2017/12/06更新0like19472view

著者:水沼 均

イマドキの間取りは部屋数よりも広さとつながり重視!新しい間取りの魅力と秘訣

この記事を書いた人

水沼 均さん

建築設計の学校で長年教師を務め、大勢の生徒さんと接してまいりました。年齢、経歴、そして住まいへの思いも大変多様で、他では得られない貴重な経験ができました。その経験を生かして、豊かな住まいづくりに役立つような記事をたくさん書いていきたいと思います。

間取りは、部屋の並びを意味する言葉です。間取りを考えることは、住まいの使い勝手や各室の広さを決定する、大変重要な作業です。間取りの違いによって、住み心地はどのように変化するでしょうか。ここでは日本住宅の間取りの変遷を見ながら考えてみましょう。

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▽ 目次 (クリックでスクロールします)

昭和の庶民派を代表する田の字形間取り

かつての日本の庶民住宅は、廊下を介さずに部屋同士が直接並ぶ、いわゆる「田の字形」の間取りが主流でした。下の図は典型的な田の字形間取りを示したものです。

各室は襖や障子だけで仕切られていました。そして奥の部屋に行くためには手前の部屋を通らねばならず、プライバシーの確保ができづらい間取りでした。また各室はリビングや主寝室のように用途が特化されていませんでした。布団やちゃぶ台を畳むことで、その都度多用途に用いられていました。
しかし、建具を開け放ったときの各室のつながりと広がりはすばらしいものでした。現代住宅にもこのつながり感は継承され、しばしば田の字形のフォルムが用いられています。下の写真の住まいはそんな例の1つです。
また下の写真では、主寝室と書斎、ウォークインクローゼットというつながりの深い部屋同士を田の字形につないでいます。建具を開け放ったときの開放感や奥行き感は、他の間取りでは得がたい魅力です。
河合健之「高台寺の家」

合理性重視の分離型間取り

やがて時代が進むと、プライバシーをより考慮した考え方が住宅に浸透してきました。そして部屋をできるだけ用途別に分けて、それらを廊下で分離するという合理的な間取りが主流になりました。

下の図は典型的な分離型の1階間取りを表したものです。リビングは応接間としての機能が優先されていて、ダイニングキッチンとは分離して玄関に近い位置に設けられていました。また、多用途な予備室として和室が併設されることもよくありました。

現代の主流LDK中心型間取り

こうしたステップを経て、現代ではリビングとダイニングキッチンとが一室になった間取りが主流を占めつつあります。

もっとも利用頻度の高いリビングとダイニングキッチンを一室にまとめて可能な限り広くとり、廊下は極限まで減らしています。結果、LDKは個室への通過動線となることもありますが、家族が顔を合わせる良い機会として、むしろ重宝されることも多くなっています。

下の図は典型的なLDK中心の1階間取りです。廊下の面積が分離型に比べてうんと小さくなっていることがわかります。対してLDKは20畳もの広さがあります。
下の図の住まいもLDK中心型の例です。延べ面積24坪半の小さな住まいですが、LDKは大変広いことがわかります。また1階に廊下がなく、玄関から奥の階段まで、LDKが通過動線の役割も担っています。
鷲巣 渉「1500万円で「人生を楽しむ家」のアイデア集」
下の写真は約30坪の住まいですが、こうしてLDKの写真を見ていると、もっともっと広い住まいに感じられます。かつての分離型の間取りでは得がたい広がり感ですよね。
カキザワホームズ「シンプルナチュラルな家」

個室は控えめに、家族のつながりを重視するLDK中心型間取り

LDK中心型間取りのもう一つの特徴として、個室の面積を過大に広くとらず、最低限の広さに抑えるということがあります。個室の面積を抑えることで、その分LDKを広くとることができるからです。

この間取りの背景には、住まいを家族のつながりの場として見る考え方があります。住まいはめいめいがバラバラに過ごす個室群ではなく、家族のつながり方にこそ本質があるという考え方です。

下の図の住まいもそのような考え方で作られています。図中の番号3、5,6の部屋はいずれも個室ですが、必要最低限の面積のみが割かれています。そしてそれらに比べて7番のLDKは大変広々としています。これなら、本を読んだりメールを打つときでもLDKで過ごしたくなりますよね!これがまさに、現代のもっとも進歩した間取りの考え方なのです。

2階にLDKを設けて充実空中生活!

下の図の住まいはやはりLDK中心型の間取りですが、LDKが1階でなく2階にあります。広さだけでなく日当たりや風通し、そして眺望など、もっとも条件の良い場所をLDKに充てているのです。

結果、個室は日当たりや眺望に劣る1階に設けられますが、滞在時間や時間帯を考えると、2階のLDKという考え方はとても理にかなっている気がします。特に密集した街中の住まいでは、この手法は有効でしょう。
鷲巣 渉「1500万円で「人生を楽しむ家」のアイデア集」

マンションリフォーム・リノベーションの間取り

ではマンションのリフォーム・リノベーションでは、間取りはどのような考え方で作られているでしょうか。

SUVACOでさまざまな例を見てみますと、マンションも戸建て住宅とほぼ同じ考え方でリフォーム・リノベーションがなされていることに気がつきます。個室の数や面積を抑えて、LDKを極力広くとっている例が多く見られます。

下の写真は4LDKのマンションをリノベーションしたものですが、個室の面積を小さくし、さらに数も2室に抑えて、その分LDKをうんと広くとっています。部屋の数よりも住まいのひろがりや家族のつながりが重視される傾向にあることがわかります。
また下の例は2DKのマンションのリフォームですが、寝室を1つにまとめてLDKを広くとっています。
下の写真は40㎡に満たないマンションのリノベーションですが、LDKが大変広くとられており、小さな部屋であることが信じられないほどです。
マンションの広さは一般に「3LDK」などの部屋の数で表現されることが多いのですが、こうして例を見ていくと、現在のリフォーム・リノベーションの傾向は明らかに、部屋数よりも広がりとつながりが重視されていることがよくわかります。
間取りは部屋の並びを指す言葉ですが、単に機械的に部屋数を揃えて並べるという意味ではありません。間取りを考えることはそのまま、家族の関係やあり方を考えることに他ならないのです。

同じ条件の家でも、住み手によって間取りは大きく変わります。個々の家族の関係がみんなそれぞれ異なるからです。

あなたの住まいにはどのような間取りがマッチするでしょうか。ぜひ、ご家族みんなで検討なさってみてください。
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