2022/06/14更新0like1207view

著者:佐藤ゆうか

ゼッチ?LCCM?知っておきたい省エネ住宅のポイント

この記事を書いた人

佐藤ゆうかさん

2級建築士。
工業高校卒業後、中小規模の建設会社に勤務。
木造住宅を中心に新築やリフォームの設計に携る。
現在は3児の育児を中心に在宅ワークに励み、いつか現役復帰を夢見ながら建設業界にしがみつく日々。

皆さんは「ZEH(ゼッチ)」「ゼロエミッション住宅」「スマートハウス」「省エネ等級」という言葉を聞いたことがありますか?
どれも省エネ住宅の性能をあらわす言葉です。
最近は、持続可能な社会を実現するために、住宅にも高い省エネ性能を備えることが常識になりました。
今回は、省エネ住宅とは何なの?ということから、省エネ住宅に必要な設備、計画のポイントを解説します。

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

省エネ住宅ってなに?

石間 均「ZEH01」
省エネ住宅とは、毎日の暮らしの中で使うエネルギーを少なくしたり、エネルギーをつくり出したりする設備を備えた住まいのことです。
ただ省エネに配慮した設備を家に設置すればいいというわけではなく、国が定めた「省エネルギー基準」という基準をもとに計画することが大切です。
「省エネルギー基準」では、「外皮性能」と「一次エネルギー消費」のふたつの指標で住宅の省エネ性を評価しています。
それぞれの意味について、順番に確認していきましょう。
「外皮性能」とは、建物の外回り(壁・床・天井・窓など)の省エネ性能のことです。
断熱性に優れ、日射熱取得量が少ない住宅が高い評価を得ることになります。
「断熱性に優れた住宅」というのは、夏の暑さや冬の寒さに室内の環境が左右されず、快適な環境を保つ能力が高い住宅のことです。
「日射熱取得量が少ない住宅」とは、夏の厳しい日差しにより、室内の温度が上がりにくい住まいのことです。
日射熱取得量を少なくするためには、次の工夫が効果的です。
・外付けブラインドや障子をつける
・窓の位置や方角を工夫する
・Low-Eガラスなどの遮熱性能が高い窓ガラスにする
・遮熱性の高い塗料で外壁や屋根を保護する

外皮性能が高くなるだけで、外の気温に左右されにくくなり、冷暖房も少ない稼働で効きやすくなりますので、快適な住環境が実現できます。
一次エネルギー消費とは、住まいに搭載されている全ての設備(照明・給湯・冷暖房・ガスなど)のエネルギー消費量のことです。
電気・ガスなど、家の中で使われているエネルギーは、それぞれ単位が異なります。
そのため、「一次エネルギー消費量」という単位に統一して評価を行います。
省エネ基準で定められた「基準一次エネルギー消費量」と比較して、どの程度消費するエネルギーを削減できるかを確認し、削減できる値が大きいほど、高い評価を得ることになります。

知っておきたい4つの省エネ住宅

省エネ住宅は、主に4つの種類に分けられます。
・ZEH(ゼッチ)住宅
・ゼロエミッション住宅
・スマートハウス
・LCCM(エルシーシーエム)住宅
それぞれの意味や概要を確認しましょう。

ZEHとは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略です。
「使うエネルギーとつくるエネルギーの収支をゼロ以下にすることを目的とした住宅」があてはまります。
「住宅のエネルギー収支ゼロ」という言葉は、ハウスメーカーのCMでもおなじみですね。
この目標を100%達成した住宅を「ZEH」とし、75%達成したものを「Nearly ZEH(ニアリー・ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」と呼びます。
国は、2030年までに国内の新築住宅の過半数のZEH化を目標としていることから、補助金制度も充実しています。

ゼロエミッション住宅

ゼロエミッション住宅に定義はありませんが、一般的に「住宅の消費エネルギーを減らし、環境負荷を軽減することを目的とした住宅」を意味します。
ZEHと似ていますが、ゼロエミッション住宅は、家の一生(つくられ、住まわれ、メンテナンスされ、最終的に解体される)を通して、消費エネルギーを少なくし、環境負荷を軽減することを目的としています。
そのため、住まいの性能だけでなく、施工方法や産業廃棄物の処理、使用する材料の産地などにもこだわる必要があります。

スマートハウス

スマートハウスとは、「エネルギーの無駄遣いを減らすことを目的とした住宅」のことです。「HEMS(ヘムズ)(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)」という設備で、住宅設備や家電を管理し、外気や室内環境、時間帯に応じて常に最適な運転ができるようにコントロールすることで、住宅内の設備全てが効率的に稼働することを目指します。
HEMSに搭載されたモニターでは、エネルギーの使用量と生産量が見える化されるため、住む人の節電意識も向上する効果があります。
スマートハウスにするためには、太陽光発電システム・蓄電池・HEMS・HEMS対応の住宅設備、家電、冷暖房が必要になります。

