家は人生で一番長く過ごす場所。だからこそ居心地の良い場所にしたい、そう思って家づくりをしました。その時に大切にしたのは「どんな暮らし方をしていきたいのか?」結果、なかなか面白い家になりました。
この連載では、『暮らしを考えながら進めていった家づくり』について、場所ごとに綴っていきたいと思います。まずは家に対する考え方、土地探し、施工会社を決めるまでを。
▽ 目次 (クリックでスクロールします)
はじめまして、YUHeと申します
優しくない家
楽しみの増える家へと変わる
不便で居心地の良い家
自分の好みを知ることから始める
条件の揃った仲介のない土地
施工会社探しは過去の施工例をもとに
最終的な決め手はヒト
プランは施主と設計者の共通認識の違いを知れるもの
はじめまして、YUHeと申します
僕は自他認めるインテリア馬鹿。ですが、そういった関係の仕事をしている訳ではありません。ごく普通の会社員です。ただ、寝ても醒めてもインテリアのことばかり考えてます。
もはやそれしか取り柄がない夫。そして、それに若干呆れながらも次第に麻痺してきた天然の妻。1歳9カ月の可愛い息子と、今年産まれたばかりの娘の4人で暮らしてます。
暮らしの舞台は、こだわりを詰めた2階リビングの家。生まれも育ちも富山な、わが家の住人たち。自然もたくさんあって災害の少ない、最高の土地で暮らしてます。
優しくない家
家を建てて、2018年の7月で5年。
当時は子供もおらず、また「もし子供ができたとしても、目が離せない幼少期は数年間」だということ、そして、「いずれ子供は出て行くもの」と割り切っていたので、自分たちがずっと暮らす家という目線で建てました。
大人中心の目線ですから、幼い子供にとっては当然ながら危険な箇所がたくさんあります。スキップフロアや薪ストーブ、手摺りからのの落下防止にガラスを使っていたり…
なので、今は子供がリビングスペースから出にくい手段を考えながら、市販の柵や家具を活用して暮らしています。
子供の成長に翻弄されながらも、ああでもないこうでもないと部屋の模様替えをしているさまは、さながら僕と息子の「知恵比べ」。
時には家具によじ登って、時には柵を押して隙間をつくりだして、見事なまでに脱走していく息子。幸い大きな怪我をしたことはありませんが、ヒヤリとする場面もあったりします。
でもそんな成長をうかがえた時、親としてはやはりうれしいもの。たくさんほめて、そしてまた新たな策を練って……と繰り返す日々。そんな暮らしを楽しんでます。
楽しみの増える家へと変わる
子供を思って優しい家を建てる。
もしかすると、今ならそういう考えもあったかもしれません。
ただ、どんな家であっても危険を全て取り除くことは難しく、危険を取り除くことが必ずしも子供のために良いことばかりではないと思っています。危なさを知ることで成長もしてほしい、半ば強引ですがそんな偏った考えを持ってます。
あと数年、いずれ長男から長女へと相手を変え、僕と子供の知恵比べは続きます。それが終了した時に、ようやく理想とした暮らしの第2幕がスタートです。
子供たちが成長して張り合いがなくなるのは少し寂しくもありますが、わが家の場合は確実に暮らしやすくなり、楽しみも増えていくと信じてます。
不便で居心地の良い家
そもそも、住宅にもただ便利さを求めたわけではありませんでした。長所と短所両方があって、どちらかといえば長所の部分が多い。そんな不便とこだわりがある家です。
変わった男が建てるのですから、当然変わった家が建ちますよね(笑)。
家とはどういう場所かと考えた時、僕は「居心地の良い場所」だと答えます。
暮らしを楽しむために家を建てました。
良い家ではなく、良い暮らしをするための家です。
その家でどんな暮らしを楽しんでいきたいか…そんな思いが詰まってます。
危険で少し手間のかかる薪ストーブでピザを焼いたり、手摺りに設置したガラスを割られたら大変だけれど、そんなディティールを眺めて楽しみ、光熱費が少し心配な大きな窓から景色を楽しむ。
確かにリスクと不便の多い家です(笑)。
でも、当の本人にとってはとても居心地の良い家なんです。
自分の好みを知ることから始める
自分がどのようなものが好きなのか。好みを知ることや理解することが、家づくりにはとても大切だと思います。
僕の場合、家づくりを始めるにあたり、ネットや雑誌で情報収集をすることから始めました。やりたいことをリストアップし、気になる家の記事はブックマーク。その作業の繰り返し。簡単そうに言ってますが、実際は二転三転しながら悩みに悩み進んできてます。
自分好みの良いアイデアやモノが、必ずしも一貫性があるわけではありません。
それに、僕が良いと感じるものにはなぜか不便も付いてくるので……(笑)
この方向性を決めるまでに、かなりの時間を費やしました。独身時代に一人暮らしを始めたのも、将来建てる家のため。そんな時から数えると、5年以上考えていたのかもしれません。
そうして、ようやくつくりたい家の形がイメージできたところから、動き出してます。
条件の揃った仲介のない土地
わが家の土地の条件は、
「実家から近いこと、職場が近いこと、桜が見えるところ」
以上の3点。
それに、保育園や小学校の距離、いずれ売れる土地か。
というのも、少し頭の隅に置きながら探しました。
田舎ということもあって、ほとんど苦労することなく、すぐに条件の揃った場所は見つかりました。
見つけた先は、市の保有する市有地。
仲介業者はなく、市との直接の取引です。と言っても難しい取引ではなく、何度か担当者と話をして金額を決め、期日に振り込むだけ。
市なので利益を優先する理由がありませんし、「誰かに買ってもらう方が税金が納付されるので買ってほしい」という市側の事情もあったおかげで、その土地の相場よりも安く購入できました。
どんな場合も値段は交渉すべきです。
そもそも坪単価は都会と比べものにならないほど安いのですが……それでも結果的に、家具一式買えるほど浮きました。
また、住宅ローンを組んでいるので、手続きなど難しいことのほとんどを銀行が手配してくれます。仲介なしでも全然OK。非常にありがたいです。市役所さまさま、銀行さまさま!
