2021/12/07更新2like7417view

著者:黒木武将

専門家フィーチャー

【SUVACO黒木が語る】安藤毅さん(エアスケープ一級建築士事務所)〜住み手を成長させる、美しい家の設計〜

この記事を書いた人

黒木武将さん

SUVACO株式会社の創業者です。
ハコに合わせて暮らすのではなく、自分らしい住まいづくりが当たり前になるように!
外資系金融から一転、住まいのマッチングプラットフォームSUVACOを立ち上げました。
SUVACOは、お客様と専門家の「間」に存在することの価値を追求します。

SUVACO創業者・黒木が、これまでお会いした専門家たちの素顔を「完全主観」でお届けするシリーズ。

クールな事例写真と、無駄な要素や言葉を削ぎ落としたシンプルで美しいホームページ。憧れる一方で冷たい印象をも与えかねないが、実際に安藤さんと話をすると、語り口も穏やかで、ロジカルだけど愛嬌もあって、会話がとても楽しい。

安藤さんの家づくりは、美しい家を「作って終わり」ではなく、住み手が暮らしながらより良いものにしていけるよう、お客様のリテラシーが上がる仕組みがビルトインされています。家づくりに真剣に取り組むお客様には、とっても刺激的かつ楽しいプロセスだろうと想像できます。

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

「美しい家を作ります」

自らの家づくりについて、「美しい家を作ります」とストレートに表現する安藤さん。ここまでストレートなキャッチフレーズを使う専門家は、実はそう多くないように思います。

「美しい家をつくります。 家は家族のカタチです。 私たちは建て主様の想いやこだわりを美しいカタチにしていきます。」

機能のために美しさを犠牲にするのではなく、使う人の感性に訴えかけるような美しさを追求する。「日常や瞬間を大切にしなさい」と言われているようで、身が引き締まります。

安藤さんが手がけた住宅の内覧会にて

安藤さんが手がけた住宅の内覧会にて

Gハウス

「合理性の中に豊かさを感じ、美しい家と感じて頂きたいと思って作った家」とのこと。
Gハウスは、夫婦が程よい距離感で生活するための家。Gの字型にグルグルと回った壁が、空間を緩やかにつなげながらも場所を分け、庭との接し方によってそれぞれの場の雰囲気を変えながら各人の居場所を作っています。各シーンにおいて壁の存在が雰囲気や活動のきっかけを作っていますが、押しつけがましく主張はしない。
安藤さんにとっての「美しさ」をあらわす形のひとつが、アルファロメオ。走りの楽しさや遊び心が、どこにでもありそうで他には無い独特なフォルムに表れているところが美しくて好きだそうで、他メーカーに浮気することなく4台を乗り継いでいるそうです。

瞬間の美しさを際立たせるシークエンス

「お任せ」で依頼するお客様が多いのかと思えば、そうでもなさそう。逆に、こだわりのあるお客様との家づくりの方が楽しいそうです。

2021年に竣工した「展望台の家」は、夫婦それぞれに好きな事をするうえで家に求めるこだわりがあったので、それを形にしていったと言います。その瞬間を豊かに切り取ってデザインするのではなく、周辺や動線も豊かに彩るのが、安藤さんの設計の美しさ。

お客様がこの場所を選んだ理由のひとつが眺望の良さ。港の夜景を見ながらグラスを傾ける空間をデザインするだけでなく、その瞬間への動線も豊かに美しく彩る。家に向かって丘を登っていくと見えてくるアプローチの大階段、そして城壁のような石壁と大きなドア。重厚なドアを開け家の中に入ると、室内にはさらに大階段が続き、その階段を上ると、広がるのは見晴らしの良いLDK……。
上った先に何が現れるのか。それはこの家の1シーンでもあり、一連のシークエンス全体でもあります。私も内覧会に伺った際、誘われるように階段を上りましたが、上りながら得られる心境の変化こそが、生活の豊かさ、美しさだな、と感じられます。「展望台の家」には、そんな仕掛けが他にもいくつかありました。

住まい手を成長させるプログラムが組み込まれたプロセス

安藤さんは、家づくりの目的は「家」を作ることだけではない、と言います。「家」という形をつくるプロセスにおいて、「やりたいこと」を少しずつカタチにしていきながら、自分にとって、そして家族にとって大切なものを見つけていくこと。

そのため、設計期間を通して、お客様と一緒に楽しみながら考えていくことを大事にしていると言います。はじめは設計士がリードしていきますが、徐々に建て主の方でも「自分たちの家」が「どういう家」なのか理解が進み、建物が完成する頃には「住む」ライフスタイルを楽しめるようになっている。お客様が暮らしへの向き合い方、家との付き合い方を学んで成長するプロセスがビルトインされているのですね。

実際のプロセスとしては、まずは、お客様が何を作りたいのか、雑談を通じて探り当てるところからスタートするそう。学生時代にアルバイトをしていたバーテンダーの頃から、雑談しながらお客様を観察するのが好きだったとか。

