2021/02/25更新0like2414view

著者:SUVACO編集部

専門家フィーチャー

「独自の現場・コミュニケーション力で地方も元気に活性化!」建築家:奥野公章さん

家づくりのプロに聞きたい「10のこと」シリーズ。

設計プランをもとに、現地の施工店に掛け合い、設計・監理を行うこと(分離発注)で、地方や遠方の家づくりにおいても多くの実績を持つ建築家・奥野公章さん。その経験が、現在の豊かな家づくりに大きく影響しています。のびやかで風通しの心地よい作風は、奥野さんの人柄そのものです。
「地方を元気に、活性化にも注力していきたい!」と話す奥野さんの「10のこと」。

周囲の環境や関わるすべての人への思いやりと配慮が垣間見られ、私たちへ素敵なメッセージとして届きます。

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

山梨県出身の奥野さん。特定の施工会社にこだわらず、地場の工務店とのやりとりの中で、高いクオリティを保つノウハウを蓄積。現在でも、案件の半数は地方での取り組みというのが特徴です。

「独立して初めての設計が分離発注による依頼でした。その時に、それまでの仕事では出会えなかった現場の方々と話をする機会がたくさんありました。住宅を供給する課題の中で、建築家としてできることは何か?と考えたとき、地方で予算を抑えた住宅提供について考えさせられました。

田舎育ちの私にとって、低く・長く・のびやかな設計は、美しい四季のある日本に適した住まいづくりの根底です。この構造は、周囲の自然や環境が持つエネルギーを取り入れる『パッシブデザイン』に適しています。そこで、「G1グレード」という高い断熱性能を備えた家づくりにも取り組んでいます」

Q1. 日常でふと感じる職業病(こだわりや癖)は?

美しい景色や空間・建物があると、何をしていてもカメラを構えてしまいます。
そんな瞬間は子供のような集中力で周りが一切見えなくなります。車を運転しているときは衝動を抑えるのに苦労しています。

Q2. 家づくりに関する知識で負けないこと、得意分野は?

日本の住まいの知恵を活かした光や空間のこと、自然エネルギーを利用した空間デザインのこと、温熱環境のこと。分離発注の経験と知識を活かし、設計から建設までの一貫した家づくりを提案しています。

Q3. 休日の過ごし方もしくは、仕事で活かせる趣味は?

「たべもの」と「たてもの」の旅行。いろんな地方でいろんな建物を見て美味しいものを食べます。

事務所のスタッフや仲間と共に国内外で話題の建築を見学し旅行も楽しんでいます。
近年では台湾とロンドン。台湾では留学生の情報をもとに、日本未出店のお店をめぐり美味しいものを食べまくりました。ロンドンでは財布を落としたり、携帯をなくしたりの珍道中でしたが、事務所の皆の新しい一面に出会えた楽しい旅でした。

最近、楽しみにしているのは富山県高岡市での居酒屋行脚。居酒屋のレベルが非常に高く、美味しい魚と美味しい酒の組み合わせが最高です。

Q4. 好きな建材は?

株式会社イケガミの『アクアソイル』
都市生活の「庭付き1戸建て」には欠かせない建築緑化土壌システムです。

ナニックジャパン株式会社の『ウッドブラインド・シャッター』
通風とプライバシーのコントロールができる優れものです。

Q5. 好きなアーティストは?

『山本昌男 』(写真家)
日本的な光と明暗の表現力が素晴らしく、吸い込まれるような作品が魅力です。建築や自宅に飾っても、主張せず空間に馴染みながら、作品から発せられる自然な存在感に魅了されます。
『安藤雅信 』(陶作家)
ユニークでありつつ手になじむ器の形が素敵です。さまざまな要素を追求しつつ、シンプルな形の作品が多い中でも、「黒銀彩」は使う場所と時間によっていろいろな表情を見せてくれます。
安藤さんの個展の様子(撮影:奥野公章建築設計室)

安藤さんの個展の様子(撮影:奥野公章建築設計室)

私自身の作品「ニコタマテラス」は、林に囲まれた北向きの中庭に太陽の運行に即した表情をイメージし、外壁を黒銀彩のように仕上げました。
「黒銀彩」からインスピレーションを受けた作品「ニコタマテラス」の外壁(撮影:奥野公章建築設計室)

「黒銀彩」からインスピレーションを受けた作品「ニコタマテラス」の外壁(撮影:奥野公章建築設計室)

お二人とも、私が建築した建物で個展が行われたことが出会いでした。ここは、もともとあった「倉」を再現し、東京ではなかなか味わえない、自然空間を一体的につなげた建築です。

アパレルブランド「evam eva」(本社:山梨県)のコンセプトである「日々のくらしを心地よく過ごす」を体現できる場をつくるプロジェクトでした。


この設計の大きな魅力でもある「外から差し込む鈍い光」が、アーティストの作品と絡み合い絶妙な存在感が放たれていて、とても素敵でしたね。

Q6. 長年の愛用品 or 仕事のお供・必需品は?

こだわりなく、その時に気に入ったものを使っています。
結構、ミーハーなので(笑)。その都度、新しいものを取り入れるタイプです。
直感的な勢いと一目惚れで選ぶことが多いですね。

Q7. オススメの家づくり関連の書籍やウェブメディア・イベントは?

