2021/06/10更新0like7859view

著者:tennto1010

都市部でも開放感を得るには?住まいを開く最適なルール

別荘地のように周辺環境に恵まれた敷地とは違い、都市部の家づくりは、敷地条件や隣家との関係などで開口部のプランニングは開放感からどんどん遠ざかってしまいがち。それでも、外部を取り込む家づくりは、家で過ごす時間の質が問われる今、優先度の高い検討ポイントと言えるでしょう。そこで今回は、都市部で叶えられる最適な開口部のあり方について考えます。

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周囲の環境を的確に「すくい取る」

都市部においては、「家の中が丸見えになってしまう」「そもそも眺望と呼べるような環境がない」などの理由から、外部に大きくひらけた開口はプランニングしづらいものです。しかし、開口部の大きさが、開放感や心地よさに比例するわけではありません。

的確に周囲の環境を読み、練られたプランニングは、開口部の大きさで得られる開放感とは別の都市部ならではの精彩を放っています。

■借景をとらえる

住宅密集地では、隣家に挟まれ視界の抜けがわずかしか望めないこともしばしばです。その場合には、視界が広がる貴重な隙間を狙って開口部を設け、外部との一体感をもつプランニングが検討されます。

事例では、スキップフロアによって生まれる視線のアップダウンに合わせて、常に窓からの借景がとらえられるプランニングに。さらに水平方向に連なる高窓も、開口部の大きさ以上の広がりを感じさせます。
佐竹 了一「仙川の家~周辺環境を活かした住宅~」

■細切れに切り取る

緑深い公園や神社など、特別な借景スポットがなくても大丈夫。隣家のちょっとした植栽でも、細切れの風景をしっかり切り取れば、家の中に外部とつながる居場所があちこちに増える、という楽しいプランが誕生します。

■窓形状や天井勾配の視覚効果をねらう

郊外型の大開口は、引き込み式の掃き出し窓を庭やバルコニーと一体化させるプランニングが王道ですが、都市部で同様のプランが活かせる条件を揃えるのは難しいもの。こちらの事例は、そんな掃き出し窓をちょうど逆さまにしたような腰窓の連なりですが、掃き出し窓に負けない視界の抜けを感じます。開口部に向かって高くなる天井勾配や、窓の上端を天井まで伸ばすことで、天を衝くような開放感が生まれます。

■閉じる≠暗い

都市部では、敷地いっぱいに建物を建てて大きく「開き」ながらも、開口部のプランニングが中途半端で結局「暗い」家になりがちですが、こちらの事例はその真逆で「明るく閉じる」が家づくりのコンセプト。周囲を閉じられた旗竿の土地に、高窓からの光が部屋の奥まで届く明るい居住空間が広がっています。

周囲からの目線に備える

隣家や周囲からの視線を避けながら、内部には開放感をもたせること。この矛盾する課題に必ずぶち当たるのが都市部の家づくりの宿命です。

■緩衝エリアで囲んで守る

住宅地の中にあって、森のような佇まいを守るこちらの事例。木製のテラスでぐるりと囲むことで、森のような雰囲気もそのまま内部に引き込んでプライベート感が保たれています。テラスにも家の構造体の一部を現しにしたように柱梁を組んでいるのが、ユニーク且つ緩衝地帯をつくりだすための決め手のテクニックです。

■緩衝エリアを引き込む

都市部でプライベートな外部空間を確保するためには、中庭的な空間が検討にあがりますが、敷地に余裕がないとなかなか踏み切れないのが難点。こちらは旗竿のコンパクトな敷地ながら、玄関アプローチから連続する路地のような空間を屋内に引き込むことで、周囲からの視線をかわした緩衝地帯としています。

■緩衝エリアをくり抜く

建物をくり抜くようにしてできあがった玄関ポーチと前庭が、半屋外の緩衝地帯になっています。前庭を囲む壁にも、この家のモチーフになっているアーチ形の窓を取りつけている点が、半屋外の雰囲気を決定づけています。こうしてできた緩衝地帯に向けて大きく縦に空間を開き、柔らかい日差しを取り入れます。

マンションリノベーションでもここまでできる

マンションのリノベーションでは、共用部である開口部の変更ができないことから、既存の範囲以上の開口は実現不可ではあります。とはいえ実は、ベランダに面した二間続きに改修する場合などは、開口部を相当大きく取れるのも事実。建具や造作の工夫次第で、大開口を堂々と自慢できる仕上がりに。

■既存サッシの存在感を消し去る

既存のサッシを木枠で囲み、内窓を設置。造作家具とも一体化させることで、既存のサッシの痕跡を感じさせない上質な大開口に生まれ変わっています。窓際の造作ベンチも外部との接点として快適な居場所をつくっています。
池田 郁夫「窓際造作ベンチと多様性のある小リビングを持つ住まい」
窓まわりの建具のデザインは、外部とのつながりを決定づけるエッセンスにもなる部分です。こちらの事例では、既存のサッシを端正な障子で覆い、一つの大きな開口部に見せています。障子の中桟を細く少なめに入れていることも、すっきりと整った明るい窓辺にする秘策。

快適な窓辺をサポートする脇役

窓辺の計画で忘れがちなのが網戸。せっかく眺望が開けた窓でも、網戸をつけざるを得ないケースがありますよね。引き込み型のロール網戸を選ぶなど美観を損なわない工夫や、窓形状にあわせた使い勝手の検討が必要です。

■日本古来の美意識

簾戸(すど)を引き込み式の網戸として使用した事例です。夏の涼を求める建具として日本で古くから使われてきた簾戸ですが、季節を問わず、また和洋を問わずに使えるデザイン性と機能性で活用度大です。

■真似したい!木枠網戸

FIX窓+縦すべり出し窓のコンビネーションは、引き違い窓に比べて熱損失が抑えられる優秀な組み合わせです。縦すべり出し窓につけた網戸に木製格子のデザインを加えることで、窓のデザイン性を損なわず、且つ機能的な開口部になっています。絵本に出てくるような木枠に囲まれた風景に、どこか非日常性を感じませんか。
都市部ならではの風景を切り取った窓の良さをご紹介しました。採光・通風計画は有効か、断熱性能は十分かなど、多くの要素の検討が必要な開口部は、決して疎かにできない住み心地の要。大きさにとらわれずに、住まいに最適な“開き方”を検討しましょう。
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