2017/10/01更新2like16140view

著者:水沼 均

建築家と建てる家、本当のメリットとデメリット

この記事を書いた人

水沼 均さん

建築設計の学校で長年教師を務め、大勢の生徒さんと接してまいりました。年齢、経歴、そして住まいへの思いも大変多様で、他では得られない貴重な経験ができました。その経験を生かして、豊かな住まいづくりに役立つような記事をたくさん書いていきたいと思います。

新居を建てるときの依頼先には工務店、大手ハウスメーカー、建築家などいくつかの選択肢があります。また、ディベロッパーから建売住宅や中古住宅を購入するという方法もあるでしょう。今回は、他の選択肢ではなく建築家に依頼して家を建てるときのメリットとデメリットについて考えてみましょう。

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

メリット1 施主の要望を大切に聞いてくれる

建築家は、世界でたった1軒だけのすてきな家をすべて特注の一品生産で、施主一家のために建てるのが職業です。一品生産なので要望を徹底的に聞いて、じっくり時間をかけて設計してくれます。すべてが特注なので「当社の仕様ではできません」という言葉はありません。

設計を受注すると、まずできるだけ頻繁に施主に会って住まいに対する一家の考え方や暮らし方のスタイルを知ろうとします。そしてありったけの要望を聞いてそれらを整理し、間取りや造形、素材選びなどで具体化して行くのです。

写真は居間と一体につながった大きなテラスと、大人数で食事ができるほどの長いテーブル。施主一家のライフスタイルが大変明快な形で実現されていることがわかります。
鈴木恵介「青空ダイニングはうす」
案ができあがってくるとプレゼンをして見せてくれますが、建築家の多くはプレゼンが得意で、大変ていねいにわかりやすく話して聞かせてくれます。建築家は間取りだけで考えずに立体物として建築を考える習慣がついているので、間取りができあがったときにはすでに外観や部屋の様子のイメージもできあがっています。それを間取り図と合わせて、模型を使ってプレゼンして見せてくれるのです。

このように、建築家は自分に仕事を依頼してくれた施主をとことん大切にします。そして家の寿命はライフスパンに及ぶので、施主とのお付き合いも一生の長さのものとしてとても大切に考えるのです。

写真はマンションリフォームのプレゼンテーション模型です。細部までとてもわかりやすく、魅力が伝わるように作ってあることがわかります。

メリット2 金銭面の管理が透明でわかりやすい

建築家は当然施工業者選びも行いますが、たとえ懇意にしている工務店に施工を依頼する場合でも、マージンを受け取る等はまずありません。純粋に腕が良くて価格の良心的な工務店を施主に紹介します。

設計見積もりと工事見積もりに対しても大変透明で、常にすべてを施主に対して明らかにします。施主にわかりづらい部分があればとことん説明して、納得の上で進めます。
設計だけで報酬を得ている職種なだけに、金銭面の透明な管理には大変きびしい人たちなのです。

メリット3 第三者の視点で技術面を監理してくれる

自らが全責任を持って設計・工事監理を行うだけに、耐久性や安全性などの技術面に対して建築家は非常にシビアです。床下、壁の中、天井裏に至るまで、見えない場所もとてもしっかりと設計します。
そして工事現場でもすべてを工務店まかせにしてしまわず、図面どおりに施工されているかを絶えずチェックして、技術面も第三者の視点で厳密に監理をします。

度重なる大震災でもおわかりのように、建築の技術的な安全性は直接人命に関わる重要な部分です。それをもっとも理解して日々実行しているのが建築家なのです。

デメリット1 個々の価値観が違いすぎる

さて次はデメリットについてお話ししましょう。
建築をひととおり設計することは、多くの取捨選択行為そのものと言えます。ある事がらを重視すれば、それに伴って必ず何かにしわ寄せが行くものです。ところが何を大切にして何にしわを寄せるかという価値観が、建築家によってかなり異なるのです。

したがって建築家と初めに話をするときには、自分たちの暮らしやこだわりなどをできるだけたくさん話しましょう。住宅の本や切り抜きなどを見せるのもとても良いことです。もし自らの価値観があなたとかなり異なっているようなら、ほとんどの建築家はその旨話してくれるはずです。

下記の記事は同じマンション・リノベーションを6社が提案した例です。建築家によって価値観が大きく異なることがわかります。

同じ間取りでこんなに違う!? 6人のプロがスケルトン・マンションをリノベーションしたらこうなった

デメリット2 時として自らの感性が強く出すぎる

建築家をやっている人たちは「この仕事が好きでたまらない」という人たちばかりですから、自分の建築観やデザインへのこだわりも相当なものです。外観はもとより細かい造形に至るまで自分の感性で作り込み、機器類も強いこだわりをもって選びます。

したがって建築家と施主とで感性の相性が合えば最高のデザインで住まいを作ってくれますが、相性が合わなければまったく好みとかけ離れてしまう恐れもあります。

また形や見た目が優先されすぎて、場合によっては使い勝手やメンテナンスのしやすさが損なわれることも、ないとは言い切れないでしょう。

デメリット3 設計に比較的時間がかかる

これはデメリットと言うべき点なのかわかりませんが、人によっては不満を感じることがあるので挙げてみました。

メリットでお話ししたとおり、建築家はじっくり時間をかけてていねいに設計します。そして設計に先立って施主をよく知るためにも時間をかけます。したがって建築家に設計を依頼したら、ある程度の時間はかかると想定しておくべきでしょう。

気になるその設計期間ですが、初対面から工事に着工するまでにはどんなに短くても半年、あるいはそれ以上を見込んでおいた方がよいでしょう。

でも建築家としては、実は1年くらいはほしいのです。他の仕事で忙しいからが理由なのではなく、施主をもっともっと知って案をもっともっと良くしたいからなんですね。

写真は土間を大胆に室内に取り入れた例です。どの部分を見ても、施主の価値観や暮らし方、こだわりなどを熟知した上で作り出されていることが感じられます。
以上のように、建築家に依頼することのメリットとデメリットとはほぼ同じ事がらから発生しています。デメリットを避けてメリットをより多く得るためには、とにかく何人もの建築家に実際に会ってみることがもっとも肝要です。建築家選びにはぜひ時間をかけてください。仮に数ヶ月余分にかかったとしても、一生住まう家のためであれば長い期間ではないですものね。

【関連リンク】
建築家|SUVACO(スバコ)

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