2018/03/07更新0like4698view

著者:水沼 均

マンションリノべではあえて小さな場所を設けて広がり感を出す

この記事を書いた人

水沼 均さん

建築設計の学校で長年教師を務め、大勢の生徒さんと接してまいりました。年齢、経歴、そして住まいへの思いも大変多様で、他では得られない貴重な経験ができました。その経験を生かして、豊かな住まいづくりに役立つような記事をたくさん書いていきたいと思います。

マンションのリノベーションでは、限られたスペースを広々と見せるために、ぜひ工夫をしたいものです。そこでおすすめなのが、小さな場所を部屋のどこかに設けてみることです。小さな愛らしい「たまり」「ひそみ」のような場所を1つ設けると、住まい全体が驚くほど広々と、開放的になってくれるのです。ここでは、そんな小さな場所を設けたマンションリノベーションの例をご紹介いたしましょう。

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

小上がりを作る

洋風の住まいになっても、床に直接座ったり横たわる魅力は捨てがたいものです。既存のマンションでも、居間に隣接して和室を設けた例は数多く見られます。

そこでここでは、居間の一角に小さな場所を作って、段差を設けたり畳を敷いた例を見てみましょう。

下の写真は大変優れた例です。窓辺に小さな板敷きの小上がりを設けて、腰掛けたり寝転がったりできるような場所を作り出しています。畳1畳程度の小さな場所ですが、ここがあることでリビングダイニングがより広々と開放的に感じられます。小上がりの天井をあえて低くして、場所の小ささを強調しているのも大変効果的ですね。
こちらの例は、琉球畳を敷いた小上がりです。天井はLDKの他の部分と揃えているので、小上がりをまるで家具のように「置いた」という感じがよく出ています。LDKの一角にアクセントを与えて、独自の魅力を持った場所を1つ追加することに成功しています。
リノベ不動産|スリーエイト「【マンション×フルリノベーション】O様邸」
また下の写真の小上がりには建具と鴨居をつけることで、独立した部屋のような個性も与えています。ここでは段差や鴨居は、「奥の間」のようなちょっとした神秘性もうまく演出しています。
池田 郁夫「土間スペースと小上がり寝室・床下収納のある木の住まい」

半独立した小さなコーナーを作る

さて、それでは小さな場所がもう少し独立性を持って、部屋の中にある小さな部屋のようになったらどうでしょうか。

下の写真のネイビーブルーの小さな場所は、キッチン横のパントリーです。コントラストの強い色とアーチ形の可愛らしい出入り口があいまって、住まいの中の特別な場所としての個性を放っています。
また下の例では寝室をLDKに向かって出っ張るように設け、まるで外壁窓のような大きな内窓を設けています。結果寝室は、LDKという広い世界に面した小さな「家」のようにも見えます。
GLADDEN「セパレートキッチンのある家」
また下の写真では書斎コーナーが柔らかく囲われて、LDKの一角を占めています。上の例と同様、内窓の存在が小さな場所の存在感をとても強調していますね。

小さな場所を「入れ子」のように作る

次は、小さな場所がさらに強い独立性を持って、家の中の小さな家のような存在になった例です。

下の写真では、広いLDKの中に小さな場所を箱のように置いて、中を寝室と収納に用いています。寝室をふつうに別室として設けるのに比べて、LDKの広がり感がうんと強まっていることがわかります。

このように、箱の中にもう一つ箱が入ったようなデザインのことを「入れ子」といいます。
そして下の写真は、音楽用の防音室を入れ子でデザインした例です。入れ子の感じを強調するために、ここだけネイビーブルーに塗装してあります。
下の写真では、円筒形の書斎を入れ子にしています。四角い部屋に円筒形が置いてあるだけに、「入れ子」感がいっそう強まっています。
これら3つの例に共通しているのは、箱が天井まで達しておらず、可能な限り低い高さで設けられていることです。こうすることで、ワンルームの中にいかにも独立してポッと置いてある感じが強く出ていて、結果的に部屋の広がり感をおおいに高めているのです。

子どものための小さな居場所を作る

さて、こうした小さな場所の演出は、子どもさんの居場所にもとても有効な手法になります。

子どもさんがまだ小さいうちは、親の目の届くところにいてほしいものです。そんなとき、LDKの一角に子どもさんのための小さな場所があれば、とても便利で安心ですよね。そしてこの小さな場所はインテリアのアクセントにもなってくれることでしょう。

下の写真ではLDKの一角に小上がりを設けて、子どもさんのための遊び場にしています。これならいつも家族の目が届きます。子どもさんにとっても、自分たちだけの特別な場所という楽しい意識をいつも持っていられることでしょう。
下の写真もまた、子どもさんのための小上がりを設けていますが、さらにその右側には、子どもさんが中に入って遊べるような小さな「ひそみ」の場所まで設けています。

こうした小上がりは簡単に可動式に作ることができるため、将来子どもさんが成長したあとは、移動または撤去してLDKをより広々と使うことも可能です。小さな場所を作ることで、そんなライフサイクルへの対応もまた柔軟にできるようになるのです。
また、下の写真は子ども室の中の造作家具です。下に勉強机と収納、上にベッドが設けられていますが、家具というよりはもはや、子どもさんたちのための小さな家が家の中にあるように見えます。これなら子どもさんは大喜びですよね!

マンションにロフトを作ってしまう!

最後の例は、マンションリノベーションでなんとロフトを作ってしまったというものです。

「小さな場所」というとロフトの存在も思い浮かべますが、戸建てならともかく、高さに制限のあるマンションリノベーションではなかなか実現が困難です。しかし下の例では、ウォークインクローゼットの上にロフトを設けることに見事成功しています。

衣類のみの収納であれば天井高は低くても大丈夫、という点に着目し、上部に子どもさんのためのロフトが設けられています。小さな場所ですが、ここがあることでLDKは大海のように広々とした世界に感じられることでしょう。
マンションリノベーションには数々の制約がつきものですが、アイデア次第では可能性が無限にたくさんあるのだと、改めて勇気づけられるような作例がたくさん登場しましたね。マンションの住まいを広々と感じさせる上で、小さな場所を設けるのが大変効果的であることがおわかりいただけたかと思います。少しでも広さがほしいLDKに、さらに場所を追加するのは少し勇気が要るかもしれません。しかしアイデアを生かして工夫することで、小さな場所はますます住まいに広がり感をもたらしてくれることでしょう。
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