2021/09/02更新0like6570view

著者:熊井博子

新築では叶わない!時間を味方につける戸建リノベの魅力

この記事を書いた人

熊井博子さん

ビルダー・建築設計事務所に営業/広報として勤務した後、住宅専門誌の編集を経て、住宅関連の執筆と一般の方の家づくりサポート等に従事。インテリアコーディネーター、照明コンサルタント。

いざ、家づくり!と新築を目指してスタートしたものの、途中で中古住宅や既存家屋のリノベーションへと舵を切るケースも少なくありません。なかには肩を落とす方もいるかもしれませんが、そんな方にひと言。「リノベは決して“仕方ない選択”ではありません!」
むしろ、クリエイティブでエキサイティング。新築では到底たどり着けないリノベの魅力を探ってみませんか。

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

時間軸で考える 「いい時期の家に暮らす」という発想

「リノベーション ≦ 新築」の思いを拭えない方に、ちょっと違う視点の発想を。
家の、“いちばんいい時期”を考えたことがありますか?家に限らず、どんなものでも新しい時がいちばんいい、と考えるのが普通かもしれません。

ただ、新品はいつか新品でなくなるときがやってきます。知らない間にキズがついたり汚れたり。その後登場してきた他の「新しいもの」に比べると、どこか見劣りして見えることもあるものです。それは家も同じこと。まわりに家が建つたび「新しい」は更新されて、次第に魅力が失われていきます。

一方で、時間が経っても廃れることなく魅力を放ち続ける家があるのも確かです。かつての流行・かつての最先端という概念などどこ吹く風、キズや汚れすら持ち味にして風合いを増した建物を目にすると、時間の経過はプラスにもなるのだと思い知らされます。

近年は、技術やデザイン、ブームの進化・移り変わりが目まぐるしくて、「新しい」時間はあっという間。新しいものを追って家をつくれば、完成した瞬間にピークを迎えて時間が経つほど坂を下ることになります。逆に先を見据えて素材やデザインを選んで家をつくれば、時間をかけてゆっくり上り、“いい時期”に向かっていくことになります。

それなら後者の方が断然いいかと言えば、そうとも言い切れないのが現代。
代々住み継ぐ家をと家族総出でつくったひと昔前と違い、今はひと世代・ひと家族ごとにつくる時代。たっぷりコストをかけた「手入れしながらじっくり付き合う家」は、ひと世代だけの家族にとっての“いい時期”と、ちょっとずれる場合もあるのです。

家を構えてこれから家族とともに始まる30年、いちばん長く“いい時期”を味わうには、「完成した瞬間にピークを迎える新築」でもなく、「手入れしながらじっくり育てる“新築”」でもなく、今、ちょうどいい時期を迎えた「手入れしながらじっくり育てる“年月を経た家”」。

新しいことがいつもいいとは限らない。新築ではなく敢えてリノベーションを選ぶ理由は、そんなところにもあるのです。

リノベーションでしか叶わない、特別な魅力

“新しいことがいつもいいとは限らない”と言ったって、ピンとこない人もいるかもしれません。リノベにしかない特別な魅力とその世界観を少し紹介したいと思います。

「ヴィンテージ」を材料にする

家づくりは、自分の思うゴールに向かってかたちを考え、さまざまな材を使ってつくり上げる壮大なものづくり。ある意味、ものづくりの極みとも言えます。

そのものづくりの材料に、すべて新しいものを使うのが新築、それに加えて“年季の入ったもの”を取り込めるのがリノベーション。同じものづくりでも、使える材料の幅が広がれば、できるものもその世界観も一気に広がるのはいうまでもありません。

祖父母から引き継いだ家、中古住宅で買った家。これらはただただ古い家ではなくて、見方を変えれば味わいのあるヴィンテージが詰まった材料そのものです。丸ごと活かす・パーツを活かす・使い方を変えてみる。方法はいくらでも。“真新しいもの”だけでは到底たどり着けない、無限の可能性を秘めています。

時を飛びこえ、いま、楽しむ

いい素材で丁寧につくられた家は、時間をかけて味のある家に育っていきます。時間の経過でしか出せないその味を楽しむことができるのがリノベーション。築50年なら50年、築60年なら60年の長い時間を飛び越えて、いま、楽しむことができるのです。

それは庭も同じこと。木や草花は時間をかけて成長し、次第に見応えある姿になっていきます。土地を買ってゼロから庭づくりを始めれば、小さな苗木がそれなりの形になるまで最低5年。実のなる木を植えれば、実をつけるまでに3年・5年とかかります。もしリノベーションする家の庭に草木が育っているのなら、全てがゼロスタートよりずっと近道。生かさない手はありません。そこから徐々に自分好みに手を加えていけば、最短ルートで理想の“家と庭”の姿にたどり着けるはずです。

ふるさの魔法

意外な魅力がもうひとつ。リノベーションは、家づくりで陥りがちな「ねばならぬ」の思考を緩めてくれるところがあるのです。

なんでも新たにつくることのできる新築は、ゼロスタートゆえ完璧を目指しがち。知識や情報と相まって、「ねばならぬ」に拍車がかかり、がんじがらめになることもあるものです。それに対して、あるものを受け入れるところから始まるリノベーションは、「ねばならぬ」が通用しない場面にもたびたび出くわします。それならどうしようか、と対処法を考えるうち、いい具合に力みが溶けていくのです。

適度なゆるさが次なる想像力を生み、豊かな住まいにつながっていくのも確か。リノベーションゆえの、家のふるさがもたらす魔法かもしれません。

なんでも自由にできるわけではないけれど

リノベーションは、既存の柱や壁を完全無視して自由に間取りを組み立てられるわけでもないですし、古い家なら断熱性や耐震性に特段の配慮も必要です。工事を始めて壁や床を剥がしてみたら躯体が傷んでいた、なんてこともよくある話です。

でも、その制限や工夫のしどころを考えるのが魅力で面白いのも確かです。思った通りにできないことをどう工夫するか、暮らしの中でどう生かすか。それを考えるのは、完成形のものをポンっと与えられるより、ずっとクリエイティブで刺激的。頭を柔らかくして臨んだら、ワクワク楽しくて仕方ない体験ができるはず。

リノベーションは、時間を味方につける手法。それは新築では逆立ちしたって手に入れることのできない魅力です。
「新しい」ことの良さと時間を経た「ふるい」ことの良さ、両方を欲張ることのできるリノベーション、一考の価値があると思いますよ!
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