2021/04/06更新0like10090view

著者:佐藤ゆうか

地下室をつくるなら押さえておきたいポイントと費用感

この記事を書いた人

佐藤ゆうかさん

2級建築士。
工業高校卒業後、中小規模の建設会社に勤務。
木造住宅を中心に新築やリフォームの設計に携る。
現在は3児の育児を中心に在宅ワークに励み、いつか現役復帰を夢見ながら建設業界にしがみつく日々。

地下室に憧れる方にとって、地下室の作り方や費用感は家づくりの中でも特に気になるポイントですよね。

新たに建てる家で地下室を作るなら、その役割や建築基準法上の扱いなども知っておくと良いかもしれません。本記事では、失敗しないためのポイントや費用の相場など、地下室にまつわるあれこれについてお話していきたいと思います。

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▽ 目次 (クリックでスクロールします)

地下室とは?

地下室は、建築基準法上では「地階」(ちかい)と呼ばれています。
地面より下にある部屋のうち、次の条件を満たす空間が「地階」と定められています。

・天井高の1/3以上が、地盤面より下にある空間
・地盤面から地階の天井が1m以下にある空間
つまり完全に地面に埋まっていなくても、「地階」として扱われることもあるわけです。

地階の使い方として、防音室などの「プライベートが確保された趣味を楽しめる空間」を思い浮かべる方も多いでしょう。
人が長時間を過ごす部屋を建築基準法上では「居室」として扱うのですが、地下室を居室として使うためには「衛生上必要な措置」として次の条件を満たす必要があります。
(1)上部が外気に開放されている、またはドライエリアとよばれる空堀を作り、そこに面する開口部(窓など)が設けられている
(2)部屋の大きさに見合った湿度調整、換気設備がある
(3)防水措置がされている

地下室を居室として使う際は、建築基準法上の条件を満たすことが大前提。
これを満たさない場合「地下室」として扱われず、木造2階建て+地階として作ったはずが3階建て住宅として扱われてしまったり、容積率の緩和を受けられなかったりと、住宅計画そのものが覆されてしまう恐れもあります。

地下室のメリット、デメリット

ここでは地下室のメリットとデメリットについて解説します。

■地下室のメリット
・土地の有効活用ができる
地下室は「容積率の緩和」の対象となります。
容積率の緩和とは、「住宅の用途となる部分は、延床面積の1/3以下までなら延床面積算入されない」というものです。
容積率や高さ制限が厳しい土地・地域や、地上階の部屋数を増やすことが難しい狭小地などでの家づくりにおいて、地下室は有効な手段となるでしょう。

・温度が保たれる
地下空間は地上の温度変化の影響を受けにくいため、季節を問わず安定した室温を保ちやすいです。夏涼しく、冬あたたかな特徴を活かし、食品庫やワインセラーとして活用されることも多いです。

・防音性、遮音性が高い
地下空間は防音性、遮音性に優れているため、近隣への音漏れを気にせず、楽器演奏やホームシアター、音楽鑑賞などを思う存分楽しめます。
防音室の設置を検討しているなら、費用や有効性などを、地上で作る場合と地階に作る場合とで比較してみるのもおすすめです。

また、地下室での衝撃や振動は上の階に響きにくいため、トレーニング場や軽い運動スペース、子どもの遊び場として使うのにも適しています。

・地震に強い
一般的に、建物は地盤面から上に行くほど地震の影響を強く受けやすいと考えられます。一方で地階は地震の影響を受けにくい傾向にあるうえ、鉄筋コンクリート造で作られるため、木造部分よりも地震に強く、安全な空間を確保できます。
木造住宅の基礎(べた基礎)で作られた建物よりも、地下室付き木造住宅の方が地震に強いとも言われています。

このようにメリットの多い地下室ですが、同時にデメリットもあります。

■デメリット
・建築費が高くなる
地下室を作るため、詳細な地盤調査や防水工事など通常は行わない工程をいくつも行うので、工事費用は高額になりがちです。
費用については、のちほど詳しく解説します。

・湿気がたまりやすい
地下室は「水溜まりの中に建物を作るようなもの」と言われるほど、湿気がたまりやすい環境。
もちろんコンクリートには防水処理を施しますが、それでもコンクリートの特性上、コンクリートから水が抜けるまではより湿気がたまりやすい環境となります。
そのため、居室として使わない場合でも除湿器や換気設備の設置は必要不可欠。
結露などの発生によりカビだらけになってしまわないよう、できる限り湿気を溜めない工夫が必要です。
・ドライエリアからの浸水に注意
地下空間の採光を確保するためのドライエリアは空堀り状態ですので、集中豪雨の際などは浸水が心配になりますね。

対策として、ドライエリアには必ず浸水対策のための排水溝とピット、地盤面からの立ち上がり、ドライエリア床面から地階のサッシまでの立ち上がりを十分に設けましょう。

地下室はいくらかかる?

