2017/02/10更新2like19163view

著者:水沼 均

切り妻、寄せ棟、片流れ…etc. 屋根の種類を知って、おしゃれな外観の家にしよう

この記事を書いた人

水沼 均さん

建築設計の学校で長年教師を務め、大勢の生徒さんと接してまいりました。年齢、経歴、そして住まいへの思いも大変多様で、他では得られない貴重な経験ができました。その経験を生かして、豊かな住まいづくりに役立つような記事をたくさん書いていきたいと思います。

雨量の多い日本では、住まいの屋根はその役割も外観も大変重要な存在で、まさに住まいのシンボルと言えます。住まいを建てるなら、せっかくですからプランニングだけでなく、屋根の造形にもぜひ着目したいですよね。屋根のいちばんの魅力は、造形の自由度が高いことです。法律など制約も存在しますが、その中でもまだまだ多くのデザインの可能性があります。ではどのように屋根をデザインしたらすてきな住まいになるのでしょうか。

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なぜ屋根をつけるのか?

街中のビルの頂部はほとんどが平らですが、木造住宅では雨漏りのおそれがあって頂部を平らに作ることが難しいため、傾斜した屋根を設けるのが普通です。つまり、日本の住宅の屋根の形は気候風土から来ているんですね。

そして、屋根を作るという古来からの習慣が積み重なって、様式化していきました。お寺や神社では明らかに屋根を強調した、存在感の強い造形が採り入れられています。

住宅もまた同じです。屋根は住み手のアイデンティティーを表すシンボル的な存在として、外観デザインの主役となっています。

考えてみれば、屋根は住まいの外観でほぼ唯一斜めのラインを持った存在です。したがって、視覚的にもいちばん目立つ部分ですよね。

下の写真は鉄筋コンクリートと木造の混構造の住宅ですが、屋根を45度の急勾配にして、外観の主役となるように設けています。
平川 徹「『稲美の家』シンボルツリーのある温かな住まい」
では屋根にはどんな種類や魅力があるでしょうか。屋根の形状別に例を見ていきましょう。

「イエ」形のシンボル切り妻(きりつま)屋根

下の写真の屋根は、おそらくもっともシンプルで原型的な形なのではないでしょうか。これを「切り妻(きりつま)屋根」といいます。

切り妻屋根は「イエ」の象徴のような形状ゆえ、もっとも人気のある存在です。また形がシンプルで他のパーツや素材とマッチさせやすいのも人気の理由です。

下の例でも全体の形状や開口部、素材などをシンプルなものにして、住まいのプロトタイプのような存在感を強調させています。

たくましくて包容力ある大屋根

下の写真は、住まいをシンプルな大屋根で覆った例です。屋根面がこちらに向かって傾斜しているので、大屋根の持つたくましいボリューム感をいつも感じ取ることができます。この屋根に守られて一家が暮らしているんだ、という実感を持つことができますよね。

またこの住まいは2階建てですが、このように屋根を設けますと、道路側の屋根は3メートル弱くらいの低さとなり、住宅地にはとても程良いスケール感が出てくれるのも魅力です。
山本智一「宿町の家」

端正な和のテイスト寄せ棟屋根

下の写真は平屋の住宅です。平屋では屋根がよく見えるので、デザインは設計者にとって腕の見せどころですが、この住まいは和と洋がマッチした美しい外観を持っています。

屋根は和風の造り方で端正にまとめてありますが、このように各屋根面が傾斜して交わっている屋根を「寄せ棟(よせむね)屋根」といいます。

この例はL字形プランなので、手前と奥の屋根が重なって見えていますね。こんなときにも寄せ棟はぴったりなのです。屋根の重なり感がなんとも美しいですよね。
高草大次郎「鳥取市 O様邸」

シャープでカッコいい片流れ屋根

下の例では、1枚の傾斜した屋根面だけで住まい全体が覆われています。これを「片流れ(かたながれ)屋根」といいます。この例のように一部が2階建てで、できるだけ屋根形状をシンプルにしたいときには、片流れはぴったりのチョイスと言えます。

また片流れにすると、隣家や前面道路に優しいたたずまいになってくれます。写真でも、北側(向かって右側)に立つ隣家に日差しがあたってくれていますよね。
佐藤高志「カタチのヒミツ」

柔らかくて個性的な丸い屋根

屋根は下の写真のように、曲面で作ることもできます。

曲面で作ると、他の屋根にはないような独特の柔らかい表情が出てくれます。また屋根の丸い家はあまり多くないので、住宅地では個性を発揮することでしょう。
俵山博文「モクレンが迎える家」

複数組み合わされたにぎやかな屋根

下の写真では、いくつかの片流れ屋根が住まいの部分部分を覆っています。少し規模の大きな住まいでは、このような作り方もまた魅力的ですね。

それぞれの屋根の下にある場所のアイデンティティーが外観にも投影されて、住まいの楽しさがにじみ出るたたずまいになっています。
大坂 崇徳 + 大坂 美保子「CNAN」

あえて平らに見せる屋根

下の写真の住まいは、地上から見ていると屋根が平らに見えます。そして住まい全体がキリッとしたボックス形に見えています。

写真をよく見ると、実際には勾配の緩い切り妻屋根になっていることがわかりますが、このように木造住宅であっても、シンプルな箱のように外観を見せることが可能です。屋根は強調して作っても良いし、控えめに作ってもまた効果的であることがわかります。
水石浩太/水石浩太建築設計室「貫井北町の住宅」

屋根裏のスペースを楽しもう

ところで、屋根の下の世界はどのようになっているのでしょうか。屋根を作れば当然屋根裏スペースもできます。せっかくですから全部に天井を張ってしまわずに、屋根裏の世界を楽しもうではありませんか。

下の写真は交差点に立つ寄せ棟屋根の住宅です。交差点は「道路斜線制限」という高さ制限が2方向からかかりますが、これを上手にクリアした優れたデザインですね。
田中ナオミアトリエ「Himawari house」
そして下の写真がこの家の2階LDKです。天井を張ってしまわずに、屋根裏のすてきな骨組みを露出して見せています。

豊かな表情の屋根を作ると、骨組みも少し複雑になります。けれども、この例のように複雑さを美として見せるのも、また良い手法だと言えます。
田中ナオミアトリエ「Himawari house」

屋根を作る上での制約

いろいろな形状の屋根を見てまいりましたが、屋根を作る際には制約もまた存在します。

いちばんの制約は法律による高さ制限(斜線制限など)でしょう。敷地境界線から空に向かって斜めの線を引き、この線を超えて建ててはいけない、という法律です。

下の写真は、「北側斜線」という高さ制限のある土地に立つ住宅です。
北側(向かって左側)の隣家に日差しが入るよう、北側斜線を超えずに建てなければなりませんが、このようにシャープな片流れ屋根を設けることで制限をクリアしています。
奥和田 健「オカマチノイエ」
いかがでしょうか、いろいろな屋根を紹介しましたが、お好みの屋根は見つかりましたでしょうか。

屋根にはここに紹介した以外にも、実にさまざまなデザインの方法や可能性があります。
お住まいの特徴やご家族のお好みに合ったすてきな屋根を、ぜひ設計者とともに探してみてください。
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水沼 均さん

建築設計の学校で長年教師を務め、大勢の生徒さんと接してまいりました。年齢、経歴、そして住まいへの思いも大変多様で、他では得られない貴重な経験ができました。その経験を生かして、豊かな住まいづくりに役立つような記事をたくさん書いていきたいと思います。

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