まりやすいため、雨漏りのリスクは大きいです。
防水工事をしっかり行ってもらうことはもちろんですが、住み始めてからの定期的なメンテナンスも欠かさずに行う必要があります。
陸屋根の魅力は、安定感のある外観になること、屋根面を屋上庭園として活用できることです。
庭やベランダを確保できない場合や、プライバシーの守られた屋外スペースが欲しい場合に、大変おすすめです。
寄棟屋根の棟を水平に伸ばした部分を、切妻屋根形状にした屋根形状です。寄棟屋根と切妻屋根が合体したような見た目で、主に和風住宅に用いられます。
屋根裏の換気を確保しやすいため、湿気の多い日本の気候に適しています。
屋根形状が複雑なため、工事が難しく、必ず谷ができるため、施工力のある業者に依頼することが大切です。
伝統的な日本家屋の外観にしたい場合や、和風住宅で重厚感を求める場合におすすめの屋根形状です。
屋根の素材と耐用年数
屋根に使われる素材は、さまざまな色や形状がありますが、大きく4つの種類に分けられます。
・スレート
・日本瓦
・セメント瓦
・金属系屋根
それぞれの特徴を解説します。
セメントに繊維素材を混ぜ、板状に加工したものです。
天然スレートと化粧スレートがありますが、日本で多く普及しているのは化粧スレートです。
多くのメーカーから発売され、商品のバリエーションが豊富で、実績の多い素材です。
瓦よりも軽く、ローコストで、施工がしやすい特徴があります。
図面に記載される、「スレート」「カラーベスト」「コロニアル」の呼び方は、全て化粧スレートを意味しています。
スレートが一般名称なのに対し、カラーベストはケイミュー社のスレートのシリーズ名、コロニアルはカラーベストの個々の商品名です。
耐用年数:10~30年 メンテナンス:新築から7~10年で塗装や劣化部分の差し替え
粘土を瓦状にして、高温で焼き上げて作られる屋根材です。
焼き上げ前に釉薬をかけるものを「釉薬瓦(ゆうやくがわら)」、釉薬を使わないものを「無釉瓦(むゆうがわら)」と言います。
比較的高価で、日本の住宅や神社仏閣で使われてきた歴史ある屋根材です。
重みがある分、耐震性に劣るため、なるべく軽い素材を選びましょう。
高級感と重厚感があり、劣化や変色がほとんど発生せず、年月を重ねるごとに深みを増すサスティナブルな素材です。
耐用年数:50年~ メンテナンス:約30年ごとに下地や副資材の補修、葺き直し
セメントを主材料とした素材を瓦形状に成型し、防水塗装して作られる屋根材です。
色・形状のバリエーションが豊富で、日本瓦に比べてローコストな特徴があります。
スレートより外観に重厚感を持たせたい場合や、防音性、耐久性を求める場合におすすめの素材です。
防水性を塗装に依存しているため、定期的な塗装メンテナンスが欠かせません。
耐用年数:30~40年 メンテナンス:新築から10~15年で塗装や下地・副資材の補修
金属系屋根
金属系屋根は、すっきりした見た目と、優れた耐久性、緩い勾配に対応できる特徴があります。
屋根を軽くできるため、建物の負担が軽減されるメリットがあります。
金属系屋根では、「ガルバリウム鋼板」と「銅葺き」が主流です。
ガルバリウム鋼板とは、金属鋼板をアルミニウム・亜鉛・シリコンと合わせてメッキした「アルミ亜鉛合金メッキ鋼板」のことです。
モダンな雰囲気から、外装材として人気を集めています。
耐用年数:30~40年 メンテナンス:10~15年で塗装や下地・副資材の補修
銅葺きは、文字の通り屋根に銅を葺くことです。
同じ金属素材のガルバリウム鋼板に比べて高級感があり、神社仏閣にも用いられています。実際にとても高級です。
年月を重ねることで、10円玉のような色から青銅への変化を楽しめる、味わい深い素材です。
サビの発生には注意が必要で、日常的に点検を行い、異常がある場合はなるべく早く対応することで、長く美しい外観を維持できます。
耐用年数:50年~ メンテナンス:サビを発見次第除去
屋根の選び方4つのポイント
屋根材にはいろいろな形状と素材がありますが、4つのポイントを大切にすることで、自分に合った屋根を選ぶことができます。
①外観のお好み
屋根の形状によって外観は大きく変わります。すっきりシンプルにしたいか、重厚感を持たせたいか、和風にしたいか、洋風にしたいかなど、じっくり検討しましょう。
②メンテナンスの手間
屋根の形状や素材によって、必要なメンテナンスや手間は変わってきます。
セメント瓦や陸屋根の場合、定期的なメンテナンスをしっかり行わないと、劣化により雨漏りなどの重大なトラブルが起こることがあります。
ほかの屋根形状や素材についても同じことが言えますが、イニシャルコストがかかる日本瓦や銅葺きは、メンテナンスの手間を最小限に抑えることができます。
メンテナンスには費用が掛かりますので、将来的な収入も考えながら屋根選びをすることが大切です。
屋根は、日常的に雨や風のダメージを強く受ける部分です。
日本の中でも雨が多い地域や、雪が積もる地域、風が強い地域などの地域区分があります。
同じ地域区分でも、海沿いや崖上と住宅地では、雨や風の強さは異なります。
どんな気候でも安心して過ごせるように、土地の環境を理解した上で適した屋根形状や素材を選びましょう。
④予算のバランス
屋根の素材や、形状は建物の建築費用にも大きく影響します。
屋根に求められる性能は、防水性、防音性、断熱性、耐久性、美観、メンテナンス性などいろいろなものがありますが、全てを得るためには、お金が掛かるものです。
予算に限りがある場合、屋根などの外装にお金を掛けるべきか、そのほかの室内の設備などにお金をかけるか、検討することになります。
予算のバランスを考えて、家族で優先順位を話し合うことも大切です。
屋根は、家の中にいると見えませんが、夏の暑さ、冬の寒さ、雨、風から私たちを守ってくれる、とても大切な存在です。
住まいづくりの際は、外観はもちろんですが、性能面にも注目して慎重に屋根選びができるといいですね。