ほとんどのお客様は、「キッチンをこうしたい」、「バスルームをこうしたい」などといったわかりやすいところから入りがちですが、安藤さんは「家」というカタチの中で本当に実現したいことを探り当てるため、趣味のこと、生活や仕事のスタイル、家族のこと、ペット、好きなお酒や飲み方など、さまざまなことについて雑談するそうです。話をしていると、熱く語っていただけることや、夫婦での捉え方の違いなどが分かり、段々とお客様が家づくりを通してやりたいことが見えてくると言います。
お客様にはわかりやすく説明することを心がける一方で、難しいコンセプトなどを少し(2割程度)盛り込んで提案を行うようです。そうすることで、緊張感と期待感を持ちつつ進行でき、打ち合わせを重ねていく中でお客様の方からその2割を埋める会話を発するようになってきてくれれば「しめたもの」。そのやり取りが、家のクオリティにつながります。

住まい手となるお客様にコミットと成長を求める一方で、大事にしているのは、楽しむことと焦らないこと。急ぐと、お客様が言いたいことを言い忘れていたということも起こりかねないし、コミュニケーションを重ねて数か月経ったところで、お客様から自分のやりたいことを表す言葉が出てくることもあるのだそう。

「シェイプアップ」も大事なものを見極めるプロセス

建築家と家づくりで、要望が図面や模型に反映されて形になった瞬間は、もっともワクワクする瞬間のひとつ。自分たちのこれからの暮らしが想像できて、心躍ります。一方で、工務店に見積もりを取ってみると予算を大幅に超えていた、というのは建築家との“家づくりあるある”。

(仮想例)予算3,500万って言ってたのに、5,000万円の見積もりが。先ほどまでのワクワクはどこへやら、ここから先は、削るばかりの楽しくない作業が待っている……。

内覧会に行った際、施主さんが笑いながら「ウチの家づくりも、削るの大変でしたよね」。それに対して、安藤さんは顔色ひとつ変えずに、「削るプロセスがあるからこそ、本当に何が必要なのかが見えてくるのです」と。お客様も「本当にそうですね」と笑っていました。

安藤さんの設計過程において、要望を削るプロセスは最初からプログラムされているみたい。その過程で、お客様の要望への本気度が試され、自分たちがどんな暮らしをしたいのか真剣に考え直すことが求められる。真剣に向き合った分だけ、家への満足度が高まる。

そこで大事になるのが、建築家の我慢強さ。お客様に「早く決めろ」と急かせば苦痛な作業になるが、お客様と一緒に未来の暮らしを考えるプロセスと捉えれば、苦痛ではなく、刺激的な自分探しになる。

モノづくりを楽しむ

安藤さんの事例は仕上げにこだわったものが多いように思います。仕上げは、生活の中で日々接するところですので、美しさをダイレクトに感じられる部分かもしれません。

「素材はどう活かしてあげられるか、しかないと思っています。良い所も悪い所もその素材の特徴なので、それを理解して、しかるべき所にしかるべき方法で置いてあげる。適材適所。その上で良い所を多く発見してあげて、より特徴が際立つ形で表現する。」

安藤さんのHPは言葉こそ少なめなのですが、「家づくりを楽しみます。 私たちは家づくりを通して建て主様と一緒に楽しみます。 家はたくさんの楽しさを作り出してくれます。」というストレートな言葉が印象に残ります。

家づくりを「楽しみましょう」ではなく、自分たちも含めて「楽しみます!」。お客様、設計、施工、みんなが楽しくつくられた家はクオリティも上がる。「楽しい」気持ちはモノに表れますからね。

安藤さんが現在進行中のプロジェクトは、ハイエースをリモートオフィス兼住居として日本縦断するための、オリジナルなインテリア空間のデザインだそうです。施工は「展望台の家」の大工さんがメインで手掛けているそう。楽しそうなプロジェクトですね。
ちなみに安藤さん、最近都心から西千葉にオフィスを移転しました。千葉県内での「美しい家」を作ることはもちろん、オフィススペースで地元の方とコラボレーションしたり、休日にはお子さんと乗馬を楽しんだり、ネコのクロちゃんを囲んで猫好きで集まって盛り上がったり、全力で楽しんでいるようです。
事務所の風景

事務所の風景

馬のタイちゃんとのツーショット(?)

馬のタイちゃんとのツーショット(?)

豊かな暮らしが広がっていきそうですね。
<こんな人にオススメ>
□自分や家族にとって大事なものを見つめ直し、カタチにしたい人
□プロセスも含めて家づくりを真剣に楽しみたい人
□こだわりのある人、日常や瞬間を大事にしたい人
□猫と暮らす家も得意

<こんな人にはおススメしない>
□時間をかけてコミュニケーションをとる余裕がない人
□効率だけを追求する人(遊びが全くない人)

対応業務 注文住宅、リノベーション (戸建、マンション、部分)
所在地 千葉県千葉市中央区
主な対応エリア 東京都 / 茨城県 / 栃木県 / 群馬県 / 埼玉県 / 千葉県 / 神奈川県
目安の金額

30坪 新築一戸建て2,400〜7,500万円

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