2022/04/28更新0like1616view

著者:佐藤ゆうか

使いやすい手すりを計画するためのポイント

この記事を書いた人

佐藤ゆうかさん

2級建築士。
工業高校卒業後、中小規模の建設会社に勤務。
木造住宅を中心に新築やリフォームの設計に携る。
現在は3児の育児を中心に在宅ワークに励み、いつか現役復帰を夢見ながら建設業界にしがみつく日々。

手すりは階段を上り下りする際の安全な移動に欠かせないものです。
今回は、使いやすい手すりを計画するために知っておきたい手すりの役割や、種類、取り付け位置、選び方などについて解説します。

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▽ 目次 (クリックでスクロールします)

住まいの安全を守る!手すりの役割

手すりの主な役割としては、高い場所からの「転落防止」、歩行を助ける「移動補助」、立つ・座る・段差をまたぐなどの「動作補助」の3つが挙げられます。

健康な人だと、手すりは設置費用が掛かるうえに邪魔なものと感じるかもしれませんが、体調不良時やケガをした時の備えになったり、万が一の転倒を防止できたりといったメリットも。ベランダや階段はもちろん、玄関など段差がある場所や、浴室・トイレなど立ち座りの動作がある場所には、特におすすめです。

また、日常生活に介助が必要な家族がいる場合、生活範囲に手すりを取り付ければ自立した生活を行う手助けになります。

手すりの取り付け位置

前述したように、手すりは「転落防止」「移動補助」「動作補助」の必要がある部分に取り付けます。以下では、手すりの取り付けを推奨したい場所について解説します。

高さが1mを超える階段には、建築基準法で手すりの取り付けが義務付けられています。
階段は住まいの中でも転落事故が多く発生する場所ですので、足を滑らせた時とっさに掴める位置に取り付けましょう。

◆推奨する高さ:段鼻(階段の先)から70~90cm
2階以上にあるバルコニーなどの部分に対しても、建築基準法で手すりの取り付けが義務付けられています。
落下事故を絶対に起こさないためにも、子どものよじ登りを防げ、かつ身長が高い人も安全に利用できる位置で設定しましょう。

◆推奨する高さ:1.1m以上

段差部分

段差部分の手すりについては法律で定められていませんが、安全な段差昇降のために取り付けておくと安心です。

特に玄関の框などは、手すり代わりに壁や靴箱に手を掛けてしまいがち。よく触れる部分の汚れを防ぐためにも、新築段階で手すりを付けておきましょう。

◆推奨する高さ:段差の上部分から70~90cm(70cmから縦付けがおすすめです)

トイレ

松山邦弘 / M D A「画家と母の家」
トイレの手すりは便器横への設置がおすすめ。立ち座りの補助はもちろん、バランスを崩した時などにも掴まれるので安心です。

トイレの手すりは「ハンドグリップ」と呼ばれる小ぶりなものからカウンター形状のものまで、たくさんの種類があります。

高齢の方や介助が必要な家族がいる場合は、立ち座りの動作をしっかりサポートしてくれる「L型手すり」がおすすめ。現在健康に自信がある人であっても、取り付けておけば将来的な備えになります。

◆推奨する高さ:75~90cm
めまい、のぼせ、転倒など、住まいの中でも比較的危険が多い浴室は、万が一に備えて必ず手すりを計画しましょう。
洗い場から浴槽への移動を補助する手すり、浴槽内で体勢を維持するための手すり、浴槽から安全に立ち上がるための手すりの3つがあれば安心です。また、必要に応じて、出入口や洗い場部分にも手すりを設けると安全性がアップします。

◆推奨する高さ
洗い場から浴槽への移動補助:洗い場床から70~90cm
浴槽内の体勢維持:浴槽底から30~50cm
浴槽立ち上がり補助:浴槽底から55~70cm
介助や杖がない状態での歩行が難しい家族がいる場合、主な生活範囲となる場所に移動を助ける手すりを設置すると、自立した生活の補助になります。

◆推奨する高さ:75~80cm(主に使う人の大腿骨大転子の位置)

安全で使いやすい手すり選び4つのポイント

長く使いやすく、安全な手すりを計画するためのポイントを解説します。

(1)主に使う人が使いやすい計画を

手すりは、主に使う家族にとって使いやすいことが大切です。
手すりが必要な人に合った高さ・握りやすさ・必要な場所をふまえて計画しましょう。
取り付け位置についても各メーカーごとに推奨基準が設けられていますが、使う人の身長、腕の可動域、運動能力、利き手に合わせて設定することが重要です。

(3)手すりの太さにこだわろう

既製品の場合、直径32mmと35mmが一般的です。
小堺文彦「センターコートのある家」
すぐに手すりが必要ではない、意匠性にこだわりたいなどの場合は、細いものや太いものを取り入れても良いでしょう。細く華奢な手すりは、スタイリッシュでおしゃれな印象を与えます。
太めの手すりは、重厚感があります。材質が木の場合、より温かな印象に。

(3)適した素材を選ぼう

手すりに使われる素材は、主に以下の3種類です。
取り付ける場所に適した素材を選びましょう。

【木製】
最も一般的な素材。フローリングと合わせやすく、インテリアの調和がとりやすい。
室内の移動用、段差昇降、トイレ、階段などにおすすめ。

【樹脂製】
水に強く、握った時にひんやりしにくい素材で、清潔な状態を保ちやすい。
トイレ、浴室、屋外にもおすすめ。

【金属製】
アルミ製とステンレス製が一般的ですが、雰囲気のある鋳物も人気。
美観と耐久性に優れ、清潔な状態を保ちやすく、屋外や水周りでも安心して使えますが、夏熱くなりやすく、冬はひんやりするため、使い勝手重視の場合は注意が必要。

(4)インテリアに合わせよう

手すりは存在感があるものなので、使いやすさだけを重視すると部屋の雰囲気を損なってしまうことも。介護施設や病院のような雰囲気になってしまうと味気ないので、空間に合わせたものを選びましょう。

使いやすさとデザインを両立した既製品もありますし、とことんこだわりたいならオーダーメイドも可能です。取り付ける場所の雰囲気や、予算にあわせて検討しましょう。
住まいの安全を守る手すりは、使いやすさだけでなく意匠性にもこだわりたいパーツです。
どのような場所にあると便利で安全か、事前にイメージしてみることも大切です。
注文住宅ならではの、こだわりの手すりを計画できるといいですね。
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佐藤ゆうかさん

2級建築士。
工業高校卒業後、中小規模の建設会社に勤務。
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