LCCM(エルシーシーエム)住宅

アルティザン建築工房「リノベーションでLCCM住宅相当に性能向上」
LCCMとは、「ライフ・サイクル・カーボン・マイナス」の略です。
「家の一生を通して、二酸化炭素の発生量収支をマイナスにすることを目的とした住宅」を意味します。
ゼロエミッション住宅と似ていますが、定義が明確で、厳しい基準が設けられた、次世代の低炭素住宅と言えます。

省エネ住宅に必要な5つのポイント

省エネ住宅をつくるために必要な設備など、知っておきたい基本的なポイントを解説します。

1.家の断熱

省エネ住宅をつくるために、屋根・外壁・床・開口部の断熱は必要不可欠です。
高断熱の住まいは、夏や冬でも外の暑さ・寒さの影響を受けにくく、冷暖房の消費エネルギーを減らすことができます。

2.住宅設備

エネルギーの消費量が少なく、効率よく使える住宅設備を選びましょう。
一次エネルギー消費量を、省エネ基準で定められた値よりも小さくすることが大切です。
暖房・冷房・換気設備・照明設備・給湯設備・調理器具・家電の全てのエネルギー消費量をチェックしましょう。
創エネ設備とは、電力などのエネルギーをつくる設備のことです。
太陽光発電システム、太陽熱温水器、燃料電池、蓄電池などのエネルギーを創り、貯めておける設備を設置することで、住まいのエネルギー収支がゼロ以下になることを目指します。

4.環境配慮材

外皮性能や、設備の省エネ性を高めるだけでなく、環境に配慮された材料を使うことも大切です。
環境配慮材とは、以下の特徴があるものをいいます。
・製造時に使用するエネルギーが少ない
・耐用年数が長い
・再利用の際に必要なエネルギーが少ない
・自然に分解する
例えば、運搬に使われるエネルギーが少なく済む国産の木材、自然物を原料とした断熱材や内装材(和紙クロス、セルロースファイバー)、漆喰などがあてはまります。

5.省エネ性に配慮した設計

省エネ性に優れた設備を効率的に運用するためには、住宅設計の工夫も欠かせません。
省エネ性を意識した設計では、次のことに配慮します。
・屋根は断熱性の高い瓦や、遮熱塗料を使う
・太陽光発電パネルに効果的に太陽光が当たるよう、屋根の方角や形状を工夫する
・外装を保護するため、軒を出す
・日射を避けるため、軒を出す、庇をつける
・空調が効率よく室内に行き届くよう、風の流れを計画する

省エネ住宅の計画ポイント

自分に合った省エネ住宅を計画するために、知っておきたいポイントを解説します。

①予算に合った計画を!

省エネ住宅の性能は、高ければ高いほど快適で、光熱費が抑えられ、暮らしやすく、環境にも優しいものになります。
ただし、性能を高くすれば高くするほどお金も掛かります。
補助金も賢く取り入れながら、予算に収まる計画をすることが大切です。

②省エネ意識とこだわりたいポイントを明確にしよう!

省エネ住宅を建てる際は自身の省エネ意識の高さを、今一度確認しましょう。
次の考えに同意できる人は、かなり省エネ意識が高いと言えます。
・住まいづくりの際に、建築費用が高くなっても、省エネ設備を導入したい
・内装材やキッチンなどのグレードを下げても、省エネに貢献したい
・光熱費の掛からない住まいづくりをしたい
高い省エネ意識を持っている人は、優先的に省エネ設備を導入した方が、満足度の高い家づくりができるでしょう。
省エネは最低限で良い、省エネ設備よりもキッチンや内装材などにこだわりたい!という考えの人は、省エネ設備の導入はほどほどに、こだわりたい部分に予算配分をすることをおすすめします。
省エネ設備は高額な費用が掛かりますので、実現させたいものの優先順位を決めて、自分に合った住まいづくりの計画を行いましょう。

③無理なく付き合える計画を!

省エネ設備を長く効率的に使うためには、定期的な点検や日ごろのメンテナンスが必要になります。
現段階で難なくできるメンテナンスでも、将来的に、同じように手間や費用が掛けられるか、導入前に検討しましょう。
面倒に感じる場合や、費用面の不安がある場合、なるべくメンテナンスが少なく済む設備導入をすることも大切です。
無理なく長く快適に住み続けられるよう計画をしましょう。
環境に優しい省エネ住宅は、住む人にも優しい住宅と言われています。
これからの住まいづくりは、省エネ化が欠かせません。
住む人の考え方や、予算に合った計画を行い、満足度の高い省エネ住宅づくりができるといいですね。
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佐藤ゆうかさん

2級建築士。
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