ウェブは、空いた時間・移動時間に気軽に見られるものを利用していますね。

■世界各地の自然や文化、暮らしのストーリーを紹介するウェブメディア『PAPERSKY』
編集長であるルーカスB.Bさんが、歩きながらその土地の情報を発信しているウェブサイトです。海外や日本の地元ネタから、地形・土地といった観点で発信される切り口が面白いです。


■糸井重里さんが主宰するウェブサイト『ほぼ日刊イトイ新聞』
ニッチな情報を読めたり、現場のレポート・生の声を気軽に読めるのは楽しいですね。

■原美術館の別館(群馬県渋川市)『ハラミュージアムアーク』
私自身は繊細なデザインを取り入れがちなのですが、ここは骨太な角材を用いながらそれを感じさせないエレガントな仕上がりが不思議です。
また、環境に根ざしているコンセプトにもとても共感しています。

■数寄屋建築の生みの親として知られる建築家 吉田五十八の代表作(東京・成城)『旧猪股邸』
自宅から近く何度も行っていますが、すごく素敵ですよ。
最初に見た時は、窓まわりのディティール、外との融和感にとても圧倒されました。
最近は、寸法の考え方に注目しています。大きな邸宅の中でも、とてもコンパクトにまとめられた玄関。そこをくぐった先に見える広い空間のギャップは、建築設計のなかのストーリーを感じるんですね。あの大きな邸宅で玄関をどう作るかって考えたときに、自分だったらきっと広い空間を考えてしまいがちなんです。そこを一歩控えて、アプローチから意識づけたメリハリのある演出には、建築家 吉田五十八さんのならではの価値観を感じます。何度行っても発見があり、いつも学ばせていただいています。

■日本中の建築を検索できるアプリ『建築探索MAP』
地方の仕事も多いので、出先や旅先の情報を検索して見に行ったりします。建築家からも検索できるので、私の名前でもいくつかの作品を調べることができますよ。

Q8. お気に入りの住宅事例は?

最近の作品では「佐倉の家」です。
東京のマンションからの移住によって、広い土地を楽しみながら、時間を大切にした生活を送りたい...。そんなご要望から、リゾート感あふれるちょこっと田舎暮らしの体現を設計しました。理想的な暮らし方ですね。

Q9. 素敵な出会い・忘れられないお客さまとの思い出は?

何度も家づくりをする人は少ない、全てのお施主さまとの出会いが一期一会の機会です。

全てが素敵な出会いですが、強いて挙げるとすれば、分離発注で設計施工した処女作「大網の2世帯住宅」のお施主さまです。ご自身が職人だったので、毎日一緒に監督し、工事を行いました。泊まり込みをしながら、たくさんの時間を共有させていただきました。毎日が勉強でした。
「この人達のために最高の家を作るんだ」と心から思わせてくれた、最高のお施主さまです。大変な毎日でしたが、忘れられない最高の日々です。

Q10. 最後に、「うちの家づくりのココがすごい!」と思うところは?

「柔軟性」。 クライアントの希望を形にするために、変化に対応すること。
例えると「カウンターでお客さんと対話しながら料理するレストラン」のような......。

1. 低く・長く 伸びやかに
  四季のある日本の気候に合わせてつくられてきた、日本の家の知恵を活かす
  どの部屋も日当たり良く、風通し良く、庭を眺められる家
  庭との境界をデザイン(窓のあり方)することにより、24節気72候まで感じられる家づくり

2. 温かく 居心地良く
  庭があり、低く長い形の家はパッシブデザインにも最適
  G1グレードの性能を目指す(計算書にてわかりやすく説明)
  10年後も価値のある家
  1年通して住める軽井沢の家

3. 強く 使いやすく
  変わっていく生活を受け止める、しっかりとした空間の骨格をもつ建築
  生活に寄り添うシンプルな導線

4. 集まって住む  
  2世帯住宅から始まり、賃貸併用住宅や共同住宅まで「集まって住む」空間の経験が豊富です
  事業性的な投資用物件・個人の賃貸併用住宅・コーポラティブハウスなども手掛けています
 
5. 象徴的な
  企業や団体のための色々な用途の施設設計も多く手掛けています
  企業ブランディングにつながる、象徴性をもった建築も得意です

6. 人材
  経験豊富なスタッフの存在により、いろいろなアイデアを集結
  私の人柄と同じく、皆話しやすいメンバーです
  お施主さま一人ひとりの要望をしっかり聞けて・検討できる体制をつくっています
「柔軟性」を大切に。住まいと同じように、心地よく風通しの良い関係を築いています(画像提供:奥野公章建築設計室)

「柔軟性」を大切に。住まいと同じように、心地よく風通しの良い関係を築いています(画像提供:奥野公章建築設計室)

対応業務 注文住宅、リノベーション (戸建)
所在地 東京都目黒区
主な対応エリア 茨城県 / 栃木県 / 群馬県 / 埼玉県 / 千葉県 / 東京都 / 神奈川県 / 新潟県 / 富山県 / 石川県 / 山梨県 / 長野県 / 静岡県
目安の金額

30坪 新築一戸建て2,700〜4,500万円

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