そして土地の希望条件の一つ、「窓から桜を望むこと」もちゃんと叶いました。
施工会社探しは過去の施工例をもとに
並行して探していた施工会社はというと、2社目でこれまたすんなりと決まりました。
1社目は、その会社の社長とお話することができたのですが、「土地柄、家が寒いのは仕方ないですよね〜」といったどこかいい加減な雰囲気があって、とてもこの人には任せられん……と思いやめました。
施工会社を探す方法はいろいろあるかと思いますが、僕の場合は「県内の住宅誌で過去の施工例を見て、気になる会社をピックアップし数社に絞る」というやり方でした。
県内で絞ったのは、打ち合わせが楽なのと、同県民という確証のない信頼感から。
ピックアップするための基準としたポイントがあります。
それは、鉄(もしくはスチール)製の手摺りを使った施工例があること。
上で書いたように、家づくりに動く前には、自分の中で家の理想像もある程度決まっていて、ディテールにこだわりたいと思っていました。鉄製の手摺りや室内の鉄の窓枠などは、ぜひやりたかったこと。
やはり、普段から使い慣れているところと、そうではないところでは差があると思います。
最終的な決め手はヒト
さらに、その絞った候補の中から今の施工会社を選んだ決め手は、「設計担当者との相性」です。
ありがちな答えですが、本当にこれしかありません。(もちろん、相手は多少なり自分たちに合わせてくれていると思いますが…)
やりたいことは固まっていても、所詮僕たちは素人。実現可能かどうかも、本当に良いアイデアかもわかりません。
自分たちのしたいようにただつくってもらうわけでもなく、かといって全てをお任せするでもなく、アイデアや意見を出し、同じ目線で一緒に家を考えていきたいと思っていたので、
●話しやすい人柄
●会社の全体の雰囲気
●プロとしての信頼感
そしてなにより、
●その人物を人として好きかどうか
が大切でした。
家づくりは楽しいのですが、考えることや気を使う場面も多く、とても疲れます。
そんな時に担当者(設計者)との相性が良くないと、ストレスの原因やトラブルにつながるような気がします。辛い家づくりなんて、誰だって御免ですよね。
信頼できる設計担当者さんには最後までたくさん相談に乗ってもらい、僕のわがままを形に変えてもらいました。手摺りも室内窓も、そしてわが家の象徴的な連なる大きな窓も実現してもらい、感謝しかありません。
プランは施主と設計者の共通認識の違いを知れるもの
ちなみにわが家のプランは2度変更し、修正もしてます。
せっかくつくっていただいたプラン(模型あり)をダメだと言うわけですから、どこか気が引ける思いはあったのですが、それでも嫌な顔ひとつ見せず、プロとして素晴らしい仕事をしていただきました。
わが家は、設計事務所にお願いしてます。
最初にやりたいことを箇条書きにしたメモを渡し、プランを練ってもらうという形で進めていきました。まぁ強引に渡したような部分もあるかもしれませんが、想いを伝えるのは大切な事ですからね。
最初のプランは、とても面白い間取りでした。
ただ、実際の暮らしを想像してみるとどうもしっくりこなかったので変更をお願いし、2度目はリビングが狭く、置きたい家具を置けないために変更。3度目のプランがほぼ今の家の間取りで、ほんの少し各空間を広げる修正をしてもらって決定といった流れです。
そのプランとプランの間にも、変更点や実現したいことを再確認してますが、やはり修正してほしいポイントは必ず出てきます。密な連絡や会話がそれを少しづつ埋めていってくれ、第3のプランへと繋がったと思います。
今となって思うのは、プランはたたき台だということ。
伝わっていると思っていても、案外伝わっていないものです。
より良いものをつくるためには、きっとそういう過程が必要なんだと思います。
以上が家を建て始めるまでの話。
家づくりは本当に楽しいです。ものすごく大変でしたが、それでももう一回つくりたくなるほどに楽しかった。
さすがにもう1軒建てるのは難しいので、素敵な家を見て羨ましがるしかできません。だからこそ、いま家づくりの最中、あるいはこれから始める方には、一生に一度しかできないかもしれない家づくりを思い切り楽しんでもらいたいと思います。ヘトヘトになるくらい一生懸命になっても良い価値がありますよ!
最後まで読んでくださってありがとうございます。
次回は「玄関」について書こうと思います。
そちらもまた読んでいただけるとうれしいです。