地下室は、地上に同じ広さの建物を建てるよりも建築費がかかります。

10坪の地下室を作った場合、一般的な坪単価の相場は90~150万円ほど。
木造住宅のローコスト住宅であれば坪単価45万円ほど、普通グレードであれば坪単価55~60万円ほどが相場の中、なぜ地下室にはそんなにお金が掛かるのでしょうか。

地下室を作るにあたって行う特別な準備や工事内容と、それぞれの費用相場を確認してみましょう。

■地盤調査・地下水位調査 費用相場:30~40万円
地下室を作る際の調査は、SS試験のような簡易的な地盤調査ではなく「ボーリング調査」という詳細な調査を行う必要があります。安全に工事を行うため、地盤改良の必要性や地下水位の位置(高さ)、地下室を作る際の施工方法を検討する、とても重要な調査です。

■構造計算 費用相場:50~70万円
地上に建てられる住宅の場合は簡略化が許可されている構造計算ですが、地下室付きの住宅を作る場合は、安全性証明のため、正式な構造計算が必要です。
地下室部分と地上階部分の両方で、70万円ほどかかります。

■地盤改良費 費用相場:30~300万円
まず地盤改良は、大抵の場合必要になります。
改良工事の内容はボーリング調査を元に検討するのですが、表層改良のみでいいのか、コンクリート杭で対応できるのか、鋼管杭が必要なのかなど、地盤の強さと工事内容によって大きく異なるため、相場にも大きく開きがあります。

■山留め設置費 費用相場:100~200万円
地下室を作るためには、地下室の広さ分+αの土を掘らなければなりません。
この際、周辺の土が崩れ落ちてこないように、土を留めるための「山留工事」を行います。

■堀った土の処分費 費用相場:150~200万円
掘り返した土は土圧から解放されて膨らみ、膨大な量となります。
そして、その土を捨てるための処分費も必要です。

■RC造地階配筋・打設費 費用相場:300~500万円
地下室を居室として使用するためにドライエリアを設置する場合は通常工事費にプラス150万円程度かかります。これは地下室の躯体(構造体)をつくるための工事費用です。
鉄筋コンクリート造で地下室本体を作るための配筋、コンクリート打設工事を行います。

■浸水対策 費用相場:70~100万円
地下室ではコンクリートの浸水対策が必要不可欠。
外側からの防水処理が一般ですが、現場の条件に応じて室内側から工事を行うこともあります。

■排水ポンプ設置費 50~100万円
地下水位が高い場合、排水ポンプを設置します。
2台設置して、片方が故障しても片方が稼働するように備えるのが一般的。
よって、2台分の費用と設置費、設置場所が必要です。

■空調設備 100万円
地下空間を快適な住環境にするためには、換気・除湿システムも必要。
居室として使う場合はもちろんですが、倉庫として地下室を作る場合であっても、できる限り空調システムは導入しておきたいものです。
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失敗しない地下室のプランのポイント

地下室を快適な空間にするためのポイントをお伝えします。

■暗く近寄りにくい空間にしないために光を入れよう!
地下室を作る際には、できるだけ自然光を取り入れられるよう計画しましょう。
ドライエリアの設置や、一部吹き抜け空間を作ると効果的です。
採光の取り方によっては、地下とは思えないほど明るく快適な部屋づくりもできますよ。
ドライエリアは湿気を逃がすほか、避難経路としても使うことが可能です。

■半地下も検討してみよう
狭小地の場合はドライエリアを設けられないこともあるでしょう。
それでも明るい居室として使える地下室がほしい場合は、「半地下」もおすすめです。
建築基準法上、地階と認められるギリギリで地階を作り、地上に出てる部分で明り取りの窓を設ければ、自然光を取り入れられます。

・カビだらけにしないための対策をしよう
地下室は湿気がたまりやすい条件が揃っているため、防水対策をしていてもカビが発生しやすいです。必ず換気システムや除湿器を設置して、じめじめ対策をしましょう。
ルームエアコンや、全館空調システムなども効果的です。
地下室は、条件が厳しい土地で有効な部屋数を増やすための有効な手段です。
趣味を楽しむ空間として、また子どもが思いきり遊べる空間として、生活を豊かにしてくれる場所となるかもしれません。

便利で魅力的な地下室で、素敵な生活を実現できると良いですね。

地下室の読みもの一覧|おしゃれな部屋・空間

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