2021/05/01更新0like2144view

著者:熊井博子

“我が家”は家の中だけじゃない!家の外にも目を向けよう

この記事を書いた人

熊井博子さん

ビルダー・建築設計事務所に営業/広報として勤務した後、住宅専門誌の編集を経て、住宅関連の執筆と一般の方の家づくりサポート等に従事。インテリアコーディネーター、照明コンサルタント。

『外壁で囲われた その内側』と『デザイン』だけを見て、家の想像を膨らませてはいませんか。
外壁のその外側・敷地境界の内側だって、れっきとした我が家です。ココを意識するかしないかで、居心地も、我が家の見栄えも街並みも、まるで違うものになり得ます。
見落としがちな「外」の視点と捉え方、今すぐマスターしませんか。

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何見て暮らす?窓の向こうに何を見る?

窓の役割を考えてみたことはありますか。
一般に、窓には「光を取り込む」「風を取り込む」「日射を得る」といった室内環境を良くする実用的な役割のほか、「視線の抜けをつくる」「景色を映す」といった人の心理に作用する役割があります。

最初の3つ、「光を取り込む」「風を取り込む」「日射を得る」というのは誰でも当たり前に認識していることですが、後のふたつ「視線の抜けをつくる」「景色を映す」というのは、概念そのものがあまり知られていないかもしれません。

簡単に説明すると、
「視線の抜けをつくる」というのは、四方を壁に囲まれ ある意味 “行き止まり感”のある室内で、視線の行き先・逃げ場をつくるということ。

いい位置に効果的な窓があると、その先の景色や空へと視線が伸びて、閉塞感や行き詰まり感が和らぐものです。窓のつくりや大きさによっては、実際の空間以上の広がりを感じさせたり、開放感を演出することにもつながります。

「景色を映す」というのは、家の中にいても外の景色を楽しめるようにするということ。

窓枠を額縁に見立てて景色を切り取ったように窓を配する“ピクチャーウインドウ”はその代表格ですが、そこまで立派な仕掛けでなくても、キッチンに立っている時・ソファに座っている時・階段を登り切った時など、ふと視界に入る窓の向こうの景色が気持ちよければ、それだけで気分は変わります。

癒されたり、はっとしたり、ときめいたり。窓に映る景色は私たちのメンタルに大きな影響を及ぼすことだってあるのです。それが毎日まいにち何十年もくり返されるのだとしたら、気分どころか住む人の感性や性格にまで影響を及ぼし兼ねません。

そう考えると、窓に映る景色のコントロールは極めて重要。
何気なく視線を向けた窓の向こうに、四季折々の風景や庭の草花を見るか、隣の家の外壁やエアコンの室外機を見るか。見たいもの・見たくないものを選別しながら、どこにどう窓を配置するか・しないかは、家づくりの計画段階でしっかり検討されるべきテーマです。

だからと言って、敷地から見える景色を置き換えることはできないし、建物のかたちや窓の配置だけですべて解決できることでもありません。でも、あきらめるのはまだ早い。視点を建物の壁の外・敷地の内側、つまり“庭”に向ければ、まだまだ窓から見える景色をコントロールできる余地はあるのです。

例えば、「光を取り込みたい」位置にちょうど隣家の給湯タンクが重なるなら、窓の向こうに好みの葉や花を持つ木を植えて植栽を施せばいい。「風を取り込みたい」位置が道路から丸見えになるなら、建物と連携した素敵な塀や目でも楽しめる生垣で視線をコントロールすればいい。

家そのものだけでなく敷地全体で考えれば、できること・避けられることは増えてきて、見える景色は変わっていくうえ、ただ建物を考えてつくる家より居心地も楽しみも倍増する家になるはずです。

家をつくるときには建物ばかりが気になって、つくりや便利さなど「家をどう使うか」だけを考えがち。でもいざ生活がスタートすれば、「使う」ばかりでなく「過ごす」時間が多いこと、しかもそれが結構大事なものだと気づきます。

庭や外構は、家ができた後に考える人も多いですが、はじめから家と庭を一体的に考えられたら、見える景色も過ごす時間も、家そのものだって全く違った装いに仕上がるはずです。

「何見て暮らす?その窓から何を眺める?」
家づくりが始まって、計画図面とにらめっこするようになったなら、時折頭に思い浮かべて欲しいフレーズです。

家をつくることは、街の景色をつくること

見慣れた街に新しい店舗ができたり、既存店がリニューアルしたり看板がかけ変わったりすると、それだけであたりの雰囲気が変わったように感じるものです。ましてお店であれば人の動きにも影響しますから、街の活気や近隣のお店の人入りにまで影響を及ぼします。

家は店舗やオフィスと違って人の動きを左右するものではありませんが、それでも新たに家ができれば、景色や通りの印象になんらか影響を与えるものです。あたりが垢抜けたように感じることもあるし、なんだか重苦しく感じることも、味気なく感じることもあったりします。

一方で、持ち主は自分の家に気を取られるせいか、その変化や与える影響には案外鈍感。思った通りにできているか、他の家と比べてどうか、という観点に縛られがちです。

でも、敷地の前から数十歩 歩いて離れ振り返って見てみれば、家は違う見え方をすることに気づくはず。家と折り重なって見える庭の木々や隣り合う家と影響しあい、“単独”で完成させたはずの我が家は周囲の影響を受けながら、近場で見るのとはまた違った表情を見せているのです。

家は一つひとつ違っていいし、それぞれ個性があって然るべきではありますが、街並みを構成する一翼を担っているのも事実。家を考えるとき、自分の家にだけ意識を集中させるのではなく、周りを見渡し景観としての我が家を意識することができたなら、単独で完結させることを考えていた時よりずっと素敵な、“周囲と共鳴し合う家”ができるはずです。

そんな視点で捉えてみると、改めて庭や外構の重要性が見えてきます。
四季折々の表情を見せる木々や草花たちは家を引き立ててくれるだろうし、建物との連携を図ってデザインされた塀や門扉は調和を感じさせてくれるはず。家と庭を一体的に捉えた家づくりが叶ったなら、街の景観に花を添え、家の内側からも外側からも楽しめる素敵な住まいになりそうです。

年月の経過を楽しむ

家は、完成したその瞬間から経年変化を始めます。5年、10年と時間を追うごとに少しずつ何かが変化し、ゆっくりと印象を変えていきます。時間が流れている以上、「変化」は避けて通れないものですが、それは必ずしも嘆くことではありません。むしろ、素材やつくり、その後の取り扱いによっては、変化を好意的に捉えて楽しみにすることだってできるのです。

時間が経てば、自然色で仕上げた木部は徐々に飴色やこげ茶色に変化していくだろうし、床には“思い出のキズ跡”だって増えているはず。庭に目をやると、木々が枝を伸ばして建物とのコラボレーションをより感じられるようになったり、足元には四季折々いろいろな花が咲くようになったり。真新しい時には味わえなかった、魅力ある姿が待っています。

掃除やメンテ、水やりや剪定など、家を持てば増える仕事もありますが、手をかければかけるほど結果はわかりやすく表れるもの。特に庭は、みずみずしい命をもって変化・成長しながら多様な表情を見せて楽しませてくれるのだから、やりがいもひとしおです。時間をかけて育てていけば、年月を経て風合いを増した家と緑豊かな庭が重なり合って、なんとも言えない雰囲気を醸しだす、味わい深い我が家に出会えるはず。道ゆく人の足をも止める姿になるかもしれません。そう考えると、手入れすることも年月を経ることも楽しみでしかたないと思えてきませんか。

経年は、家も庭も美しくし得るものです。それを丸ごと楽しめたら、家をつくる楽しみだって倍増します。建物の壁で囲われた内側だけ区切って考えていたらもったいない!壁の向こうの庭先だって、敷地丸ごと我が家なのですから。

屋根は頭・外壁は肌・窓は目・小庇はまゆ・玄関は口、と外観を人の顔になぞらえて、いつも美しく品のある表情を持つ家の設計を目指していた建築家だった私の恩師の言葉ー「外構は、家にとっては着もの(洋服)だよ。素敵な着ものを着せてあげなくちゃね」。
小さな鏡に顔だけ写して化粧に夢中になっていたってダメなんです。トータルコーディネートで考えなくちゃ。今だけじゃない、未来の「顔」を想像しながら、似合う服を着せてあげたいものですね。
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ビルダー・建築設計事務所に営業/広報として勤務した後、住宅専門誌の編集を経て、住宅関連の執筆と一般の方の家づくりサポート等に従事。インテリアコーディネーター、照明コンサルタント。

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